第28話-変わるもの-
「よし、集合だ!」
九条先生が生徒達を集める。
夏休みはもう、中盤に入り、信士も陸上部に慣れてきていた。
「夏休みの前から、言っていたように夏休みの終わりに合宿に行く」
「合宿で実力を上げるのも、もちろんだが、夏休みにどれだけ成長出来たかを知る機会でもある、まずは合宿に向けてしっかり練習しろ」
「それから、その日の合宿では、隣町の北星中とかぶっている」
(……!)
北星中と言えば、水時がいる学校。
「北星中は毎年、結果を残す名門だが、こっちも負けていないというのを見せつけてやれ」
「以上!!解散」
「水時のとこって凄いの?」
帰り道、詩織と浩太に聞いてみた。
「うん、毎年総合点では完璧に北星中だな」
浩太が答える。
「そこといっしょに合宿かぁ~」
「それよりさ、宿題進んでる?」
浩太が気まずそうに聞いてきた。
夏休みの宿題は初めて部活に来た日、詩織から渡されていた。
「うん、大体は終わったかな、後は自由研究ぐらい」
「は?」
詩織と浩太はとてつもないぐらいに驚いた顔をしている。
開いた口がふさがらないとはこのような時に使うのだと思った。
「え、なんか変なこと言った?」
「あの信士が……ありえない…」
そんなに!?
「記憶喪失って不思議だなぁ」
2人は勝手に不思議がっていた。
「そっちはどうなんだよ?」
「俺は、手もつけてない、ピッカピカの新品だな」
「…大丈夫なの?」
「私も大体終わってるよ」
詩織はニコニコしながら言う。
「やばいかも……」
浩太は言葉とは裏腹に、なんとも思ってない顔で言っていた。
それから―
信士は毎朝必死に走り続け、部活でもひたすら泳いだ。
最初はわき腹が痛くなりながら、走っていたが、今では速度を上げて、距離もずいぶん延び、
水泳にしても、息が楽になり、すいすい泳いでいた。
合宿まで、3日と迫ったその日、いつものようにプールに向かおうとしたところを九条先生に呼び止められた。
「今日の長距離の練習は外周だ、走るか?」
「はい!」
やっと、走れる!!