プロローグ 人生決定ガチャで、出たので。
新作です(*'▽')
「それじゃ、小野町一郎くん。いまから【人生決定ガチャ】を始めるよ」
「……はーい」
――高校三年の夏。
担任教師に言われて、俺は気怠く答えた。なんでも成人となる十八歳になると、今後の人生を大きく左右するものが分かるガチャが引ける、とのこと。虚構と現実の境界線が曖昧な現代らしい、といえば不思議なことではないだろう。
そんなわけで、俺は言われた通りに水晶玉に手を差し伸べた。
すると、
「なるほど。キミの人生で重要なものは、デッキブラシらしいね!」
「デッキブラシ? デッキブラシ、ってあの……?」
「そうだね。アレだね」
「ふーん……」
思いの外、くだらないものが飛び出す。
デッキブラシといえば、深く考えるまでもなく掃除用具だ。それが人生を大きく左右するというのなら、卒業後の進路はとかく分かりやすい。
最近ではダンジョン配信の後始末需要が高いので、清掃業も金払いが良いらしい。
だったら、案外悪くないのかもしれないな。
「分かりました。それじゃ、俺は――」
そう思ったので、俺は素直に担任に告げたのだった。
◆
「えー、キミが新入社員の小野町一郎くん、ね?」
「はい。よろしくお願いします!」
「うむ、良い返事だ」
そうして、俺は卒業後に一般的な清掃業者に就職した。
研修を終えて配属された部署の所長は、にこやかに頷いて俺のことを他の社員に紹介する。そして、いくつかの社内規則を簡単に説明してから、さっそく仕事を割り振られた。
どうやら昨今の配信業が活性化していることで、人手はやや不足気味らしい。
「……えっと、スライムの後処理、か」
俺は資料を確認してから、デッキブラシを片手にダンジョンへ。
目的地に到達すると、そこにはダンジョン配信者に倒されたらしいスライムの残骸が飛び散っていた。中にはまだ動く奴もいて、こういったものを掃除するのが俺たちの仕事。
やるなら最後までやってほしい、というのが本音だが……。
「それが義務化されると、こっちの仕事がなくなるからな……」
悲しいかな、大人の事情というものらしい。
それについてボンヤリ考えながら、俺はデッキブラシで適当にスライムを処理していった。なんてことのない、取り立てて苦労もない平穏な人生の一ページ。
俺はあまり目立ちたい方ではないので、これで良いと思う。
そんなこんなで、スライムの処理も完了した。
俺はスマホで現場の証明写真を撮影し、その場を後にする。
「人生は平凡で平和に限るよ」
それこそが、俺の信条。
だから、そんな生涯がずっと続くと思っていた。
そう、あの日までは――。
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