波濤の土地に立つ
極力史実に沿った創作歴史小説です。
はしめて執筆いたしますので、温かく見守っていただけると幸いです。
-----永禄3年 宗調尚-----
元服の儀式が終わった夜、1人夜空を見上げていた。
さして立派でもない、ましてや後世にイメージされるような天守閣もない
おそらくまだ城とも呼べない館の一室からである。
永禄3年、西暦1560年。
13歳になり調尚と名乗り始めた自分の10年を振り返り、感慨にふけらずにはいられない。
「もう10年、いやまだ10年だな」
夜空を見上げながら、ひとり記憶を辿る。
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天文19年、1550年。この時代に目覚めた日。
状況を把握する前に頭の中に残っていたのは、ある1人の青年の記憶である。
とある離島で生まれ、野山を駆け回りながら過ごし
キラキラとしたイメージに憧れて上京し、サラリーマンとして働き出した。
新卒入社した広告代理店では昼夜問わず働らかされたが、やりがいも感じていた。
幼い頃から歴史が好きで、某局の年間を通じたドラマは毎週テレビにかじりついて見ていたし
某シミュレーションゲームでは、自分の名前でキャラクターを作成し
もしも自分が戦国時代に生きていたらどのように天下を獲るのか、そんな空想をしたのは1度や2度ではない。
「だからといっても、いざこうなるとそれは驚くわ」
目覚めた時、俺は3歳の幼児としてこの時代に来ていたのである。
女性の必死な声で目を覚ましたが。、どうやら3日間も高熱にうなされていたらしい。
救いだったのはある程度歴史の知識があったので、話を聞けば目の前の女性が乳母であると理解が出来たこと。それと年号と地名で大体の時代が予測できたことだ
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「とはいってもなあ...」
問題はどこで、誰として生を受けたかである。
それによっては遊んで暮らせるボーナスステージも期待が出来るのだ。
淡い期待を抱きながら
確認をしてすぐに聞き覚えがある地名と元号を聞いて肩を落とした。
生を受けたのは転生前の出生地でもある対馬。
そして年齢などを鑑みるに、どうやらこの時代の俺は「宗茂尚」であるらしい。
ご存知だろうか...?
知らなくても無理はない。
むしろ知っている人間には賞賛を贈りたい。
対馬の宗氏なんて歴史の教科書ですら出てくるのは「朝鮮通信使」の一瞬である。
さらに年齢から推測すると、歴史に名をのこす弟の義智ではなく
史実では23歳で死亡する、病弱気質のお兄ちゃんだ。
その短い生涯と家督相続期間の中で、家臣に宛てた書状や発給文書を
75通も送っていることから気遣いの出来る当主だったのかもしれないが...
何とも地味なことこの上ない...。
ましてや史実を知る者からすれば
仮に運よく寿命を伸ばせて生き延びたとしても
戦国期以降も対馬、厳密に言うと豊臣秀吉が全国を統一後の
1500年代後半から1600年代にかけて権力者に振り回されることは目に見えている。
「覚悟を決めるしかないか...」
10年前の俺は、ひとり現代知識を使って生き抜く覚悟を固めた。
なるべく楽しんで読んでいただけるよう努力いたします。
アドバイスなどどんどんいただけると嬉しいです!