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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

ぼっち陰キャがリーダーになりたい話

作者: 月野花丸
掲載日:2026/03/05

特に理由はなかった。ただ友達ができなかった。何かワンテンポズレてるというか、熱量が他の人と違ってて、会話で少し周りについていけなかっただけだ。しかし、俺はいわゆる陰キャというやつらしく、このクラスには同じ種類の人間がいなかった。いや、いたかもしれないが、そいつたちは俺抜きでつるんでいた。こんな環境であるのに、俺は学校が好きらしく、先生みたいにみんなを引っ張っていくリーダー的存在に惹かれる性質を持っていた。友達もいないくせに、ことあるイベントごとで委員長や司会に立候補し、クラスの陽キャたちにすごく変な目で見られた。彼らはこのクラスの序列一位の涼風という男に全部のトップの役職を務めさせたいからだ。俺は尽く負け、なぜかクラスを支配したがるやばいやつポジションを得た。なぜ立候補をやめなかったのかというと、それは気になる人が、アイドルグループのリーダーで、自分も同じ体験をしたいという願望があったのだった。気になる人、という言い方をしたが、つまり推しではない。どちらかといえば、嫌いなのだと思う。四月にどの委員の委員長にもなれなかった日、SNSで見つけた。そのアイドルは、涼風と同じ苗字だったから目に止まるようになり、それに人気すぎてSNSのタイムラインにいつも流れてくるのだ。こいつもリーダーをしていて、涼風に負けたくない気持ちが重なって、こいつにも負けたくないと勝手にライバル視していた。ライブの映像を見ても、いつも照明が当たってぼんやりしており、良い待遇を受けているようなので、俺はその位置を頂きたくなった。


 二人の涼風は俺を幾度も嫌な気持ちにさせた。クラスの涼風はリーダーに相応しく、完璧にクラスの前に立った。俺は委員長になれない腹いせで、話し合いの時ははちゃめちゃな意見を提案すると、


「おもしろそーだし、いいんじゃね。委員長に立候補するだけあるじゃん。みんなはどう思う?」


とか囃し立ててくる。優しいようなことを言っているが、目が笑っていないように見えて、俺は変な意見を言うのを躊躇うようになってしまう。そんなことも気づかない他のクラスメイトらは、涼風が言うならいいかも、と相槌を打ち始める。言葉通りの意味であるなら、俺に委員長を譲ればいいのに、俺みたいな能力がない奴には譲らないのが証拠だ。女子の告白は全部断っているとか聞くし、涼風はみんなのものらしい。俺はその宗教じみたクラスの雰囲気に吐き気がする。一方、アイドルの涼風は、クラスの涼風によく似た顔立ちをしているが、心の底からの笑顔を絶やさないところが違った。歌は誰よりも上手くて、ライブで音を外さないし、ファンの期待に応える透き通る歌声とは正反対の情熱的なパフォーマンスだ。ファンサで舌出しとかするところは、見るたびに鳥肌が立つ。兄気質だから、賑やかな他のグループメンバーをポジティブに、まとめ上げている完璧っぷりに…俺は悔しくなる。SNSでは、涼風の名前を出さず、監視した感想を自分と比較して書き込むのが日課だ。ファンとかではない。俺はW涼風にギャフンと言わせてみたいと言う思いを日々膨らませているのだ。


 しかし俺に転期が来た。休憩時間は暇であるため、いつものようにSNSを開いた時だ。


「…っえ」


 思わず声が漏れる。一番最初のタイムラインのニュースの投稿に、


「アイドルグループ"Stream"リーダー涼風電撃引退 人気女優との不倫が原因か」


と、表示されていた。俺はかなり苛立ちを覚えた。俺でないやつにギャフンと言わされてやがる。その事実に、胸の奥底からどかっと熱が込み上げ、全身を駆け巡る。その後、急にその熱が冷え、全身の毛先一本一本を正確に把握しているみたいな気分になる。臥薪嘗胆の精神で、アイドルの涼風を待ち受けにして毎日奮い立たせていたし、そのイライラを軸に一人ぼっちの休憩時間も弁当を食べる時間も、行事の係決めの時間だって過ごしてきた。バカだな、あいつも。こんな人間関係一つの不祥事で、リーダーの座を失うんだ。俺のライバルだったはずだろう。いつもファンを笑わせようとして、ビリビリと腹立つくらいの笑顔でファンを裏切らないと公言していたのに。俺はファンじゃないからいいが、あいつのファンは今頃悲しんでいるだろうな。ライバルの俺でさえ、気持ち悪いモヤモヤでいっぱいなのだから。


 一ヶ月も経てば、アイドル涼風のニュースの炎上は収まり、アイドル"Stream"は、リーダー抜きで新しく始動した。あいつは人気女優とは何もなかったとコメントを残していたが、そんなの分からない。俺はしたものだと受け取り咀嚼し、あいつを思い出さないようにした。文化祭実行委員の係決めをする日もやってきて、俺は初めて立候補するのをやめた。アイドルじゃない方の涼風は俺をチラチラ見ていたように思えたが、無視した。他のクラスメイトらは俺の奇行も終わったのかという雰囲気で穏やかに係決めと出し物決めをし、俺以外全員が団結したようにそれぞれすぐ決まった。俺はその時間が終わった後、どういうわけかその場にいられなくなり、保健室に行って吐き気と倦怠感を感じるから帰らせてほしいと先生に嘘をついた。しかし、体温計を測ると実際熱があって、ただただ正規の早退をした。俺は、両親のいない家に帰り、昼の暖かで優しい光に包まれた自室で、ルーズリーフを取り出し、


「涼風さんへ

 俺は先に進む。だから、涼風さんも早くまたリーダーになってください。」


と筆を走らせた。

主人公はW涼風のことが多分大好きです。


もしよかったらリアクションをいただけると大変喜びます。

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