第29話-努力の成果-
「お、来たか信士」
浩太が嬉しそうに、言った。
「早速やるぞ」
「よーい、スタート!!」
前と同じように、5人は一斉にスタートした―。
呼吸が楽だ。
体も軽い。
信士は前回とは違い、軽やかに走っている。
5周目に入っても信士は楽に走っていた。
「………?」
走りながら、浩太も驚くほどだった。
7周目に入ったとき、また浩太はスピードを上げた。
それも、前よりもずっと速いペース。
「はぁ…はぁ…」
後の3人は付いてこれなくなっている。
ラスト1周、浩太はさらにスピードを上げた。
「はぁ、はぁ」
ぼくは、最後まで浩太に付いていった。
ぼくも、浩太も息を切らしている。
「はぁ…はぁ…信士、すげーよ」
「…水泳の力かな……?」
呼吸が楽になったのに、水泳が関係あるのは間違いなかった。
泳いでいたのは、無駄じゃなかったんだ―。
「おい、なんであんなにスピード上げたんだ!?」
九条先生が浩太に叱るように聞いた。
「信士、すげぇ余裕そうだったから、なんか、競いたくなって…」
「……そうか、それで伊達、お前、泳ぐ以外に自分で走ってたな?」
一瞬、自分の事を当てられ、びっくりした。
「…は、はい」
「………」
「…明日からはまた、普通に長距離に混ざっていい」
「ありがとうございます!!」
「信士、負けねぇからな!」
「おう!!」
「…オレ、見直したよ」
浩太が改めて言った。
「…見直したって、なんかやな感じだな」
「お前、やっぱり本気だったんだって分かったからさ」
「野球辞めたって聞いたときはちょっと、見損なってたんだぜ?」
そんな…なんで?
「覚えちゃ、いないだろうけど、約束だったからさ」
「オレが、肩を壊して野球を辞めたときの」
浩太が野球!?