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3.特殊なダンジョンの探索。







 ――俺たちが足を踏み入れたのは、先日のドラゴンのいたダンジョン。

 タクト曰く、ここはダンジョン配信界隈でいま話題の場所だ、ということだった。それについては自分も何となくだが、情報として頭に入れている。

 きっと俺の動画が拡散されたのも、ここがたまたま注目されていたから。

 課長は人の粗を探すのが好きな方なので、偶然に見つかってしまった。



「小野――ハジメさんって、本職は何されてるんですか?」

「あー……そういう個人情報は、ちょっと勘弁……」



 なので、これ以上は傷口を広げたくない。

 全世界に生配信という都合上、念のために偽名を使用することにした。何気ない世間話にも注意を払いつつ、タクトの頭に装着したカメラに映り込まないよう、斜め後ろを歩く。

 手に持ったスマホで配信画面を確認すると、コメント欄は微妙な空気になっていた。



『ゲストさん、少し感じ悪くない?』

『もっと色々と教えてよ』

『ていうか、タクトがコラボって珍しいよね』



 各々に好きなことを書き込んでいるが、大まかにはそんな感じ。

 俺という異物に対する違和感を拭い切れない者もいるらしく、いわゆる『荒れ気味』という状況だった。しかし、そこはさすが配信者というところか。

 タクトは軽く笑い飛ばすと、自分のことを話し始めた。



「あはは、すみません! そうですよね、ボクも配慮が足りませんでした。こっちはもう三年やってて、意外と有名なんですよ!」

「そうなんですか」

「えぇ、大学を卒業してからすぐに」

「ということは、いま二十五歳……?」



 パッと見た感じ、自分と差がないように思えるタクト。

 だが、想定よりも彼は年上のようだった。



「本当は一般企業に就職しようと思ったんですけどね。あの【ガチャ】で『配信者になるしかない』ってなっちゃって――」

「配信者に、なるしかない……?」



 それを聞いて、俺は思わず首を傾げる。

 気にするようなものではない、という感じもしたが、何かが引っかかった。

 そもそもとして、タクトは大学まで出ている。それはつまり、普通の社会人として企業勤めをするため、というルートに他ならなかった。

 彼の経歴は、どこかチグハグ。

 些細なズレのように思うが、いったい何だろうか。



「あの、タクト――」

「あ……静かに! 目的の魔物が出てきましたよ!」



 それを訊こうとしたところで、タクトに制されてしまった。

 仕方なしに彼に倣って、岩場の陰に身を隠す。


 すると、そこにいたのは骸骨の魔物のようであった。

 俗にアンデット族、と呼ばれるやつか。



「……でも、アンデットにしては大きくないか?」

「気づきましたか。実はアレ、最近になって発見された新種なんです」

「新種……?」



 俺はタクトの説明を聞いてから、その魔物をしっかり観察した。

 そうして気付くのは、大きさ以上に目立つ鎌のような指先。アレは先日、ドラゴンを倒した時に片付けたデイモンの特徴と一致していた。

 ということは、つまり――。



「もしかして、デイモンのアンデット?」

「ご明察です!」



 俺の回答に、青年はどこか満足げにそう言うのだった。

 なるほど。このダンジョンが他と比較して注目を集める理由、というのが分かってきた。どうやらここは、他に見ることのできない魔物が出現するらしい。

 それを理解して、内心で大きく頷く俺。



「それじゃあ、ボクから行きますね! ハジメさんは、撮影お願いします!!」

「え、あ……おっと!?」



 そう言うと、タクトは腰に仕舞っていたもう一つの小型カメラを渡してくる。

 どうやら彼の裁量で切り替え可能になっているらしく、配信画面では二種類の角度から臨場感たっぷりに見ることができた。どうやら、俺の役割は後方からの定点映像、らしい。

 だったらギャラのためにも、しっかり働かなければ……!



「よし、準備できたぞ!」

「オーケー! それじゃあ――」



 タクトはそこで、荷物から一本のバットを取り出して言った。




「いっちょ、頑張りましょうか!!」――と。




 


個人情報は、ネットで軽く口にしたら駄目ですよ!




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