第1話-事件-
2017年6月
-午前5時15分-
少年は走っていた。
息を切らし、何本も何本も繰り返し坂を駆け上がる。
ここは「どんぐり沼」と言われる沼。
昔、ここで人が死んだという噂から誰も近寄らなくなっていた。
それでも少年はここにある長い坂道を好んで走っていた。
季節は6月も後半に入り、やっと暖かさが出てきた頃、
朝の空が明るくなるのも早くなり始めていた。
19本目を走り終え、坂を下り終えた瞬間、
「何者か」にいきなり頭部を鈍器のような物で殴られた。
クラッ
目の前がぼやけ、意識がもうろうとする。
その時、草の陰から数人がさらに出てきた。
数人は少年を殴る、蹴るなど
暴行を加えてきた。
少年は抵抗したが
人数には勝てず
遂に意識が途絶えてしまった。
「何者か」はそれを確認すると、
少年を沼に落とした…。
-午前8時30分-
「キーンコーンカーコンキーンコーンカーンコーン」
2年2組の教室
(あーあ、あいつ遅刻かぁ)
宮嶋 詩織はそんな事を思いながら席につく。
5分後
担任の九条先生が急いで教室に入ってきた。
九条先生は30代前半の若い先生で
陸上部の顧問をしている。
朝のホームルームに遅れるような先生ではなかったので、
(めずらしいな)
この時は、みんなこんなもんだった。
「悪い悪い、ちょっといろいろあって遅れた」
「それでな、朝のホームルームの前にみんなに話ておかなきゃいけないことがある」
「今日、伊達が来てないんだが、実は」
「今日の朝早く、どんぐり沼で伊達が溺れているのが発見された」
(えっ‥‥?)