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プレイヤーと共闘



〈HPが0になりました。リスポーン地点へ転送します〉


 はい。調子に乗りました。リスポン地点からやり直しです。

 あの後落石を担いでは投げ、担いでは投げ。を繰り返してスケルトンや犬を狩り続けていたが、あの落石が壊れていなかったのはマスクデータである耐久値が関係していたようで、15回ほど投げたら罅割れて粉々になってしまった。


 しかも壊れたタイミングが戦闘音を聞きつけて敵が群がっていた時だったから、その後はまさに地獄。よほど同族狩りの鬱憤が溜まっていたのか、いつにも増してスケルトンの攻撃が激しくなり、そして犬も実に嫌らしいタイミングで襲い掛かってくるようになり、そのまま大剣に持ち替えて戦っていたら後ろから転がってきた直径数mの大岩に轢き殺された。


 なんとも濃い死に方をしたが、まぁ経験値はかなり溜まってウハウハ状態なのでよしとしよう。今のステータスはこんな感じ。


===============================


PN アレクサンダー Lv.11


【ステータス】

体力    21(実数値210)

持久力   21(実数値210)

筋力    44

敏捷    21

技量    21

理力    21

信仰    10


【余剰ステータスポイント】

0


【スキル】

【筋力強化Ⅰ】【夜目Ⅰ】【投擲Ⅰ】


【余剰スキルポイント】

9


【装備一覧】

【武器】灰被りの大剣

【頭】古びた骨

【胴】朽ちた教会兵の胴鎧

【腕】朽ちた教会兵の籠手

【腰】朽ちた教会兵の腰鎧

【脚】朽ちた教会兵の足鎧


==============================


【投擲Ⅰ】

・物を投げる際のモーションに補正が入る。



 あの落石投げが取得条件になったのか、【投擲Ⅰ】スキルが開放された。それに伴ってアイテム欄にショートカット設定ができ、設定したアイテムをすぐに取り出せるようになった。

 しかし投げナイフといった投擲武器や回復アイテムの持ち合わせはないため、今はその辺に落ちていた石をセットしてある。火力は出せないが、タゲ取りぐらいには使えそうだった。


「おんやぁ? これはこれは、掲示板を賑わせた噂の人ではないですか」


 共有エリアを歩いていると、不意に声を掛けられた。そちらを見ると、統一感のない装備にダークブルーの髪を逆立たせた長身のプレイヤーの姿があった。その手にはこちらと同じ大剣が握られている。


「スクアーロと言います。以後お見知りおきを」

(わたし)はアレクサンダーと言う。見ての通り、大剣プレイヤーだ」

「おっと、RP勢でしたか。……えぇ、えぇ。知っていますとも。アナタが筋力特化ビルドをしている愉快な方だとも」

「ほぅ、そこまで知られているのか」

「先程の投石の様子は、傍から見ていても面白かったですからねェ」


 クツクツと笑う様は、掴みどころがない。常に薄く笑っているからか、飄々とした印象が拭えないプレイヤーだった。


「奇抜な行動をすれば、注目されるのはどこのゲームでも同じですよ。それが序盤なら尚のこと」

「我以外の誰かが我の行動を面白いと思うならそれも結構。……だからと言って縮こまった動きをする気は微塵もないが」

「それで十分でしょう。折角のゲームなんです。やりたいようにやるのが一番ですよ」


 見かけは飄々と。だけど芯にはゲーマーとしての固持があった。しかしまぁ、そうでなければこのゲームはやりはしないだろう。自分の死を含めてとことんゲームを楽しめる人間がこのゲームには集まっているんだから。


「……ふむ。ここで会ったのも何かの縁。パーティーでも組むか?」

「おや、意外な申し出ですね。ですがありがたく受けましょう。アナタといると退屈しなさそうだ」


〈“スクアーロ”がパーティーに参加しました〉


 スクアーロのHPバーが自身のHPバーの下に追加される。ここら辺はディスプレイ版の前作と同じ形式のようだ。


「貴公、連携はどうする? お互いに得物は大剣。ある程度決めておかなければフレンドリーファイアで無様に死ぬだけだが」

「守りに入らず、交互に攻撃していけばいいでしょう。守りは手薄になりますが、元より大剣の本分はダメージを稼ぐことです。相手に攻撃させる隙を与えなければゴリ押しできますよ」

「ではそれでいこうか」


 互いに軽く打ち合わせをしていざ実戦。

 一本道を下っていけば丁度スケルトンが3体見える。が、そのすぐ奥に別のスケルトンも見える。スクアーロもそれを確認して、眉間に皴を寄せた。


「厄介な位置に湧いてますねェ。スケルトンは基本スリーマンセルで行動しますが、あの位置なら6体纏めてこちらに来ますよ」

「何、そう悲観することもない。面倒なら手前の3体を釣り出せばいいだけのこと」


 そのための【投擲Ⅰ】スキルだ。

 ショートカットから小石を取り出し、感触を確かめるように2・3回掌で跳ねさせる。そのまま投げるモーションに入ると、システムアシストによりフォームが修正され綺麗な弾道を描いて小石が宙を舞った。

 なるほど、モーションへの補正とはこういうことか。最初は違和感を覚えるが、慣れれば快適に使えそうだ。

 コツン、と静かな音と共にスケルトンのタゲがこちらに移った。


「おや、いいコントロールしてますねェ。ちょうど手前の3体が釣れましたよ」

「投擲スキルのアシストありだがな。初回にしては悪くない」

「ほほぅ? 投擲スキル、もう取得できたのですか?」


 おっと、敵だけでなく味方の興味も引いてしまったか。


「取得自体はそう難しくはない。街に到着するまでには覚えられるはずだ」

「後で教えて頂いても?」

「パーティーメンバーの誼だ。それぐらい構わん」

「気前のいい方は好きですよ、私。なら対価に見合うだけの働きはしませんと、ねェ!」


 踏み込みと共にスクアーロが大剣を担いだままに接敵し、その後ろを追随する。大剣はそれなりに重量があるが、そこは物理エンジン搭載のゲーム。それなりの重さを持って坂道を下るだけでもかなりスピードは出る。気を付けるべきは姿勢の維持。重心をブレさせるとすぐに転ぶので要注意だ。


「私が隙を作りますから、(とど)めをお願いしますよ」

「心得た」


 初めて遭遇した他プレイヤーだ。お手並み拝見といこう。


「それでは―――ふんッ」


 初手はスピードを乗せた唐竹割り。スケルトンの剣とスクアーロの大剣から鈍い金属音がする。剣戟というよりも、質量にものを言わせた鈍器が奏でる音だ。

 だが、スクアーロはそこで止まらない。右手を順手から逆手に持ち替え、交差した剣先を支点に自身をスケルトンの後ろに滑り込ませる。そこは3体のちょうど真ん中。それでいて大剣にとってのベストレンジ。


 グルンッ、と。大剣の剣先が円を描く。柔軟な歩法の後に繰り出される薙ぎ払い。それにより残りの2体のスケルトンを含め、3体に均等にダメージとノックバックが発生し、決定的な隙が生まれる。


「後は、お任せしますよ」


 お膳立ては完璧。後は楽しく料理する(経験値に変える)だけである。


(オォ)ッ!」


 唸る剛剣。フルスイングによって生まれた質量の暴力がスケルトンの残り体力を食い尽くす。


 連結。


 振り抜いた勢いのままに、次のモーションへ。ポリゴン化したスケルトンとスクアーロの横を抜け、下からの切り上げで2体を纏めて斬り上げる。火力ガン積みに遮るものはなし。2体のスケルトンは斜面を滑落する前にポリゴンへと姿を変えた。


「いやはや恐ろしい火力。流石は筋力特化ビルドですねェ」

「それを言うなら、貴公も随分と柔らかい動きをする」

「私は技量にもステータスを振ってますからね。明記されている訳ではありませんが、技量のステータスが高いとクリティカル判定だけでなく行動にもアシストが入るみたいですよ」

「ほぉ? ディスプレイ版とは仕様が随分と違うな。……ん? 大剣に技量……さては貴公、あれを取得するつもりか?」

「おっと、それだけでわかりますか。アナタも随分とコアなゲーマーですねェ」


 お互いにクツクツと笑い合う。皆まで言うまい。【DEADEND】シリーズには千差万別の武器たちが存在しているし、シリーズを通してやっていれば琴線に触れる武器はいくつも見つかる。それはプレイヤーの数だけ存在し、どれも甲乙つけがたい良さがある。そこに優劣を付けようものなら、それこそ収拾の付けられない事態に発展する恐れもある。

 だから他人の嗜好は『貶さない・踏み込まない』。それがマナーだ。


「おや、残りのスケルトン達もこちらに気付きましたね」

「やることは変わらん。HPを全損させるだけだ」


 合図と共に、スケルトン達に走り出す。

 即席パーティーながら、こうして息の合うプレイヤーと会えたのは幸運だった。





【最初の街】DERO攻略スレ3【遠くない?】

1.名無しの使徒

ここはDERO攻略スレです。

同社製の他作品スレはこちら。

前スレ:http://**********


>>980 次スレ頼む



908名無しの使徒

街に到達したプレイヤーもチラホラ出てきたか?


909名無しの使徒

みたいだな。


910名無しの使徒

まだそこまで行けないんだが……?


911名無しの使徒

>910安心しろ。俺もだ


912名無しの使徒

これ、ソロでいければ確かにすごいけど

パーティーで連携した方が絶対効率いいよな


913名無しの使徒

だけどプレイスタイルが合わないプレイヤーも確かにいるわけで……


914名無しの使徒

大盾持ち二人のパーティーなら見たことあるぞ


915名無しの使徒

>914それ、ダメージ与えられんの?


916名無しの使徒

>915少し前のスレで言われてた山賊プレイヤーの弾き出しをやってた

二人とも大盾を構えてGO! してた


917名無しの使徒

>916 GO!じゃねぇんだよ笑


918名無しの使徒

Set ――Hat Hatッ!!


919名無しの使徒

>918いやそれアメフト


920名無しの使徒

ダメージは稼げなさそうだけど、そうか。シールドバッシュか


921名無しの使徒

そいつらはまだ連携できてるからいいんだよ。問題は剣プレイヤー同士で相性が悪い場合だ。


922名無しの使徒

>921あぁ、うん。……なんとなく想像できる


923名無しの使徒

「よっしゃぁ敵が弱ってるぜぇ!」

「俺が決める!」

「「あっ」」


924名無しの使徒

>923わかる


925名無しの使徒

>923非情によくわかる


926名無しの使徒

>923そう、それだ


927名無しの使徒

>923お互いに悪気がないと余計に申し訳なくなる……


928名無しの使徒

>924-927どれだけ似た状況になったやついるんだよ笑


929名無しの使徒

いや、連携はよっぽど息が合わないとむずいだろ

背中に武器を吊れないから間合いを把握してないとすぐに武器同士でかち合うぞ


930名無しの使徒

武器ポーチ欲しいよなぁ


931名無しの使徒

>930ほんそれ。槍とか大剣とかの長物は出しっぱなしにしてるとそれだけで周りに気を付けなきゃいかんからな。街に着いたら店を探すか生産職に作ってもらお


932名無しの使徒

マジか、出しっぱなしかよ。あれ出してるとスタミナ消費が増えるから戦闘中以外はずっとストレージにしまってるんだけど


933名無しの使徒

後ろから犬に襲われてから、武器がしまえなくなってな……


934名無しの使徒

>933…………なんかすまん


935名無しの使徒

いいってことよ


936名無しの使徒

ありゃ。長物でも連携出来るプレイヤーはできるっぽいな。大剣二人組がバッサバッサと骨助たち斬り飛ばしてるわ


937名無しの使徒

>936大剣二人組?


938名無しの使徒

火力のごり押しか


939名無しの使徒

いやでも、群がられたら終わりじゃん。道幅そんなにないのによくやったなそのペア


940名無しの使徒

>939 石投げて一部の骨助だけ釣ってたぞ


941名無しの使徒

よく当てたな……。あれ、センスなかったら明後日の方向に飛んでくじゃん


942名無しの使徒

>942それはいくらなんでもセンスなさすぎでは……


943名無しの使徒

うるせぇ!


944名無しの使徒

あぁー、やっぱりまだ掲示板でも知られてなかったみたいですねェ


945名無しの使徒

ん?


946名無しの使徒

なに?


947名無しの使徒

なんだ?>944は何か知ってるのか?


948名無しの使徒

石投げをしていた大剣使いの片割れですよ。それで、情報を流してもいいということなのでこっちで流そうかと思いましてねェ……。

あれは【投擲Ⅰ】スキルのアシスト有での技みたいですよ。

因みに取得した本人は落石を15回ほど投げてたら取得できたと言っていました。


949名無しの使徒

【投擲Ⅰ】!?


950名無しの使徒

あれデフォじゃなくてスキル扱いなのかよ!?


951名無しの使徒

っていうか落石投げって……


952名無しの使徒

取得したのあの山賊プレイヤーか笑


953名無しの使徒

いやいやいや、落石投げ15回とか筋力特化ビルドじゃないとできないじゃん!


954名無しの使徒

それは無理ゲーすぎる


955名無しの使徒

いや、15回で済んでるのは落石みたいに重いものを投げたからだろ。

流石に取得条件はもっと緩いはず。


956名無しの使徒

>955ご明察。私は小石を100回ほど敵にぶつけたらスキルを取得できましたよ。


957名無しの使徒

小石を100回か……。まぁ時間は掛かるができなくはないか。


958名無しの使徒

というか、>948はそれ教えてよかったの?


959名無しの使徒

>958取得難易度は高くないですからねェ。その内に誰か気付くだろうという相方の判断です。というか、投擲スキルは便利ですが副次効果の方がよっぽど重要なんですけどねェ


960名無しの使徒

ん?なんかよさげな効果がある?


961名無しの使徒

教えて教えて


962名無しの使徒

アイテムショートカット機能の開放ですよ


963名無しの使徒

……え?


964名無しの使徒

……マジで?



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