第39話-母の思い-
「ん、ん~~~」
目が覚めた。
体のあちこちが痛む。
時計に目をやってみる。
10時30分
どうやら、ずいぶんぐっすり寝ていたようだ。
「あら、起きたの?」
リビングに行くと、母さんがいた。
「ご飯どうする?中途半端な時間だけど?」
「食べる。お腹空いたし」
母さんはパンと紅茶を用意してくれた。
信士は食べながら、昨日、沢村先生に言われたことを聞いてみた。
「前から気になってたんだけど、父さんはどうしていないの?」
「………あ、あぁ、父さんは信士の幼い頃に亡くなったの」
「……へぇ」
「あ、そうだ!」
そう言い、母さんは青い色のケータイを取り出した。
「これね、信士のケータイ。警察の人が捜査の為に使ってたんだけど昨日、返されたの」
「うん、ありがとう…」
アドレス帳を見てみると、陸上部のみんなと洋介のメアドもあった。
他にも、知らない名前が幾つかあるけど、おそらく野球の仲間だろう。
「信士」
「ん?」
「もし、命が狙われるようなことがあったら、今度は永井さんに従って…」
「本当は今すぐにでも、隠れさせるのが正しいのかもしれないけど、信士の好きにさせたいから」
「…分かった、でも、見つかるまでは好きにやるよ」
母さんは少し笑って、「買い物に行くから」と家をでた。
父さんは亡くなったんだ。
いったい、どんな人だったんだろう。
信士は、試しにメールしてみようと思ったが、テスト前だということを思い出し、勉強する事にした。
「おはよー」
朝、詩織にいきなり背中を叩かれた。
「おはよう……」
「どしたの、元気ないじゃん?」
「みんな、どんな顔するかなってさ…、また、質問攻めは覚悟してるけどね」
ずっと、不安。
でも、乗り越えないと。
「…大丈夫だよ」
「みんな、信士が帰って来るのを待ってたんだから」
「うん」
信士は2年1組の教室のドアに手をかけた。
ガラッ
教室を見回すと、何人かの生徒達がもう来ていた。
生徒達は信士を見た途端、
「信士!!」
「大丈夫!?」
「復活じゃん!!」
生徒達はいきなり、信士を取り囲んだ。