第33話-雨の悲劇-
頂上まであともう少し。
と、その時
「あれ、鷹谷中じゃねぇか?」
下から声が聞こえた。
「ん?」
振り返ってみると、そこには、
「……水時」
「なるほど、北星中も山登りか!」
浩太が納得したように手をポンとうった。
「おい、行くぞ」
水時が10人ほどを連れて、また歩き出した。
「なんだよ、冷たい奴だな」
浩太は水時の冷たい態度にイライラしながら、再び歩き出した。
「頂上、とうちゃーく!!」
頂上に着いた途端、浩太が大きな声を出した。
「10分休憩、その後再び出発」
水時が早口に指令を出す。
「ぼくらもそうする?」
「……だな」
ふと、空を見た。
「えっ?」
怪しい雲が迫って来ているのが見えた。
「あ~あ、さっきまであんな晴れてたのにな」
隣で浩太も空を見上げている。
「…早めにでるか」
水時が小さく呟いたのが聞こえた。
「下りるぞ」
「はい…」
休憩が足らず、北星中の返事の声は小さかった。
水時は速いペースでどんどん進む。
「オレらんときよりずっと速いな」
浩太と話していると。
ポツ…ポツポツ
雨がついに降ってきた。
「やばいな…」
ザァァァッー!!
雨はすぐに強くなった。
地面は早くも、ぬかるみ始めている。
スピードは緩まないまま、進んでいく。
ズザッ!!
北星中のひとりが足を滑らして、転んだのが見えた。
尻もちをついている。
「おい、走!転けてるって!」
「分かってる、大声出すな東條」
水時は仲間の言葉を聞かず、そのまま走る。
ズッ
水時の後ろを走っていた北星中のやつが足を滑らせた。
「危な……」
信士がとっさに言う前に体は前に倒れ、
水時の背中を押してしまった。
水時は斜め横の大木に頭から倒れた。
ガッ!!
鈍い音が鳴り響き、水時は倒れた。
「お、おい!走!!」
東條が慌てて、水時を起こそうとする。
「……ダメだ、気失ってる」
雨は強く降り続けていた。