第42話-あの日の真実-
伊達…正信…?
伊達ってまさか―
信士は母さんの部屋に走った。
部屋の隅に埃をかぶったアルバムを見つけ、開いてみる。
「やっぱり……」
家族表のなかに
お父さん‥‥伊達正信
と、書き込まれている。
やっぱり、お父さんだったんだ。
封筒の日付は今年の6月10日。
お父さんは、生きている!?
信士は封筒の中を見てみることにした。
「?」
中に入っていたのは、手紙。
その手紙には、
『急なことで申し訳ない。ある組織について調べるため、しばらく帰って来れなくなる』
『俺は、危険な立場にいる、家にいてはお前たちが危ない』
『家のことを頼む』
そう書かれていた。
組織?
信士の頭に真っ先に浮かんだのは「Crow」のことだった。
いや、考え過ぎだよな。
それより、母さんはどうして「父さんは死んだ」なんて嘘をついたんだろう。
何にも分からないまま、手紙を何度も読み直した。
それから、30分程が過ぎた頃、
「ただいまー」
母さんが帰ってきた。
信士は手紙を突きつけようと思ったが、少し父さんについて聞いてみることにした。
「父さんってさ、何の仕事してたの?」
「……刑事よ」
「!」
本当にそうなのかもしれない。
まさか、「Crow」と…。
「母さん、これ…」
信士は怖くなって、母さんに手紙と封筒を見せた。
「母さんはぼくが小さいときに亡くなったって言ったけど、その手紙はあの事件の少し前のものだよね」
「………」
「なんで、嘘なんか…」
「…お父さんに頼まれたの、信士には死んだと伝えてくれって……」
「信士」
「あなたをあの日、沼から助けだしてくれたのはお父さんだったの」
あの日、助けてくれたのがお父さん…。
信士は戸惑った。
さっきまで、遠いと思っていた、父さんは近くにいた。
「そんな…どうして…」
「この手紙にある、組織っていうのがCrowのことだから」
「父さんはあの日、Crowがどんぐり沼に来るっていう情報を掴んでいたの」
「だけど、ぼくが現れた…」
母さんは黙って頷き、続けた。
「その時に、父さんはCrowについて調べ回ってることがバレて…」
「だから…、自分は信士が幼いときに死んだんだと信士には伝えてくれって……」
それって、ぼくのせいだ……
やはり、真実は信士の予想を超える、悲しい結末だった。