第23話-謎(なぞ)-
息が苦しい。
さっきから、ずっと泳ぎっぱなしだからだ。
1日、3000メートルを泳ぐこと、九条先生に言われたぼくの別メニュー。
それも、3日目になるとますますキツくなってくる。
「おーやってるな」
たまに、先生の目を盗んでは浩太が様子を見にくる。
「あぁ、やっと2000終わったよ」
「…俺らよりキツいんじゃねーか?」
「かもね」
水泳で肺が強くなるとかなんとか、聞いた事はあったが、みんなが走ってる中、自分だけが泳いでいるというのはなんとなくいやだった。
「じゃあ、あと1000、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
「あ、そうだ」
「あのさ浩太、ぼくって…」
「?」
「…やっ、やっぱりなんでもない」
夕子について、聞きたかった。
それ以前に、ぼくには彼女がいたか?と。
入院中、詩織も浩太も彼女について一言も喋っていなかった。
それが、いきなりの告白。
疑って当然だった。
「先輩、お疲れです~」
プールから上がったぼくに、人目を気にするようにして、夕子が言った。
「う、うん…」
「先輩、今日一緒に帰りましょ♪」
「いや、浩太達と帰るから…」
「えぇ~、先輩冷たいです、前にも言ったように私達、付き合ってたんですよ?」
「明日は、絶対ですからね」
「…分かった」
どうしても彼女がいたという、確証が持てなかった。
「薬物乱用者確保!!」
捕まっているのは、高校生。
「なぜ、こんなもの使った!?」
「……」
「おい!!聞いてんのか!?」
「………」
「お前、ブラックバードには関係あるのか?」
「……ブラックバード?なんだそりゃ」
「俺は、」
「俺は、『Crow』に入りたくて、ヤクを使った」
(Crow……?)
「おい、なんだCrowってなんか知ってんのか!?」
「知らねえよ、ただCrowってのは」
「俺らみたいな、学生の集まりだ」