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第1章-4話

 家の中へ戻りソファーにランを座らせる。少ししゃがんで目の高さを合わせて言い聞かせる。

「ラン、魔法が使えるところを無暗に見せてはいけないよ。誘拐されるかもしれないからね」

「うん?わかったの!」

 本当に分かったかは分からないけどまぁ責任は親だから。うん。つい保護者面しそうになるけど私もまだ九歳で親の庇護下にあるんだ。何かあってもわたしの責任ではない。でもまぁ、うちにいる間は何もないように気を付けよう。

 自室からブラシを取ってきてランの隣に座ってウィンドで少し乱れた髪を梳かす。

「ランも!」

「いいよ」

 膝の上に載ってきたランの白いふわふわの髪を堪能しながら丁寧に梳かす。ゴロゴロと喉を鳴らしている音が聞こえる。かわいい。ポンッと音がしてランが子猫になる。あれ、寝てる。魔法使って疲れたのかな。起こさないようにそっと撫でる。ああ、なにこれ幸せ。猫は村に居なかったから飼えなかったんだよね。猫がこんなにかわいいとは。いや、ランは獣人だから純粋な猫ではないけど。遅れて家に帰ってきた母に言う。

「お母さん、猫飼いたい」

「ランちゃんと喧嘩しちゃうわよ?それに猫は食べられるものが限定されるから大変よ?」

 それは可哀想かなどっちも。獣人であれば人間と同じ食べ物は食べられるから問題はないんだけどね。

「エルフは愛玩動物飼うのに向いてないわよ」

 母がぽつりと呟く声は聞こえたけどこの時はまだ真の意味で理解をできていなかった。未来のわたしは愛玩動物よりも長生きの獣人(ラン)との別れですら受け入れられなかったのだから。長命種族(エルフ)が人里から離れて暮らしている意味を半分も理解できていなかったのだ、この時のわたしは。

 母に渡された温かいお茶を飲む。ウィンドの効果が薄れたのか外からはざぁと水の落ちる音がする。しばらくは外に出ない方がいい。水が降ってきたせいか少し気温が下がった気がする。ランの上に手を載せる。火属性の魔法が得意だからか気付いた時には少しだけ体温を温かくすることが出来るようになっていた。起きている間は冷え性知らずで便利だ。ランを温めるようにゆっくり手を動かす。

「それでお母さん、魔術陣を金属で作るにしても何で作りますか?」

 鉄は魔力伝導率が低いが金属の中では安価な方だ。ガラスよりは伝導率マシかもしれないがあまり良くはない。銀や金、ミスリル等の金属は魔力伝導率が高いが値段と入手難易度が高い。というか汚水処理に使うにはもったいないし盗まれたら大変だ。

「そうねぇ、銀あたりで作りましょうか」

「盗まれたらどうするんですか」

 あら、と母は小首を傾げる。

「この家の敷地は結界張ってあるから悪意を持った第三者は入れないわよ?」

 いつのまに。

「だからランちゃんと親御さんは悪意がない事は分かっていたし家に招いたのよ。良い人そうだったし。レオちゃん猫派でしょう?仲良くなりたいかなぁって」

 初対面でいきなりご飯に誘うから何事かと思ったことの種明かしをされた。そっか、お友達にって言ってたのも社交辞令じゃなくてわたしの為か。なんかむずむずするね。

 母は家の奥に行くと銀色の棒を持って帰ってきた。

「銀で細工を作る時に使う材料なのだけれど、まぁ使っちゃいましょう」

 いいのかなそれは?まぁ母がいいって言ってるからいいか。

「お母さん、何か書くもの持ってきてもらっていい?」

 ランが膝の上に居て動けないから魔術陣の改良をしてみよう。さっき刻もうとしていたのは「浄化」の魔術陣だ。魔術陣を魔術式に展開して持ってきてもらった蝋板(ろうばん)に書きこむ。合間にランを撫でる。もふもふだ。最高。

 清浄(クリーン)修復(リカバリー)の魔法を組み込めればいいんだけど魔術と魔法は別系統だから魔術陣に魔法陣を組み込むのは難しい。魔法陣を刻めればいいんだけどそれはそれで物理的に刻むのは難しいとされている。本はいっぱい読んでいるけど九歳の知識ではやっぱり厳しい。魔法陣を刻んだ実戦経験もないしね。

 なお良いアイデアが出なくて唸ってる間にランを撫でていたらわたしも寝落ちした。だって暖かいんだもん。

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