第44話-新たな仲間-
「もう一回、ここで走ればいいじゃん!」
黙る柊君。
「んでさ、一緒に駅伝走ろうよ」
「…怖いんだよ、独りも…仲間も…」
「それに…もう走らないって決めたから……」
「じゃあ、なんで見に来てたの?」
今度は信士が言う。
「まだ、走りたいからじゃないの?」
「…………」
「大丈夫、ぼくらは絶対に君を裏切らないよ」
「!」
「だから、一緒に走ろう…」
柊君は少し悩んでいる様子で、俯いている。
「僕は…僕は…」
「…ごめん!」
柊君は2人の横を猛ダッシュで駆け抜けていってしまった。
「…行っちゃったな」
「戻ろっか…」
なんで…なんで…。
走りながら、柊は何度も後悔した。
いや、それよりも自分に一緒に走ろうと言ってくれる人に会えたことの方が嬉しい。
人は怖いけど…。
信じてみようかな。
あの人達なら、きっと信じられる気がする。
「おう、おかえり」
駅伝部のメンバーに迎えられた。
「案外、遅かったな」
「柊君がいきなり足速くてさ…」
あの足の速さは間違いなく、このメンバーでも上の方。
間違いなく、戦力だった。
「で、柊君は入りそうなのか?」
哲が聞いてきた。
「分からないけど…でも、きっと来るよ」
「したら、お前らの誰かが補欠だな」
浩太が一年生の3人に言った。
そもそも、駅伝部は2年生3人と1年生が3人のチーム。
浩太が言った瞬間、3人の間に若干、火花が散ったような気がした。
負けてられないな。
水時にも、柊君にも、このメンバーにも。
「浩太、走ろう」
「おう」
秋に近づく夕暮れの下を少年達は息を切らしながら、走っていた。
次の日
「本当に!?」
朝、学校に来たときの一番の第一声は、なんとも嬉しい新しい仲間の知らせだった。
「うん、やっぱりもう一回、頑張ってみるよ」
「ありがとう…柊君」
「じゃあ、早速先生に知らせに行こう」
これから、駅伝部が変わる。
いい方向に北星中に勝つために、間違いなくぼくたちは進んでいる。
職員室に向かいながら、信士はそう思った。