第22話-スタート-
ドキッ
心の中がうずく。
あれが本当のことなら、ぼくは夕子にとても悪いことをしてしまった。
ふと、時計を見てみる。
午前3時、なぜか眠れなくてしょうがなかった。
「今日から、再び部活に伊達が参加することになった、しかし、前にも言ったように記憶がないからそこら辺は気ぃ使ってやれよ」
九条先生が部員を集め、言った。
「よろしくお願いします」
続けて、ぼくも頭を下げた。
「あと、伊達は長距離として、加わることになったから、そこんとこよろしく」
「じゃあ、後は市原、いつものように頼む」
「はい、よしジョックいくぞ!」
「はい!!」
「ほら、いくぞ」
信士のもとに、詩織と浩太が来てくれた。
「うん」
「次、ブロック!!」
(?)
「信士、こっちだ」
浩太が呼んでくれた。
「先生~信士連れてっていいっすよね?」
「ああっちょっと待て」
九条先生も来た。
「今日の練習は外周だ、伊達はついてけるとこまでついてってみろ」
「はい」
「よーい、スタート」
浩太の合図と共に、長距離5人は一斉にスタートした―。
「ハァ…ハァ…」
5周目を過ぎ、信士の呼吸が乱れてきた。
それに比べ、他の4人には疲れている気配がない。
そんな状態に気づいたのか、
「大丈夫か?」
と、浩太は心配してくれている。
ぼくは、声が出せず頷くのが精一杯だった。
「信士、少し上げるぞ」
7周目に入ったところで浩太はスピードを上げた。
「ハァ、ハァ、ハァ」
わき腹は痛み、喉が切れそうなほど、呼吸は苦しい。
「OK終わり」
10周を走り終え、信士は地面にへたり込んだ。
「大丈夫か~、信士?」
浩太はまだ余裕があるようだ。
「先生、終わりました~」
「そうか、お疲れさん、信士はついてこれたのか?」
「はい、今ここで死んでますけど」
それほど、信士にはきつかった。
「…分かった、お前らはクールダウン行ってこい」
「伊達はあと、休んどけ」
「はい…」
でも、5分後
「回復しました」
「いや、まだ休んどけって」
「大丈夫です」
しかし、信士の顔つきは、完全に回復していた。
(‥‥‥)
「お前んちに水着あるか?」
「え?あぁ、あったと思いますけど…」
「じゃあ、明日から泳げ」
「は?」
「だから、明日からお前の練習は水泳だ」