押しに弱い神殺し
更に先へ、進むのですか?
あなた様は、お優しいですね
~ あ れ か ら 五 ヶ 月 後 ~
この日は、深夜から見回りに出掛け早朝に家に続く一本道に戻ると眉間に皺を寄せた千夏さんが立っていた
千夏さん?、こんな朝早くに如何為さったのでしょうか?。
「千夏さん、御早う御座います」
「……御早う。鬼火さん」
「千夏さん?」
「君は、なぜ私が此処に居るか解るかい?」
なぜか解るかと問う千夏さんの顔に青筋がたち酷く怒っているのが見て取れる
な、なぜだか解りませんが凄くお怒りです……
「すみません、解りかねます」
「私の眷属達が鬼火さんがまた丑三つ時に至る所を歩き回って居ると大急ぎで伝えてくれたよ」
鹿殿や猪殿が慌てている姿。大変失礼でしょうが微笑ましいですね等と現実逃避するかの如く頭に浮かんだ
「私は、君に夜遅くに出歩くのは、危険だから辞めなさいと幾度と無く言ったはずだよ」
「心配されて居る程か弱くは、無いですので大丈夫ですよ」
貧弱そうに見えるやも知れませんが此でも一狩人なのですよ……
「前にも言ったけれど君は、確かに腕が立つかもしれないけれど一人の娘なんだ。万が一があっては、ならないんだよ」
「ですが夜間の見回りも私の仕事の一部なのです」
「なら私を呼びなさい」
「お手を煩わせる事は、出来ません」
「君の頼み事を煩わしいと思った事ないよ」
しばらくの間、こうであれだから一人でも大丈夫、大丈夫じゃないから呼びなさいと言う押し問答が続き私が何か言う度に空気が冷え他諸々と合わさりとうとう耐えきれず私の方が折れてしまった
ま、廻りの空気が戦場の如く張り積めた様に冷たくなりましたね……
「解りました、貴方様をお呼び致します」
「うん、そうしておくれ」
私は、結局押しきられ了承しその後送って行くと言われ断るも此方も押しきられてしまった
まぁ、この方とお話しする時間が増えるので良いのですが
「少々、押しに弱すぎるんじゃないかな?」
「そんな事は、ないかと。例えそうだとしても貴方様にだけですよ」
「それは、どういう意味だい?」
「貴方様とのお話しは、楽しいですから少しでも長く一緒に居れるのならばとつい押し負けてしまうのですよ」
「それは……、随分な殺し文句だね…… 」
「どういう事でしょう?」
手で口元を隠し耳を赤く染めてそっぽを向いてしまったが殺し文句とやらの意味が解らず私は、首をかしげるしか出来ない
ころしもんく……?
……ハッ(0Δ0;)!!
知らぬ間に私は、脅しを……!?
ですがいったい先程の会話のどこの部分でしょうか………?。 ダメです、解りません……
「無自覚なのか……」
「私は、何か失礼を……?」
「いや、違うよ。大丈夫だよ」
~ 十 分 後 ~
この後、楽しくお喋りをしながら家前まで送って貰い有り難う御座いましたと礼を言おうと千夏さんの方を見ると白い何かを拾い上げている最中だった
何でしょう?
「ほおずき……、ちよ?」
「えっ?。はい、鬼灯千誉です」
「すまない。手紙を盗み見るつもり無かったんだけれど目に入ってしまって」
「いえ、拾って頂き有り難う御座います」
突然、本名を呼ばれ驚いたが何故、名を?と疑問の方が先に浮かび千夏さんの手元を見る
どうやら私宛に届いた妹様方からの手紙が一通、郵便受けから抜け落ちていたのを拾ってくれたようだ
郵便受け、一杯になったのでしょうか?
確りと毎日、受け取って居るのですがねぇ……
「あの、もし良かったら千誉と呼んでも良いかい?」
「ん?。あぁ、お好きなようにお呼び下さい」
「……私が言うのも何だけれど、隠されてしまわないようにね」
「?」
このような物に時間を裂いて下さるとは、
嬉しい限りです