第13話-ランニング-
「…ハァ…ハァ」
暗い夜道を街灯が照らし出す。
人通りが少なくて、信号がほとんどない道、水時のいつものランニングコースだ。
水時はいつも、一周5キロあるこのコースを1日に朝と夕方の2回走っていた。
「フゥッ」
いつものように、最後の長い坂道にさしかかった。
水時はその坂を一気に駆け上がる。
と、登り終えたところに詩織がいた。
「何しに来たんだよ」
息を整え、軽くストレッチをしながら聞いた。
「別に、ただ昨日言ったように信士に会いに行ってくれたかなと思って」
前日、詩織は信士に会いに行くように、水時に頼んでいた。
「あぁ、行ったよ」
「それで、信士は何か思い出した?」
「なんにも、でも」
「アイツ、俺と競うつもりらしい」
「競うどころか、勝つつもりらしいよ」
「ふっ、まぁ無理には変わりないさ」
「どうかな?」
詩織が楽しそうな顔をして言った。
「俺は、絶対に負けないんだ…」
「そう、じゃあ帰る」
「ランニング中、失礼しました~」
そう言い残し、詩織は行ってしまった。
(俺は、負けない…)
「あの日」のことが目の前に浮かんだ。
(絶対に戻らない、あの日のようには…)
水時はまた、走り出した。
次の日
「野球を辞める!?」
この日、見舞いに来ていた、洋介に陸上に専念すると伝えた。
「ふざけんな!絶対に納得しないからな!」
「どうしても、勝たなきゃいけない奴がいるんだよ…」
「だからってなんだよ!いいか、お前には才能があるんだ!」
「野球は辞めちゃ、駄目なんだよ!」