Day 2 屋上
扉の向こうは、どこか見知らぬの屋上の景色が広がっていた。
空は手が届きそうなほど近く、僕と空のわずかな隙間を雲が流れている。
広大でそして殺風景な屋上だ。
奥のフェンスへと近づいて、眼下に広がる景色を見やる。
大地には一面を覆うように稲畑が広がっており、その合間にぽつぽつと民家が建っている。
しかし妙な感じだ。稲畑には煌々と稲が生命の輝きを放っているが、方や建つ民家からは人の気はせず、渇き切っているように見える。ジオラマのような光景だ。
その中心に位置するであろう僕がいるこの場所は、田舎に一件ある大きな病院のようである。
いや、ひょっとすると小学校なのだろうか?校庭のようなものも見える。
それともう一つ、庭の中央にそびえ立つ古びた時計塔がある。
文字盤を覆う硝子には日々が入り、時は3時になる頃を示したまま止まっている。
僕はその時計からついと目をそらしてしまう。時を止めたままの時計ににらまれているような居心地の悪さを感じたからである。
そのまま後ずさり、屋上の真ん中に腰を下ろして座り、そのまま寝そべった。
手が届きそうに見えた空の遥か彼方で、鳶がひゅるると鳴いている。
どこまでも広い空間に一人。フェンスの先には無限の空間が広がっている。
しかし僕の心はまったくの対極にあって、とてつもなく狭い世界に閉じ込められてしまった。
そんな気がしてならない。
瞳を閉じて虚空と静寂に身をゆだねていると、ふと鈴の音が短く鳴り響いた気がして慌てて上体を起こしてあたりを見渡す。
殺風景な屋上は相も変わらない。息をついた次の瞬間、パラパラと何かが降り注いでくるのが見えた。
空から降ってきたそれをひとつまみ。親指と人差し指の先に隠れてしまうほど小さなそれは、何かの種のようであった。
それが何の種であったかはすぐに明らかとなる。
屋上の床のひびの隙間からものすごい勢いで蔦が伸びてきたのだ。
蔦は屋上の床を覆うように広がっていき、その中央から大きなかぼちゃが頭を出したのだ。
僕は突然の不思議な出来事にあわてふためく。そんな僕をよそに、かぼちゃはどんどんどんと大きく膨れ上がっていく。
とうとう表皮が屋上のフェンスに触れるほどパンパンに膨れ上がると、かぼちゃは大きな音とともにはじけた。
目の前が真っ白になり、僕はふわふわと、下に向かって落ちていった。