第25話-ぼくの過去-
「んなこと前からじゃないですか!」
「ちがう…」
「奴らは、そんなレベルじゃない」
「どうゆう、ことですか?」
心臓が脈打つ。
「君にはこないだのことを全部話そう」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥薬物所持で捕まえたのは、この近くにある高校の生徒だった。
「Crowってのは、俺らみたいな、学生の集まりだ」
「な、何を言っている、わけの分からんことを言うな!!」
「これだから、大人は………」
その瞬間、
「か、神!!」
高校生は何故か急に、道路の方へ走り出した。
「キィィィィッ!!」
しかし、走ってきた車にはねられ、高校生は道路の上に倒れた。
「お、おい!」
慌てて、高校生のもとに警察官が駆けつける。
「う、うぅ………」
まだ、意識はあるようだ。
「神…何故…?俺はあなたの言うとおりに………」
道路の反対側を向いたまま言い、そのまま高校生の意識が途絶えた……。
「げ、幻覚でも見たのか…?」
一人の警察官が言った。
確かに、薬物の乱用者には、幻覚が見えることがあると聞く。
でも、
今回は明らかに違う。
高校生は何かに、従って行動していた…?
だとしたら、この事故も計算されていたんじゃ…?
永井は道路の反対側に振り向いた。
この事故にたくさんの人が集まっていた―。
「奴らは、これぐらいのことを当たり前のようにやる」
「このまま、学校に通うのは危険すぎるんだよ」
(…………)
「だとしても、このぐらいで逃げ出せません」
「何言ってるんだ、殺されるかもしれないんだぞ」
「走らないんじゃ、死ぬのといっしょです」
信士の目は本気だった。
「なっ………」
「ぼくの中には、過去が一つしかありません」
「だから、その一つを追い続けるんです」
「『今』のために…」
永井はひるんだ。
自分は今、中学生に言い負けている。
この少年の熱意、度胸に負けたのだ。
「……犯人は…犯人は僕が必ず捕まえて見せる」
「君は君のやるべきことをやるんだ、その先にきっと過去が見えてくる」
「じゃ、じゃあ…」
「あぁ、学校に行っていい」
信士には、再び光が見えた。
さっきまでよりも、ずっと眩しい光が。
それは、目標が強くなったからなのか、
その周りが暗くなったからなのかは、分からないが…。