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『個体名 橘 陽平の登校を確認。

 部屋の掃除を開始。      』


個体番号F.733は、陽平の登校を見届けた後リビングの掃除を始めた。

物音をたてず静かに…。


リビングは、酒のニオイで満たされている。そこら中に転がる瓶やカンは、床や家具を汚す。



まずは、窓を開け換気。

後、手際よく瓶やカンを回収。

雑巾で床や家具、机を拭き掃除を終了する。


『掃除を終了する。

 個体名 橘 おさむ

     橘 凛子りんこ

           を起こす。』


寝室から、歯ぎしりの音が聞こえる。


寝室の扉は開いていて中からは汗や体の汚れで嫌な刺激臭が漂い、服やコンビニの袋、ゴミが散乱している。

個体番号F.723は、寝室の掃除を禁止されているため手を付けてはいないが……これは衛生的に良くない。

そんなゴミ山の真ん中には今にも押しつぶされそうなキングサイズのベット。

橘 修

橘 凛子

が、だらしない格好で寝ていた。

修 凛子共に腹は膨れ上がっており髪は脂ぎっていて…陽平とは正反対だ。


「修様 凛子様、朝です。起きてください」


二人の大きい肩に手をのせゆらゆら揺らす。

二人は、薄っすらと目を開け…怠そうに重々しく身体を上げ……


「ああ……、ちっクソ………ああ……リビングは片付けたのかゾンビ野郎…」


「はい、すでに片付けました」


ボーボーに伸びた髭をさすりながら修は、腰をあげ散らかった床から財布をとる。

凛子もまた同様、自分の財布をとり尻ポケットに押し込むように入れる。


「じゃあ、俺ら行ってくるから」


二人が行くところなどパチンコしかない。今日も夜まで帰ってこないだろう。


それはともかく


『最優先リスト

   ·個体名 橘 陽平の食料確保

   ·借金返済

   ·個体名 橘 修及び橘 凛子の就職活動を促す』


陽平は、かれこれもう2日間食事を摂っていない。

2日前もまともなものを食べていない……命に関わる。


「修様 凛子様、陽平君に食料を…命に関わります。あと、就職活動をすることをおすすめしま…」


「ゔるせぇぇぇぇぇえ」


ダァァン

拳が壁にむかってあたり空気が振動する。

振動は波のように伝わりやがて静寂が訪れる。


凛子は、気怠そうな顔で「また、始まったよ…」と失笑。

本当に面倒くさそうなそんな顔


対し


修の顔は、眉間にシワがより憎悪に満ちた顔をしている。

歯をむき出しに、目には怒りが…。

その憎悪は…個体番号F.723にむけてのもの……


「働け………?働けだぁ?俺らに口答えしてんじゃねぇぇよ!クソがぁ!あぁぁあ!」


いや……


「その働く為の職を奪ったのはどこのどいつだよ!お前だろ!お前らだろぉ!」


NBにむけてのものだ。


NBがこの世に出回って世界は豊かになった。

技術は進歩し、出来ることが広がったのだ。

だが…その反面

NBが仕事をするようになり人間が就職するのが前より難しくなった。

NBにも能力に差があるが…その大半が人間より優秀である。

できない人間ものよりできるNBもの

優秀なものをとるのは自然の摂理。


修と凛子は、そんな世の

         被害者

           だと思い込んでいた。


「それにぃ!陽平君に食料をだぁ!………ハハッ…足が動かないあんなデクの棒…将来、アイツは俺らに!俺に!貢献できるのかぁ?お前ら得意の計算でアイツが就職できる確率言ってみろ!…あんなヤツはなぁ〜ヤったときのおまけみたいなもんだよ……金の無駄遣いだ。……………………いくぞ、凛子…」


そう吐き捨て……二人は出ていった。


「………………………………………。」


換気した窓から冷たい風が流れ込んできた。

   

イチゴが食べたい。

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