第2話:ギルドでストレスが爆発した件
森でのバトルを終え、俺、佐藤健太は金髪エルフの少女リリアに連れられて、近くの町「ルミエール」にやってきた。木造と石造りが混ざった中世風の街並み、馬車や露店、鎧を着た冒険者たちが歩く光景は、まさに異世界って感じだ。
「ふぁ~、THE・ファンタジー!」
「ねえ、健太、ボーッとしてないで! ギルドはこっちだよ!」
リリアに引っ張られ、俺はでっかい木の扉の前に立つ。看板には剣と盾のマーク。どう見ても冒険者ギルドだ。
中に入ると、酒場みたいな雰囲気のホール。筋肉ムキムキの戦士やローブ姿の魔法使い、怪しげなフードのやつらがガヤガヤしてる。カウンターでは、でかいメガネをかけたお姉さんが書類を整理していた。
「リリア、戻ったの? …って、そこの彼は?」
お姉さんが俺をチラッと見て、興味津々の笑みを浮かべる。
「ミリア姐さん! こいつ、佐藤健太! 森で盗賊を一瞬でぶっ飛ばした新人だよ!」
「ほう、新人? でも、なんか…普通の顔ね」
「普通って言うな! 俺、転生したばっかなんだから!」
ついムキになって反論したら、ミリアとリリアがクスクス笑い出した。ストレスポイントがジワッと5上がって55/100。やべ、こんなんで溜まるのか。
「まあ、いいわ。冒険者登録するなら、ここの書類に名前と職業を書きなさい。で、どんなスキル持ってるの?」
ミリアがペンを渡してきた。ステータスを確認すると、職業は「ストレスウォリアー」、スキルは「ストレスバースト(Lv.1)」。正直に書くとバカにされそうなので、ちょっと盛ってみるか。
名前:佐藤健太
職業:ストレスマスター
スキル:超ストレス爆裂波
「どうだ、かっこいいだろ?」
書類を渡すと、ミリアが眉をひそめた。
「…ストレスマスター? 何それ、聞いたことないんだけど。超ストレス爆裂波って、めっちゃダサい名前ね」
「ダサい!? お前、それストレスポイント上がるぞ!」
言い返した瞬間、ストレスポイントが60/100に。マジで繊細なシステムだな、これ。
そのとき、ホールの隅からデカい男がドスドス近づいてきた。身長2メートル近い、ゴリマッチョな戦士。顔に傷、肩には巨大な斧。いかにも「俺TUEEE」な雰囲気プンプンだ。
「おい、新人。聞いたぜ、森で派手な技使ったってな? 俺様、バルドと一発勝負しねえ?」
「は? いきなり何!?」
「新人狩りだよ! ルミエールのギルドじゃ、強いやつは歓迎されるが、弱えやつは即退場だ!」
周りの冒険者たちが「オー!」と野次を飛ばし、ホールが一気に喧騒に包まれる。リリアが慌てて止めに入る。
「バルド、ちょっと! 健太はまだ登録したばっかなんだから!」
「黙れ、リリア! こいつが本物かどうか、俺が試してやる!」
ストレスポイントが70/100まで急上昇。こいつのマウント、めっちゃ前世の同僚っぽいぞ!
「よし、受けてやるよ! どこでやるんだ?」
「外の訓練場だ! ついてきな!」
バルドに連れられ、ギルドの裏にある広場へ。円形の闘技場みたいな場所で、すでに野次馬が集まってる。ミリアがため息をつきながら審判役を買って出た。
「ルールは簡単。相手を気絶させるか、降参させたら勝ち。死なない程度にね!」
「死なない程度って、怖えよ!」
バルドはニヤリと笑い、斧を構える。俺はステータスを確認。ストレスポイントは75/100。十分だ。
「いくぜ、バルド! 俺のストレス、味わえ!」
「ストレスバースト!!」
赤いオーラが炸裂し、バルドに突進。だが、バルドは斧を振り回し、オーラを弾き返した。
「ハッ、そんなもんか! 俺の『メガクラッシュ』でぶっ潰す!」
斧から黒い衝撃波が飛んできて、俺は咄嗟に避ける。地面がゴッソリ削れた。やべ、こいつガチ強い!
ストレスポイントが80/100。焦りとイライラがどんどん溜まる。
「くそっ、なんで転生初日からこんな目に!」
その瞬間、頭の中に例のテンション高い声が響いた。
『ピロリン! ストレスゲージ80%到達! 新技『ストレスオーバードライブ』解放!』
「マジ!? どんな技だ!?」
説明によると、ストレスゲージ80以上で発動可能。一時的に攻撃力とスピードが爆上がりするらしい。ただし、発動後はストレスポイントが激減するデメリット付き。
「よし、賭けてみるか! ストレスオーバードライブ!!」
瞬間、俺の体が赤い雷に包まれ、視界がスローモーションになった。バルドの斧の動きが丸見えだ。
「な、なんだそのスピード!?」
バルドが驚く中、俺は一気に距離を詰め、拳を叩き込む。
「ストレスバースト・フルチャージ!!」
ドゴオオン! 赤い衝撃波がバルドを直撃。でかい体が吹っ飛び、闘技場の壁に激突。気絶した。
「…勝者、佐藤健太!」
ミリアの宣言に、野次馬たちがどよめく。リリアが駆け寄ってきて、目をキラキラさせる。
「健太、めっちゃカッコよかった! あの技、なに!?」
「へへ、ストレス発散の極みだよ!」
調子に乗って笑ったけど、ステータスを見るとストレスポイントが10/100まで下がってる。オーバードライブの代償、デカすぎる…。なんか体がだるいぞ。
その夜、ギルドの酒場で冒険者登録完了の祝いと称して、リリアとミリアに奢らされた。
「健太、ストレスマスターってほんと何なの? 技の名前ダサいけど、めっちゃ強いじゃん!」
リリアの無邪気な質問に、ストレスポイントがジワッと15/100に。
「ダサいって言うな! でも、まあ…ストレスが力になるってのは、悪くないだろ?」
ミリアがニヤリと笑う。
「ふーん、ストレスね。じゃあ、明日からの依頼でたっぷりストレス溜めてもらうわよ。新人にはキツい仕事押し付けちゃおうかな?」
「マジ!? やめてくれ!」
ストレスポイントが20/100に。やべ、この世界、ストレス溜めるの簡単すぎる!
次の日、ミリアから渡された依頼書には「魔獣の森でゴブリン50匹討伐」と書かれていた。
「これ、新人向けじゃねえだろ!?」
こうして、俺のストレスフルな冒険者生活が本格スタートした。次は何が待ってる? まあ、ストレスなら無限に溜まるさ!
(続く)