ワールドカップ優勝国についての一考察
面白い話です。是非読んでください。
もし、私がここに記す予想が、全て的中したならば、どうかこれを読んでいる方々、とあるサイトの片隅でひっそりと偉業がなされていたことをぼんやりと思い出して頂きたい。
この偉業がなされたかどうかが判明するまでには8年という歳月を要するのだから。
私が今回実施するのは、2022年、2026年、2030年に行われるワールドカップの優勝国の予想である。ワールドカップというのはもちろんサッカーのワールドカップのことを指す。
ワールドカップは、4年ごとに開催される。4という数字は、積み上げられると何かと重なりやすいらしく、優勝周期に関するジンクスがいくつか存在する。
ワールドカップの決勝は、ジンクスとの戦いと言っても過言ではない。
まずは歴代の開催年、開催地、優勝国を列挙する。()の数字は優勝回数
1930年、ウルグアイ大会、ウルグアイ(1)
1934年、フランス大会、イタリア(1)
1938年、イタリア大会、イタリア(2)
第二次世界大戦のため一次中断
1950年、ブラジル大会、ウルグアイ(2)
1954年、スイス大会、西ドイツ(1)
1958年、スウェーデン大会、ブラジル(1)
1962年、チリ大会、ブラジル(2)
1966年、イングランド大会、イングランド(1)
1970年、メキシコ大会、ブラジル(3)
1974年、西ドイツ大会、西ドイツ(2)
1978年、アルゼンチン大会、アルゼンチン(1)
1982年、スペイン大会、イタリア(3)
1986年、メキシコ大会、アルゼンチン(2)
1990年、イタリア大会、西ドイツ(3)
1994年、アメリカ大会、ブラジル(4)
1998年、フランス大会、フランス(1)
2002年、日韓共催大会、ブラジル(5)
2006年、ドイツ大会、イタリア(4)
2010年、南アフリカ大会、スペイン(1)
2014年、ブラジル大会、ドイツ(4)
2018年、ロシア大会、フランス(2)
有名なジンクスを2つ程紹介する。
1つ目は、【4回目優勝24年周期の法則】
2022年2月現在でワールドカップを4回以上勝った国が3ヵ国存在するが、その3回目から4回目を勝つのに要した時間が、どの国も例外なく24年。4回目優勝が早い順から列挙する。
ブラジル、1970~1994
イタリア、1982~2006
ドイツ、1990~2014
尚、ドイツについては西ドイツ時代を含む。
特にドイツの2014年の優勝は、【4回目優勝24年】のジンクスが、【アメリカ大陸開催時の欧州勢優勝無し】の鉄板ジンクスを打ち破って成し遂げたものである。
2つ目は、【3964の法則】
2回以上ワールドカップを勝った国の優勝年を足すと【3964】になるというもの。
ブラジル
1962+2002=3964
1970+1994=3964
ドイツ
1974+1990=3964
アルゼンチン
1978+1986=3964
2002年、日韓共催大会の決勝前のロッカールームで、ブラジル選手がこのジンクスを取り上げ、チームの士気を上げて見事優勝した逸話は有名である。
サッカーは、数あるスポーツの中でも番狂わせが起きにくい。百年近い歴史があるワールドカップだが、優勝経験国はたったの8ヵ国である。限られた国が優勝を持ち回るので、不思議な数字の法則が生まれるのだろう。
さて、ワールドカップの不思議を少し分かってもらったところで、私の法則を話そう。
私が着目したのは、【ワールドカップ2回目の優勝周期】である。2回目優勝の早い順から列挙する。
イタリア
1934、1938(連覇)
ウルグアイ
1930、1950(20年周期)
ブラジル
1958、1962(連覇)
ドイツ(西ドイツ)
1954、1974(20年周期)
アルゼンチン
1978、1986(間1回抜けの変則連覇)
フランス
1998、2018(20年周期)
優勝周期の並びを見て欲しい。変則連覇の例外はあるが、連覇組と20年周期組に分かれ、それが交互に達成されている。アルゼンチンの変則連覇については、後にもう一度触れる。
交互に達成されているのならば、2018年にフランスが20年周期で2回目の優勝をしたので、次に2回目の優勝する国は【連覇】にならなければならない。しかもそれは悠長に待ってはいられない。
なぜなら、2010年南アフリカ大会でスペインが初優勝して、2014年ブラジル大会で連覇を逃しているからである。連覇を逃した以上、私の法則に従うと20年周期組に回るしかない。スペインは2030年ワールドカップ百周年大会で2度目の優勝をすることになる。
スペインが2回目の優勝を逃す可能性は無いのか。私はその可能性は低いと見積っている。優勝国の内、初優勝から20年以上優勝できなかったのは、たったの1ヵ国だ。確率にして約14%、逆に言うとスペインの2030年大会の優勝確率は86%、約9割にもなる。この数字で優勝を悲観視することはできない。なお、その優勝できなかった不幸な1ヵ国については、後に触れたい。
もう一度この法則を整理する。ワールドカップ2回目の優勝周期は、20年周期か連覇で交互に達成される。過去に優勝した8ヵ国の内この法則が適用されなかったのは2ヵ国。優勝できた国と、できなかった国が1つずつ存在する。
スペインが2030年大会を20年周期で優勝するとすれば、その間の2022年カタール大会と、2026年北中米共催大会の優勝国は、【連覇】になる。
では、ワールドカップを連覇する可能性がある国を探してみよう。
まず、どの地域から出るだろうか。率直に言って、北中米、アジア、オセアニアはない。番狂わせの少ないサッカーの特性上、優勝も若しくはそれに準ずる実績がないのは致命的だ。日本に優勝して欲しいのはやまやまだが、まだそれは予想というより、七夕の短冊の段階だ。
アフリカも消しだ。90年代の素晴らしい活躍により、可能性を感じさせてくれたアフリカ勢だが、残念ながら2018年のロシア大会で優勝したフランスは、我々に一つの例を示してしまった。
アフリカの願いは、欧州に吸収されて成就するものであると。
南米はどうか。かつて欧州開催以外では無類の強さを誇った南米勢だが、2002年の日韓共催大会のブラジル以来優勝がない。それでも欧州開催以外では2回(2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会)しか負けていないので推してあげたいのだが、ブラジル、ウルグアイ、アルゼンチン以外で可能性を感じさせる国が見当たらない。候補としてはコロンビア、チリ、パラグアイ辺りが該当するのだろうが、これらのチームが4強に入った記憶すらない。優勝経験国を除いてしまった南米から優勝候補を選ぶのは、現実的ではない。
やはり、連覇は欧州勢から出ると考えた方が妥当だ。今サッカーの中心が欧州にあるのは、誰の目にも明らかだ。人気、実力、資金力、どれをとっても他の追随を許さない。
2022年2月現在、2022年カタール大会で初優勝の可能性を感じるチームが3ヵ国ある。
ベルギー
2022年2月現在世界ランキング1位で、2018年ロシア大会4強。
クロアチア
2018年ロシア大会準優勝、1998年フランス大会3位。
オランダ
準優勝3回(1974、1978、2010)
ここ数年の成績でいうと、ベルギー、クロアチアに分がある。しかし両国代表チームの主力はベテランであり、2026年までこの力を維持できる可能性は低いだろう。
戦力補強が比較的容易なクラブチームですら世代交代に苦労することがあるのだから、代表チームの世代交代の難しさは想像に難くない。それが世界屈指の強国のそれだったら、なおさらだ。
【2回目の優勝周期、連覇か20年周期の法則】、【4回目優勝24年周期の法則】は、世代交代という、どの代表チームにも付きまとう厄介な命題の時間的尺度を示しているのではないだろうか。
もう一度勝ちたかったら、その勢いで連覇するか、20年かけてチームを作り直してから勝つしかないと。
ともかく、最後に残ったのは【オランダ】
優勝こそ未経験だが、その実績は優勝国と比べても全く引けをとらない。準優勝3度はドイツ、アルゼンチンと並んで最多である。逆に優勝がないのが不思議な程の強国である。ワールドカップを勝つ【格】は十分持っている。
最近の成績は良くないが、主力には世界レベルの選手が揃っていて、しかも若手が多い。勢いに乗れればそのまま突っ走る可能性は十分ある。
ワールドカップの優勝予想
2022年カタール大会、オランダ
2026年北中米共催大会、オランダ
2030年南米大会(予想)、スペイン
ここまで読んで頂いた方々は、恐らくサッカーが好きな方だろう。今ここに示したのは、私なりの視点からワールドカップを切り取って分析したものである。賛同する方もいれば、反対する方もいるだろう。それは、それぞれの方が、それぞれの視点を持っているからで、それもまたサッカーの面白さの一つなのだろう。
私の視点を知ったことで、サッカーを見る楽しみが少しでも増えたなら幸いである。
と、話はここで終われない。【2回目の優勝周期、連覇か20年周期の法則】から外れてしまった国の話をしたい。
1986年メキシコ大会、実は初優勝から20年周期に入っていた国があった。
それは、1966年イングランド大会で優勝したイングランドである。
しかし、イングランドはこの大会で優勝することはなかった。イングランドを敗退に追い込んだのは、この大会を優勝することになるアルゼンチンである。
決勝トーナメント準々決勝での対戦は、異常な緊迫感の中で行われた。
なぜなら、この両国は4年前武力衝突を起こしていたからだ。特に敗戦側のアルゼンチンは絶対に負けられない一戦だったのだ。
この一戦にイングランドは敗戦した。後に【神の子】と呼ばれた選手によるサッカー史上最も有名な【神の手】、【5人抜き】2つのゴールによって。
2回目の優勝周期、連覇か20年周期の法則によればイングランドはこの年優勝すべきであったが、その理を【神の子】が強引にねじ曲げて変則連覇を成し遂げたという解釈は、行き過ぎだろうか。
私はそうは思わない。その証拠にこの一戦に敗れ20年周期から弾き出されたイングランドは、50年以上優勝から見放され、ワールドカップをさまよい続けている。
あの2つのゴールを見れば誰もが納得する筈だ。
あれはサッカーの歴史を変えたゴールであると。
間違いなく。
私はこのイングランドの不幸を【神の子の呪い】と密かに呼んでいる。
この呪いを解く術はあるのだろうか。
やられたことをやり返す。
ワールドカップの決勝トーナメントで、あの2つのゴール以上のゴールを決めてアルゼンチンを敗退に追い込む。が、これは事実上不可能であると思う。あの一戦の背景、あの2ゴールの重要性、芸術性、衝撃力等を超えたゴールはもう二度と生み出せないだろう。
呪いの期限が切れる。
神の子がかけた呪いなら、神の子が神の子でなくなった時呪いは解けるのではないだろうか。2020年11月25日に神の子は、本当の神になった。2018年ロシア大会では28年ぶりに4強入りしたりと、イングランドに優勝の気配が漂い出してきている。
神の子に呪われたイングランドに、果たしてサッカーの神は微笑んでくれるのだろうか。私はあると思う。何せイングランドはサッカーの母国で唯一無二の存在なのだ。いつの日かワールドカップを掲げ、新たなジンクスを作ってくれるに違いない。
できれば、私の生きているうちに……。了
読んで頂きありがとうございます。