第16話-退院-
「こんにちはー」
鈴木先生と退院の事について話し合っていたところに、詩織と九条先生が訪ねて来た。
「はい、新しい小説」
詩織は毎回、暇つぶしになるようにと、小説を持ってきてくれていた。
「あ、いや今回はもう、いいんだ」
「え、なんで?」
差し出した小説をしまいながら、聞いてきた。
「突然だけど、明日退院出来ることになったんだ」
「本当に!?」
詩織は本当に嬉しそうな顔をしている。
ふと、『ブラックバード』の事が頭をよぎった。
まさか、ないとは思っても退院した時また、狙われるんじゃないかと。
その時、詩織や水時、ぼくの周りの人達が危険な目にあったりしてしまうんじゃないか、と。
「良かった…本当に良かった‥‥」
「ちょっ、泣くなよ」
「だって、だって…」
こんなに喜んでくれる人がいるんだ。
だからこそ、迷惑だけはかけたくない。
「それで、九条先生にお話しがあったんです」
鈴木先生が口を開いた。
「なんでしょう?」
「退院してからの部活動のことなんですが、いつ頃から伊達君を入れてもらえますか?」
「あぁそうですね…丁度、夏休みに入るところなので…」
「じゃあ是非、夏休みからで!」
信士が言った。
少しでも、早く練習がしたい!
「…本人はこう言ってますけど大丈夫ですか?」
鈴木先生も聞いてくれた。
「う~ん、分かった!」
「ありがとうございます!!」
「じゃあ、明日また来るから」
「うん」
-退院当日-
この日は、詩織に浩太、九条先生も来てくれた。
「鈴木先生、本当にありがとうございました!」
「いや、またなんかあったらすぐに来るんだぞ」
「はい!」
「じゃあ、そろそろ行くよ」
母さんが言った。
と、その時
「信士!!」
洋介が息を切らして、走ってきた。