第36話-ビルドアップ走-
-合宿3日目-
「今日は合宿、最終日だ。気を引き締めて練習するように」
昨日今日と晴れ渡り、3日目は競技場を使うことができた。
「はい!!」
「それじゃあ、長距離は合宿のまとめにビルドアップ走をする」
「え~」という浩太の声が聞こえる。
「ビルドアップ走ってなに?」
小声で浩太に聞いた。
「なっがい距離をだんだんスピードを上げていきながら走るんだ」
…それはキツそうだ
「トラックを二年生は30周、一年生は15周だ」
ほっと胸をなで下ろす一年生達。
「最初は一周、二分ペースでいい。5周ごとに五秒ずつあげていくように」
「ペースは水時、頼む」
「はい」
ピッ!!
ストップウォッチが押され、長距離全員がスタートした。
最初は楽なペース。
それでも、照りつける太陽は暑く、確実に体力を消耗していた。
10周目を過ぎると、バテる人達が出てきた。
一年生に関しては全員キツそうだ。
15周が終わったところで一年生は全員へたり込んだ。
走る度に足は重くなり、なかなか前に進まない。
半袖のシャツはもう、ビショビショだった。
「ハァ…ハァ…」
気がだんだん遠くなってきた。
今、何周走っただろうか?
分からないまま、足だけが進んでいく。
「25周目!!」
九条先生の声が聞こえた。
…あと5周
ドサッ
どうやら、誰かが倒れたようだ。
振り向くのも厳しい、重たい体を前に進ませるので精一杯だった。
「ハァ、ハァ…」
とうとう、キツくなったところで九条先生の声が聞こえた。
「ラスト1周、競争だ!!」
(競争…?)
全員がスピードを上げた。
それでも、みんなキツそうだ。
水時が集団より前に出たのが見えた。
「ハァ…ハァ…」
…勝ちたい
「ハァ、ハァ、ハァ…」
勝ちたい!!
(え………!?)
その時、急に体が軽くなった状態に陥った。
息は苦しいけど、体は軽い。
ぼくは、一気にラストスパートをかけた―。