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一時停止

作者: 最小値

帰り道の信号待ちが好き。

赤信号は交通を整備しているだけじゃなくて

私の感情も整備してくれているみたいだ。

確かに私は今立ち止まれている。


例えば、大切だと思える人が側にいて

寒いね。って微笑めたら

もっと暖かい冬なのかもしれない。

とか、そんなことを考えただけで余計に寒くなった。

横断歩道を吹く風は心地好いなんてもんじゃなく

突き刺さる刃とまとわりつく棘のようだ。


冷たくなった指先を袖で包んだけど

この氷河は何も変わらない

今年の冬は寒過ぎるなあ。

別に去年も暖かくはなかったけどさ。

ちゃんと手袋くらいは買わなきゃ。


ため息をついたら、真っ白な靄が宙に浮かんだ。

冬に吐く息は、生きていることを

痛感させられる気がしてあんまり好きじゃない。

なんていつもなら思っていたところだったが、

普段なら意識すらしないその色が見えることに

今は、何とも言えぬ安心を感じてなんだか好きになりそうだった。

今度はため息ではなく、深呼吸をする。

排出された色が見えなくなるまで目を凝らすと、

その先は澄んで綺麗な夜空だった。


寒い癖になんとなく寄り道したくなって、

公園のベンチに腰掛けると、

素っ裸の木と木の間にオリオンの三星を見つけた。

冬の星座はオリオン座だけじゃないとは知ってはいるが、

冬の夜に空を見上げたら毎年見つけられるというのは

歳を重ねるにつれて私の中のお気に入りの一つになっている。


こんな帰り道を過ごしただけで、

堕落しつつある自暴自棄な日常が少しでも変わったような気がした。

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