第15話-ブラックバード-
「6月25日、発見された時間が7時45分」
(……?)
「君が事件に巻き込まれた日だ」
「どんぐり沼と呼ばれる沼があるんだが、そこで君が溺れているのが発見された」
「…なんで?」
「君のお母さんの話だと、君は朝早くランニングに出ていたそうだ」
(‥‥水時に勝つために…)
「…犯人は‥‥?」
「すまない…まだ、捕まっていないんだ」
「でも、目星はだいたいついてる」
目星がついている?
なら、何故捕まってないんだ?
「ここら辺で、麻薬の取引を多くしているヤクザグループがあるんだ」
「前から、警察でもそのグループを捕まえようと、必死に捜しているんだが、なかなか尻尾を掴めないでいる」
「それがなにか、関係あるんですか?」
「事件現場にはわずかだが、少量の覚せい剤が見つかったんだ」
(‥‥‥)
「ここからは僕の勝手な仮説だが」
「あの日、君はランニング中、そのグループが覚せい剤を使用または取引しているところに出くわし、口封じの為に襲われた」
「‥‥」
本当にそうなら、ぼくはとんでもない事に巻き込まれたんじゃ…。
「…どんぐり沼は昔、人が死んだという噂からめったに人が通らない沼らしい」
「覚せい剤を使うには丁度いい場所だ…」
「…そのグループってのは?」
「…何も分かっていないんだ、毎回警察が動く時にはいつも遅い」
「ただ、警察の間では、『ブラックバード』と呼ばれているんだ」
「悪いな、全然力になれなくて」
「でも、絶対に犯人を捕まえてみせるから」
永井さんの言葉とは裏腹に、信士の心の中は不安でいっぱいだった。
でも、
でも、水時に勝つにはまず、退院は絶対にしなくちゃいけない。
「永井さん、鈴木先生も」
「ぼくは、大丈夫です、だから退院は絶対にします」
「あ、あぁ」
事件は、ぼくが思っているよりも深刻で残酷なものだった。