他にも
前回の続き。
沼で魚などが死んで水に浮いた事件は、
他に2か所で発生していた。
別の国々で。
どちらも発展途上国で、報道には「検閲」が。
A国の沼。
首都から遠く離れた、辺境の村にある沼で異変が発生。
住民はすべて最貧困層に属し、
スマホどころか固定電話もない。
村の長老から頼まれた若い男が「牛車」で警察署がある町へ。
片道数時間。
事情を話しても、なかなか聞いてもらえず、
「そのうち見に行く。パトカーにガソリンが入っているときに」
もう1つの国でも同様。
警察が現場に行ったのは、
事件から1週間以上経過してからで、
沼からは、死んだ魚などが腐敗した強烈な悪臭が。
警察は現場の写真を撮って、
「誰かが古い農薬か何かを捨てたんだろう。
雨が降れば元通りになるかもしれない」
サンプルとして採取されたのは、
沼の水と、腐った魚の一部だけ。
若い警官は上司に、
「どうします?前の宗主国に連絡して分析をお願いしますか?」
「わざわざそんなことしたって、誰かからワイロがもらえるわけじゃないだろう。
おまえにまかせるから、好きにしろ」
2つの国で、この事件はまったく報道されず。
警察の内部でもごく一部の人しか知らず、
重要な事件と認識した人はいなかった。