表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末世界の管理業務。人材より人命が足りていません――欠勤事由:死亡のため  作者: ぶらっくそーど


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/27

管理者の朝は、死亡リスクの確認から始まる⑤


 事務室に戻り、椅子に座り、天井を仰いだ。



忘却の魔王(オブリビオン)】。近づくと記憶が消える。

現実裂きの勇者(リアルブレイカー)】。嬉しいと空間が裂ける。

沈黙の魔女(サイレント・ウィッチ)】。喋ると声が凍る。

破壊の結晶獣クラッシュ・クリスタル】。存在するだけで建物が壊れる。

境界の魔法少女(ボーダーライン)】。未来が見えるのか見えないのか分からない。



 そして俺には、型落ちの防護スーツと壊れた端末と、表紙しかないマニュアル。



 圧倒的に武装が足りていない。いや、武装以前に情報が足りていない。情報以前に人員が足りていない。人員以前に、たぶん、人命が足りていない。



 デスクの引き出しを開けると、前任者のメモがもう一枚出てきた。




『この仕事のコツ。①死なないこと。②チョコを切らさないこと。③ラグナに近づきすぎないこと。④カイムの予言を真に受けすぎないこと。⑤セラが泣いたら走れ。⑥メルトのノートを補充しろ。⑦それでも死にそうになったら――』




 ⑦の続きは、やはり途切れていた。



 もしかして、⑦を書いている最中に死んだのではないか。



 いや、考えるな。考えても答えは出ない。出ない答えのために使う思考リソースがあるなら、チョコの在庫確認に使え。それが、前任者の遺した最後の教訓だ。



 俺は引き出しを閉じ、端末に今日の業務日誌を入力した。




<業務日誌 50億2025年4月3日 灰嶋司>

<本日の業務内容:変位個体(ディスプレイスド)との顔合わせ(全5体)>

<特記事項:記憶が0.5秒消えた。空間が歪んだ。声が凍った。床が割れた。明日泣くらしい>

<所感:転職したい>




 送信ボタンを押すと、自動返信が届いた。



<転職先は存在しません。明日も頑張りましょう。>



 ネビュラス・ドットインクのAIアシスタントは、残酷なほど正確だった。


 明日も、ここで生きる。


 それだけが、50億年後の世界で俺に許された唯一の選択肢だ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ