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見た目も頭脳も幼女「田辺光」

全国のロリコンのみなさん、おまたせしました(ぇ

泪乃が来てから4日が過ぎた。

放課後の部室。


俺と姉貴はじっと泪乃を観察している。

そこへ、実に1週間ぶりにやってきた部員がいた。


ガチャッと部室のドアが開く。


「やーやー、やっとかぜなおったのだー!」


ドアを開けて陽気に入ってくるその部員を無視して俺と姉貴は泪乃を見続ける。


「おーい、ぶちょー、せんぱーい、こうがやってきたぞー」

「五月蝿い、黙れ、幼女」


姉貴は一言で切り捨てると泪乃の観察へと戻った。


「ようじょいうなし!こうはこうこういちねんせいなんだぞ!!」

「ああ!?」


姉貴が声の主に振り向くと凄みを利かせて睨みつけた。


「ひぃっ!?ご、ごめんなさい」

「おい、姉貴!」

ぷるぷると震えだした泪乃を見て俺は叫んだ。


「来たか!?」

「わんっ」


泪乃はもう我慢出来ないとばかりに吼える。


「よし、トイレだな、こっちだ、泪乃!」


そう言うと姉貴は泪乃を連れ出して女子トイレへと猛ダッシュした。

ここ数日の日課、トイレの躾、だ。


見た目が可愛い女の子だからこれを最初にやろうと言い出したのは姉貴だった。

確かに、ぱっと見美少女にしか見えない泪乃が片足を上げて、

小便をしてる様はあまり見たくないからな。

無難な躾だと俺も思った。


と、いうわけで姉貴とひとみが交替で泪乃を観察して、

トイレに行きたいそぶりを見せたら女子トイレへと連れ込む。


え、何で俺が参加してないか?

………わかれよ、女子トイレになんか入れるか。


とにかく、そんな日々が続いている。


「うぅ…こうはいらないこなんだ…」

「ん?何だ、田辺来てたのか」

「いまごろきづいたー!」


そう言うと目の前の小学生、じゃない、これでも高校1年だ。

田辺光(たなべこう)、15歳。

恐ろしく童顔で背も132cmしかなくどう贔屓目(ひいきめ)に見ても

8歳くらいにしか見えないが本人はいたって大人の女性のつもりである。

少しでも大人になろうと思って無理に染めたであろう栗色の髪の毛は

腰まで伸びていて軽くウェーブがかかっている。


しかもおつむが弱い。

決定的なまでに。

それはもうよくこの高校に入れたものだと感心するほどに。


「こうはあたまわるくないぞっ」

「全部ひらがなで喋る人間のどこに知性を求めろと?」

「むー!だから、かんじをおぼえるためにこのぶにはいったのだ」

「はいはい、良い子だから大人しく本でも読んでろ」


俺は田辺の頭を軽く撫でるとそう言った。


「ふぁ…うん、そうするのだ」

田辺は気持ち良さそうに目を瞑ると大人しく読む本、田辺の読む本は絵本か童話だが、を探し出した。


「あ、そだ、せんぱい」

お気に入りの絵本のタイトルを探しながら田辺が質問してきた。


「何だ?」

「さっきのおねえさんはだれだー?」

「お姉さん…?」

「ぶちょうがひっぱってたやつだー」

「ああ、泪乃か…」

「しんにゅうぶいんかっ!?こうのこうはいかっ!?」

「残念だが違う」

「むー、じゃ、だれだ?」

田辺は膨れっ面になると俺に問いかけた。


「うん、話すと長くなるんだがな…」

俺は田辺クラスのおつむでもなるだけわかりやすく出来るだけ簡潔に要点だけを説明した。


「えー!?じゃ、じゃあ、あれはわんちゃんなのか!?」


大きな瞳を丸くさせて田辺は驚愕した。


「そうだ」

「でもひとのかたちをしてるぞ!しかもびじんさんだ!!」

「そうだな」

「ふしぎだー」

「いいか、田辺、この事は誰にも言ってはいけないぞ」

俺は小学1・2年の児童に諭すように言う。


「なんでだ?」

田辺は不思議そうな顔をして聞き返してきた。

「そりゃ、お前、あんな不思議犬がいることがわかったらパニックになるだろ」

「おー、そうか、うーん、でも、はなしたいぞ」

「大人は普通、話さないんだ」

「むむ…そうか、おとなははなさないのか、じゃあこうもがまんする!」


田辺はこの大人だから何々はしない、あるいはする。というフレーズに弱い。


「よし、良い子だ」

そう言うと俺は田辺の頭を撫でる。

「ふぁ…」

ついでに言うと田辺は頭を撫でられるのにも凄く弱い。

8歳でもまだ年上な気がしてきたな

…5歳児並みか?



「コウちゃーん」

その時、田辺の後ろからにょきっと手が出てきて田辺をぎゅっと抱きしめた。

「もう、1週間も休んで心配したんですよ~、はむっ」


ひとみだった。

ご丁寧に田辺の耳たぶを甘噛みしてやがる。


「ふあああああ!!で、でたなぁ、かんなぎひとみっ!!!」

「何ですか、そんなに嫌がらなくてもいいじゃないですか」


田辺は小さな手足をブンブン振り回しながら必死にひとみの腕の中でもがく。


「ふふふふふ、コウちゃんの体はもうあたしのものなのです」

「やめろー!こうはまだじゅんすいなのだ!おまえとはちがうんだっ!!」

「手取り足取り、いい事を教えてあげますよ」

「いらーん!!たすけてくれ、せんぱーい」


田辺はそう言うと潤んだ大きな瞳で俺に哀願してきた。

仕方ないので俺はひとみの腕を田辺から引き剥がす。


「あーん、先輩、何故に邪魔を…はっ、嫉妬?」

「馬鹿」

「はぅん、今あたしは心に100のダメージを受けました」

「ほう…それはいい事だな、馬鹿馬鹿馬鹿」

「はぅはぅはぅ!」


…俺がバカみたいだから止めておこう。

それにこれはダメージを受けてる顔じゃない、むしろご褒美を貰って喜んでる顔だ。


「いやいや、やっと泪乃も女子トイレのマークと便器を認識したな」

そう言いながら姉貴が泪乃を連れて戻ってきた。

「泪乃ちゃん、昨日あたりからおしっこしたくても我慢するようになりましたよ」

とひとみが泪乃の頭を撫でながら言った。


「うむ、中々どうして利口だったな、犬の躾というのはもっとかかるものだとばかり思っていた」

「なんだー、るいのはひとりでおしっこにもいけないのか、こどもだな、はははははは!」

「まあ犬だからな、お前は一人で行けるのか?幼女」

心底田辺をバカにした目で見ると姉貴はそう言い放つ。


「い、いけるもん!こうをばかにするとぶちょうでもゆるさないぞっ!」

「はっはっは、そういう台詞は夜中に一人でトイレに行けるようになってから言え」

そう言いながら姉貴は田辺の頭を軽く小突く。


「いけるったらいけるもん!」

ぷくーっと頬を膨らまして怒りを顕わにする田辺。

しばらくそうしていたが何を思ったのか田辺は急に膨れっ面を

元に戻すとまるで青い狸型ロボットが歩くときの効果音を出すような歩き方をして泪乃に近づいた。


「るいのー、おてをしろー!」

そう言って泪乃に手を出す。

が、泪乃はじっと田辺を見た後にふんっとそっぽを向いた。


「むがーっ!なんでおてをしないんだ、おまえわんちゃんだろっ!?」


「ぷっ…」

ひとみが思わず顔を背けて噴出す。


「犬は自分より強い者に従い弱い者を見下す習性があるという。

貴様は今、泪乃の中で最もランクの低い者として認識されたのだ、幼女」


姉貴が哀れみの念を込めて田辺にそう言った。


「な、なんだ、むつかしいことばをつかってわけのわからないことを」


困惑する田辺。


「つまり、幼女は犬より下の立場になったわけだな」

「な、なんだとー!こうがわんちゃんよりしただというのかっ!?」

「ぷぷっ…コウちゃん、可哀想です」

「哀れとしか言いようがないな」


「くそー、るいのとかいったな、ばーか、ばかいぬ!」

「がるるるるっ、あうっ!」

そう言って人差し指を突き出した田辺の指の先端を泪乃は容赦なく噛んだ。


「うあー!かまれたー!!」


田辺が噛まれた指を盛大に天井に向けて叫ぶ。

「こら、泪乃、人を噛んじゃ駄目だ」

俺はそう言って泪乃の頭を叩く。

「くぅ~ん」


「く、くそー、いまにみてろ、ばかいぬ!ぜったいにおてをさせてやるからなっ!!」

「わんっ!」

「ひっ」


泪乃が一吼えすると、田辺は高速で俺の後ろへと隠れる。

俺のズボンの裾を掴んでガタガタと震えながらそーっと泪乃を見た。


「お前なぁ…本当に高校生か?」

「こ、こうこうせいでもこわいものはこわいのだ…」

「あっははははは、コウちゃん、可愛すぎます…くくっ」


遂に我慢の限界に達したのかひとみが吹き出す。


「うむ、流石は我が部が誇るマスコット人形だ、ナイス仕事をしているぞ、幼女」

姉貴も何故か満足気に頷いている。


「くぅ~、み、みかたはせんぱいだけなのだ」


やれやれ…女三人寄ると姦しいな………


「だ、だいたいだ、ぶちょうもかんなぎひとみもおてできるのかっ!?

じつはできないんじゃないのか!!」


その田辺の発言にひとみが厭らしい笑いを浮かべて

「あたしがお手させることが出来たらコウちゃんあたしの言う事何でも一つ聞きますか?」と言った。

「いいだろー、のぞむところだっ!」

いや、田辺、お前この手に引っかかるの何回目だよ、いい加減学習しろ…


「泪乃ちゃん、お手」

「わうっ」


ひとみがおもむろにそう言って手を差し出すとまぁ、何とも素直に泪乃は手を差し出した。


「ぷぷっ…コウちゃんの体、ゲーット」


田辺の方を見てひとみがほくそ笑む。


「くぅ~…じゃ、じゃあぶちょうはっ!?」

「泪乃、伏せだ」

「わんっ!」


姉貴の命令に泪乃は元気良く吼えるとその場に寝そべる。


「ふ、ふせ!?そんなこうとうてくにっくまで…」


姉貴は自慢げに田辺を見下すと

「私にかかればこんなこと造作も無い、出来ないのは貴様だけだ、幼女」と言った。


「あぅぅ…せ、せんぱいはこうのみかただよな、な?」


くりくりとした瞳を潤ませながら田辺が俺を上目遣いで見る。


「…あぁ…えぇと…」


すまん、田辺。

流石に俺も泪乃に下には見られたくない。


「泪乃、お手」

「わふっ」


俺が手を差し出すと泪乃は立ち上がって俺の手の上に自らの右手を乗せた。


「う、うわーん、みんなてきだーーー!!」

田辺は泣きながら栗色の髪を翻し部室を出て行こうとする。


「待て幼女、逃げる気か、貴様は見た目だけではなく中身まで子供だったのか?」

姉貴の言葉に田辺の動きがぴたっと止まる。

ああ、また子供扱いされたことに何か思ったものでもあるんだろうな。


「こ、こどもじゃないぞっ!にげたりしない!」


…やっぱりな。


「ようし、よく言った、人間が舐められるといかんからな、お手が出来るようになるまでここにいろ」

姉貴が悪女の様な笑みを浮かべながらそう言った。


「わ、わかったのだ…るいの、おて」

がぶっ。

「ぎゃーーー!!!」

「そういや章太郎はまだ休みか?」

「ふ、ふくぶちょうならまだねつがあるからっていってたぞ…おて」

がぶっ。

「うあーーーー!!!」


俺の問いかけに手を噛まれながら田辺が言った。


「一番厄介なのが残っちまったな」

「うむ、果たして奴がこの現実を受け入れるかどうかが多分に心配だ」


結局一日経っても田辺は泪乃に同系列に見られることは無く、この日の部活は終了した。


「ふん、きょ…きょうのところはこれくらいでかんべんしてやるのだ」

捨て台詞にも程があるぞ、田辺。


「わんっ」

「ひっ!あ、あしたおぼえてれよ、るいのーっ!」

「コウちゃ~ん」


後ろから田辺に抱きつくひとみ。

「な、なんだかんなぎひとみっ!?」

「さっきの約束、覚えてますかぁ?」


ひとみは田辺の頭を撫でながらそう言った。


「ふぁ…や、やくそく?なんだ?」

「お手が出来たらな~んでも言う事聞くってやつです」

「げっ…」


思い出したかのように田辺が唸るとひとみは問答無用で田辺を抱き上げた。


「さぁ、一緒に帰りましょうね~」

「うあー、はなせー、じんるいのてきー!へんたいー!」


そう言うとひとみは強引に嫌がる田辺を抱えたまま商店街の方へと消えてった。


「私たちも帰るか」姉貴がぽつりと呟く。


「そうだな、あの二人が揃うとこの上なく疲れるな」

「まことに遺憾だがそこだけはバカと同意せざるを得ないな、

何故うちの部には奇人変人しか寄ってこない?」


「部長がそもそも奇人変人だからじゃないのか?」

「殺すぞ、バカ、章太郎が出てこないと纏らん、早く風邪が治るといいのだが」


全くだ。

この集団を纏められるのは章太郎くらいのものだろう。

実質、顧問の黒沢だって姉貴が部長になってからというもの

関わりあいたくないとかいう理由で滅多なことで部に顔を出さないし。


「さぁ、それより帰るぞ、今日こそは泪乃に箸を使わせてみせる」

「無駄な努力が好きだな、姉貴…」

俺が呆れ果てたように呟くと

「ふっ、バカはこれだから困る、

お前は知らないかもしれないが昨日の夜、泪乃は箸をぐーで握ったのだぞ」


「マジか!?」


「私は何時でも大真面目だ、なぁ泪乃」

「わんっ」


泪乃は笑顔でそう吼えた。

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