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終末世界の管理業務。人材より人命が足りていません――欠勤事由:死亡のため  作者: ぶらっくそーど


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12/27

抽出業務は命懸け。なお、危険手当の申請書は148ページです⑥


 16時30分。最後の一人。カイム。


 カイムは、抽出(ドレイン)室に入ってきた時から笑っていた。


 いつもの、穏やかで、少しだけ焦点の合わない微笑み。



「やあ、司くん。お疲れ様」


「お疲れ様です。最後の抽出(ドレイン)です」


「うん、知ってるよ。明日の司くんがそう言ってたから」


 もう何も訊かない。訊いても答えが時間軸をまたいでくるだけだ。



「椅子に座ってもらっていいですか」


「いいよ」



 カイムが椅子に座る。問題なし。装置を起動する。問題なし。光の膜が展開する。問題なし。


 数値が動き始める。3%……5%……8%……。


 安定している。カイムの抽出(ドレイン)は、手順書によれば「予測困難」と記載されていた。安定する日もあれば、装置が時間的に前後する日もあるらしい。「装置が時間的に前後する」という文言の意味を、俺はまだ理解していない。理解したくない。



 12%……15%……。



「司くん」


「はい」


「この仕事、長く続けるつもり?」



 今日だけで二回、同じ趣旨の質問をされている。セラとカイム、訊き方は違うが中身は同じだ。



「辞めたくても辞められないので、続けるしかないです」


「そっか」



 カイムは少し黙った。



「……ねえ、ひとつ教えてあげる」


「なんですか」


「来週の水曜日、気をつけてね」



 また予言か。



「何が起きるんですか」


臨界点クリティカル・ポイント



 その単語に、空気が変わった。



臨界点クリティカル・ポイント、というと」


変位個体(ディスプレイスド)の暴走。来週の水曜日に起きるよ。たぶん」


「たぶん?」


「うん。たぶん。八割くらいの確率で」


「残りの二割は?」


「木曜にずれるかも」



 予言の精度が中途半端に高い。曜日の誤差はあるが、「臨界点クリティカル・ポイントが来週起きる」という情報自体は、もし本当なら致命的に重要だ。



「誰が暴走するんですか」



 カイムは微笑んだ。



「それは、起きてからのお楽しみ」



 お楽しみという単語を使っていい文脈ではない。


 20%。抽出(ドレイン)完了。カイムが椅子から降りる。



「司くん」


「はい」


「泣かなかったね、今日」



 ……そういえば、昨日カイムは「明日の司くん、泣いてたよ」と言っていた。



「泣いてないですけど」


「うん。わたしの見間違いだったのかも。それとも、見たのが明日じゃなくて、もっと先の司くんだったのかも」


 カイムは手を振って、部屋を出ていった。


 もっと先の俺は、泣いているらしい。


 来週の水曜日に、臨界点クリティカル・ポイントが来る。


 その二つの情報が、繋がっているのかいないのか。


 今の俺には、まだ分からなかった。



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