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プライベートビーチへ行こう!

翌日、朝。

俺はゆっくりと目を覚ますとここがどこかを認識するところから

始めないといけないようなまだそんな夢の中にいたが、

今日からちゃんとした合宿ということを念頭に置いてとりあえず顔を洗った。


カードキーを忘れずに取ると部屋を出る。

オートロックの音でまたビビッてしまう自分が多少情けなかったがまぁ、仕方ない。

俺はみんなが待ってるであろうリビングダイニングへと向かった。


「おう、バカ、起きたか」

「わんっ」

姉貴と泪乃が俺に気付いて挨拶?をする。


「ああ、おはよう」

俺も軽く挨拶を済ませると辺りを見回した。

姉貴はもうこの広い屋敷に順応したらしく好き勝手歩いては

どこから持って来たのか多種多様な新聞に目を通している。


「あ、先輩、おはようございます」

エプロン姿のひとみが出てきた。

…なんだかとても見てはいけないものを見てしまった気がする。

いや、正直可愛いんだが普段のひとみを知ってると

やはり一歩引いて見てしまうのでまぁ、最初の感想はとりあえずこれである。


「ひとみ、何でエプロンしてんの?」

我ながら失礼極まりない質問だ。

だが敢えてここはすべきだろ。


「何でって、みんなの朝ご飯なのです。あたしも花の乙女なのだから料理くらいできるのです」

そう言ってひとみはフライパンとフライ返しを手に持ってカンカンと打ち鳴らした。


「ひとみの家ってすげぇ金持ちなんだから料理とか全部自動で出てきそうなもんだけどな、

ほら、執事とかメイドとか」


俺がそう言うとひとみは

「先輩、甘いのです、確かにあたしの家はお金を持っているかもしれませんが

持っているのはあくまであたしの親であってあたしではないのです。

あたしは女なので跡を継げないのです。

だから今のうちから何時先輩の家に花嫁に行ってもいいように

絶えず花嫁修業の日々に勤しんでいるのです」

と言った。


「はぁ、何だか知らんが金持ちも金持ちなりに大変ってわけなの…か?」


俺の答えにひとみは満足そうに微笑むと「なのです」と頷いた。


章太郎も続いて起きてきた。

「何だかあまりぐっすり寝れた気がしないな、でか過ぎるベッドというのも考え物だ」

とやっと俺の味方らしい意見が現れて俺は心底安堵した。


そうだな。

どのくらいの安堵感かと言うと、ガキの頃にあった引っ込む刃物らしき玩具を

本物と勘違いしたまま刺された後にそれが偽者だと気付いたくらい…

っていうか俺は例え話が下手だな。


とそこで、辺りを見回す。


「あれ…?田辺は?」

俺は1人足りないことに気付くと誰とも無しに聞いた。


「幼女ならまだおネンネの時間だ、何せ幼女だからな、

日に15時間は睡眠を取らなくてはならないのだろう」


姉貴は新聞から目を離さずに俺の問いに答える。


「マジか…あいつまだ寝てんのか」

「何というか、ある意味逞しいな」

俺と章太郎が同時に呟いた。


「何がだ?貴様らは昨日眠れなかったのか?」

と問い返してきた姉貴に俺と章太郎は多分、相変わらず高い順応力をお持ちですね、シモーナ様は。

という同じ感想を持ったに違いない。


30分後、ようやく眠たそうに目を擦りながらよちよちと田辺がおぼつかない足取りで歩いてきた。


「じゃあ、みなさん揃いましたので朝ご飯にするのです」と言ってひとみが料理を運んできた。

花嫁修業が云々の件は伊達では無かったらしくかなり美味かった。

惜しいね、これで人格さえ普通ならいい恋人も出来るだろうに。


「あたしには先輩とコウちゃんがいるので他に恋人はいらないのです」

と俺たちの食べた皿を片付けながらひとみは言った。


朝飯を食べて、茶を飲みつつマッタリしていると

姉貴が6部目の新聞を読み終えて全ての新聞を元あった場所に戻してきた。


っていうかどこにあったんだ、その新聞の束は。


「書庫だ」

簡潔に俺の問いに姉貴は答えた。

書庫、ね。

もう何が出てきても驚かないぞ。

慣れたものだ。


「部長、あたしの書庫に足を踏み入れたのですかっ?」

ひとみが聞くと

「ああ、ド変態らしい、実に変態一色に染まった書庫だったな、

マトモな読み物はあの6部の新聞だけだ」

と姉貴が言いそれに対して

「部長はわかってないです。あの新聞には全てバイセクシャル関係の記事が載っているのです」

と相も変わらず訳の分からない誇りでひとみは胸を張った。

「そんな下らないことでド変態と脳を共有しようなどと思わん」

「がーん」

きっぱりと姉貴が伝えるとよよよとひとみがオーバーに崩れ落ちる。


「なーなー、ぶちょう、こうはうみにいきたいぞ、うみにいくのだ!」

「海?海に行って幼女が何をする?」

「およぐにきまってるのだっ!」

その田辺の言葉に姉貴は盛大に笑うと


「はっはっは、面白い冗談だ、貴様の様な幼女が泳げるわけがあるまい」と

トンでもなく酷いことをサラりと言った。


「お、およげるのだっ!これでもこうはしょうがくせいのとき、

すいみんぐすくーるでいちばんだったんだぞっ!」


「ほぅ」


それを聞いた姉貴の目がキラリと光ると

「そこまで言うのなら幼女の泳ぎがどれほどの物か見物せねばなるまい、水着は持っているか?幼女」

と聞く。

「ぐもんなのだ、こうはいつでもどこでもまいみずぎをじさんしてるくらいすいえいずきなのだ」

「だったら水泳部に入れば良かったろうに…」

と呟いた俺の声を聞いた田辺は何かトラウマでもあるのか


「はいろうとおもったけどせがひくすぎてだめとかいう

わけのわからないりゆうでにゅうぶできなかったのだ」

と言った。


「ああ…まぁ、高校のプールに足、届きそうも無いもんな、田辺…」

と俺は同情の念を込めて呟く。


ひとみはまた向こうでプールの底に足が着かなくて

もがき苦しんでいる田辺を想像してるのか必死に笑いを堪えていた。


「ぷぷっ…プールに届かないコウちゃん、萌える…ぷぷっ」

とか呟いてる。


「で、どうすんだ?海行くのか?」

「ああ、ド変態、私は生憎こんな辺境の地に追いやられるとは

思っていなかったから水着を持参していない、私に合う水着はあるか?」


姉貴の問いにひとみは

「大丈夫です、そもそもここに来ようと言ったのはあたしですので、その辺の抜かりはないのです」

と胸を叩いた。


「もちろん、男性用水着もあるのです」と付け加えた。


それは全うな水着なんだろうな?


「大丈夫なのです、先輩のブーメラン水着は確かに魅力的ですが、

副部長のは見たく無いですから普通のを用意させていただきました」

と言って奥にある一面のクローゼットを開ける。


そこには大量の水着が用意されていた。

確かに普通のもあるが中にはなんじゃこりゃという珍品まで揃ってる。


「念には念をいれました、もしかしたら先輩たちが

望むといけないと思ったのでそのための配慮です」


「わんっ!わんっ!」


泪乃がクローゼットの奥まで顔を突っ込んではしゃいだ。


「おー、るいの、たんけんかっ?こうもまけないぞー!」


そう言うと田辺も女物の水着の山に突貫した。

俺たちは一旦水着をそれぞれの部屋に持ち帰って着替えを済ますと今度は屋敷の玄関前に集合した。


「プライベートビーチはここから歩いて2分ほどです、何時でも疲れたら戻ってこれるのです」


そう言うとピンク色のビキニを着たひとみが出発です、と言って先導切って歩き出した。

これまた何故かスクール水着の田辺がきゃっきゃっと後に続く。


姉貴は割りとボーイッシュな感じの白と黒のストライプの水着。

続いて泪乃が青いワンピース(尻尾穴有り)を身に纏って姉貴にじゃれついた。


その後を俺と章太郎が

「これって文芸部の合宿なんだよな?」

という素朴な疑問を投げかけつつ後に続く。


まぁ、多分姉貴的には今日の文芸部の活動は今朝の新聞6部読破で終了しているんだろうし、

玉にはこういう滅多に来れない所で遊ぶのも悪くないという気持ちも

織り交ざってか俺も章太郎もそれ以上深くは追求せずにいた。

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