癒やし
登校時とは違って下校時は足が軽い。
あまり暑さも感じない。
時おりふく風が気持ちいい。
玄関の扉も朝はあんなに重かったのに、今は簡単に開くのが不思議だ。
「ただいまー」
「おかえりなさいませ。陽平君」
自然と口角が上がる。
返事がすぐ返ってくる、それだけでこんなに嬉しいとは。
僕の目の前にはナツミが微笑み立っていた。
ナツミは、靴を丁寧に脱がしてくれて…歩くのも手伝ってくれる。
本当にそれだけのことなのに嬉しい。
すっごく嬉しい。
朝とはうって変わりキレイになったリビングに移動すると早速、ナツミと遊ぶ。
この貴重な時間を無駄にしてはならない。
いっぱい遊ぼう。
「今日は何する?」
「陽平君のやりたいことをしましょう」
「…む………」
……ナツミは、いつもこうだ。
たまには、自分の意見を言ってもいいのに…。
遠慮してるのかな?
恥ずかしいのかも。
今日は、しりとりをした。
僕の家には、遊び道具がないから…じゃんけんとか、にらめっことか、そのくらいの遊びしかできない。
足がよかったらもっといろんなことができたんだろうけど…、
今更、しょうがない。
……それにしても、時間が経つのが早い。
学校では、ゆっくり進むくせに
二人で遊んでいるときは、時計の針が急ぎ足で進んでいるように思える。
いじわるだなぁ。
家の外では、太陽が眠って代わりに月が起きる。
ひぐらしの声も聞こえない。明日に備えて眠ったのかな?
もうすぐお父さんとお母さんが帰ってくる……………。
「ああ……毎日、一日中ナツミと楽しく遊べる日だったらいいのにな」
毎朝、寝癖がひどい