第1章-5話
寝落ちから起きるとおやつの時間だった。いつの間に。ランを起こしてみる。水色の目が薄っすらと開く。あ、もしかして子猫特有の水色の瞳なのかな!かわいい!あ、でも獣化してないランは生後2ヶ月ではないから違うのかな?本を調べてまだ誰にも解明されていなければ研究してみてもいいかもしれない。
「ラン、ランのおうちはお昼ごはん食べるのかな?」
わたしの食事は朝昼兼用食と晩ごはんの2食とおやつ&夜食。両親は規則正しい朝昼晩の3食だ。朝起きられないからね。エルフだけど夜型なんだ。仕方ないね。
「ランね、レオちゃんといっしょがいい!おやつ食べる!」
「そっかぁ!じゃあおやつにしよう」
今日のおやつはクッキーだ。ランがテーブルの方に行ったので傍らに落ちていた蝋板を拾い上げる。寝落ちた時に落としたんだろう。ランの向かい側に座る。母の作るクッキーは素朴な味で美味しい。
わたしが「精霊の愛し子」であれば魔法陣を物理で刻むのも簡単だったかもしれないが流石にないものねだり過ぎるからね。物理で刻むと精霊や妖精の気まぐれで安定しない魔法陣ではなく、刻んでも安定する魔術陣で構成しないと。
「うーん、浄化以外に何を式に入れるか……」
クッキーを齧りながら首を傾げて考えていると反対側に座ったランも首を傾げる。かわいい。あ、真っ平らじゃなくて少し斜めにして流れやすいようにしよう。
「修繕を浄化槽を対象に定期的に掛かるように式を入れればいいかな」
修復は注いだ魔力分を直し続ける常時発動型の魔法で修繕は掛けた時に壊れた物を治す魔術だ。まだ現物を見た事は無いけど首都を覆っている大結界は精霊の愛し子が大昔に作り上げた修復を使った魔法陣らしい。年に数度要になっている魔石に魔力を注ぐか交換する事で維持をしているみたいだ。あ、今気付いたけど魔力の供給どうしようか?
「お母さん、魔術陣ってどうやって魔力供給すればいいの?」
「普段魔法で水を出すでしょう?水に魔力の残滓が残っているからそれを回収するように組めばいいと思うわ。あと予備の魔力源として魔石を埋め込んで、水から回収した余剰な魔力を備蓄しておく式が組めれば完璧ね」
蝋板に走り書きでメモをする。頭を使わないと間違った式を作って暴発させそうだ。魔力の回収機構かぁ、人が触れないように保護もつけないと大変な事になりそう。
「ランもレオちゃん手伝うの!」
クッキーを食べ終わったのか膝の上に乗ってくるラン。可愛いから何でも良い。白いお耳が元気にピコピコしている。流れるように頭突きされたので頭をヨシヨシと撫でる。何か毎度マーキングされるの嬉しいな。
「ラン、わたしのクッキーも食べていいよ」
「こら、ちゃんと公平になるように分けたんだから無闇矢鱈と甘やかさないの」
わたしを甘やかしまくってくる両親にそういう意識あったんだ!?
「怒られちゃった。全部じゃなくて1枚だけあげるね」
「わーいありがと!」
クッキー1枚でランの笑顔とスリスリはプライスレス。まぁ、考え事に甘い物は必要だからね。クッキー食べよ。片手にクッキーを持ちながら蝋板に条件を書き足していく。安全機構は絶対に必要なので何個か候補を書き出す。要らない箇所を削ってみるがどうしても式が多い分陣に変換した時に大きくなりそうだ。
「あ、そっか。今回は書く場所大きいから小型化は優先事項じゃないんだ」
多くなってもいいやと安全に重きを置いた魔術式を書く。あとはこれを魔術陣に変換すればいいんだけどこの蝋板は小さいので大きい蝋板を取りに行かないといけないんだけど、膝の上にランが居るんだよね。こてん、と首を傾げて見上げてくる。かわいい。白くてふわふわ。
「ランね、あったかいからレオちゃん好き」
「そっか〜!火属性の魔法が得意だからかもしれないね」
別に得意な属性と体温は関係があるといった論文は出ていないが多分関係ある気がする。関係なかったとしてもあったかいからランが寄ってきているらしいのでありがとう火属性を得意にしてくれた神様と祈る。
この国には複数の神様が居る。最高神は創造の女神様でその子供達がそれぞれの属性の加護を与える神様だったり産まれてくる子の得意な属性を決めてくれる神様だったりする。
そしてきっとランには美の女神が祝福を与えたに違いない。こんなにもかわいい。ああ、エルフの里(ただの村)から引っ越してきてよかった〜!




