第41話-柊 俊哉-
「よっしゃ~テストおわりぃ」
テスト終了のチャイムと同時に浩太が100パーセント喜びの声で言った。
そうじ、帰りの会とテスト後の眠たい作業も終え、部活に向かう。
「行くぞ~信士。駅伝に向けて練習だぁ~」
「うん!」
信士も教室を出かけたとき、ふと思い出した。
「柊君さ、前の学校で陸上部だったんだよね?」
柊は急な声に若干、びっくりした様子だった。が、
「あ…あ、うん……」
「そんじゃ今日、陸上部観に来ない?」
「おお、来いよ来いよ」
浩太も続けて言う。
「あ…や、いいんだ…部活入るか分からない…し、今日は帰るよ」
柊は顔を少し赤くして言い、
「ありが…とう」
そう言った。
「分かったよ、気が向いたときにでも来てね。いつでも歓迎だから」
もう一度、柊は「ありがとう」と小さな声で言い教室を出て行った。
「なんか、変わったやつだよな~」
浩太が柊の背中を見ながら言う。
「そうだね…」
「さ、部活だ部活、行くぞ」
校庭に出ると、他の駅伝部のメンバー4人がすでに集まっていた。
「おう、哲よろしく」
浩太が哲に言う。
「おう」
「哲先輩も駅伝走るって本当だったんですね」
他の3人は駅伝のことも、哲のことも今日の朝聞かされたらしく、若干戸惑っている。
「あぁ、あまり期待されても困るが、よろしく」
「先生から、今日の駅伝部の練習は外周12周だと聞いている、それじゃ浩太、後は仕切るの頼む」
「了解」
「ジョッグ~」
駅伝部の期間は、陸上部とは別に練習をするとゆう決まりだった。
「ふぅ…じゃあ、そろそろ行くか」
6人は浩太の「スタート!」という声と一緒にスタートをきった。
「なんか、駅伝部の始まりって感じだね」
「おう、これからだ。絶対、北星中に勝つぞ」
気合いを入れて走る、信士達。
と、それを物陰から見ている人物がいた。
「………」
柊である。
誰も柊の存在に気づくはずもなく、走るのだった。
「おつかれ~」
全員、地面に座り込んだ。
「さすがじゃん、哲。最後までついてくるなんてさ」
「ははっ…ギリギリだよ……」
こうして、記念すべき駅伝部、一回目の練習は終えたのだった。
「ただいまー」
入った瞬間、玄関で母さんと出くわした。
「あ、おかえり。丁度よかったわ、ちょっと買い物行ってくるから留守番お願い」
「はい」
信士は真っ直ぐ、自分の部屋に向かい、机に座った。
部屋は最初来たときは、いろいろと汚かったものの、夏休み中に片付け見た目ではいくらかはきれいになっている。
「机の中も、片づけないと…」
信士は机の引き出しをあけ、中を見た。
「ん?」
そこには、『信士へ』と書かれた封筒があった。
裏には
『2017年 6月10日』
そして
『伊達正信』
と、書かれていた―。