~ココロノチ、頂戴。 *狂いとの決別編
「――ふうん。それで貴様は、協力して破壊を亡くしていくという術を撰びおったわけか」
それは狂い者達が人間となり、全ての者達が狂いと決別したあの日から、数ヵ月。
元化け者――八魅陽純玲は、あの刻の状況を帝憑き吸血鬼に説明していた。
―――説明になるが純玲は自称「イメチェン」をし、本能を隠さず一人称を「俺」とし、髪もむやみに切らず、少し伸ばした。
「…まぁ、貴様が善いのなら良いのではないか?我もその人間――来咲依月の思考に賛成するぞ。
――ふわぁぁぁ…」
帝憑き吸血鬼は、気楽に欠伸をしながら答える。
「…そう。
なら、善かったんだけど、さ。」
コトン、とテーブルにコップを置き、はぁ、と溜め息を付いた。
「…どうしだのじゃ? そんな気に病む必要などないぞ。
帝憑の力は、帝音ハジケという弾けおる詠を奏でる――
それはそれは良いフォルムが仕えるのじゃから。
――殺傷能力は封印されるのに、我も反論するつもりなどないぞ?」
「…うん。でも――でもね。
今頃だけど、やっぱりさ、能力を使えなくなって、辛くなることもあるし――」
「貴様はそれを承知したからこそ、この結果になったんじゃろう? 結果になってへこんでどうする。
我も元狂い者の奴らも、人間どもは協力してくれる。
だから弱音は吐くな―――。」
「・・・うん。そう、だよね。
俺はもう狂いとは決別した―――んだ。」
そう言って、純玲はPcをいじりはじめた。
どうやらアニメを見ているようだ。
「―――またそのアニメを見ておるのか。貴様はそのアニメというものに興味を持ったわけではなく、
ただ役をする人間が別のアニメのいわゆる「推し」をやっているから見ているだけじゃろう??
―――なぜそんなことをするのじゃ?ただの役をする者目当てではないか―――」
そう続けようとした帝憑き吸血鬼を、純玲は言葉を遮り云った。
「―――狂いと決別しても、誰かに指摘されてそいつに治すつもりはない。俺は俺らしく――
いなきゃいけない。」
そして純玲は、言葉を続けた。
「失敗したり絵に限らずなにもかも下手で何もかも少なくても、その好きな物の世界観から嫉妬で無視され、消されようとしても―――
俺は俺であらなければいけない。そんな理由がある」
帝憑き吸血鬼は妖しい笑みを浮かべた。
「――ほぉ――なかなか言ってくれるではないか――ふん。」
「――俺は、俺だから。前みたいに本能を隠して生きたりはしないさ」
「―――まぁ、狂いを無理に隠すことはない。少し人間として慣れるがよいぞ。
それに、貴様には天罰という能力も残っておる・・・。」
その言葉に純玲は、少し哀しそうな笑顔で言う。
「うん―――
天罰は惡に使えば人殺ししたりすることになってしまう―――それは、殺傷も同じ―――
けど、術を封じたからこそ、だからこそ本当の殺傷能力を封じたってことになったのかもしれないし」
「そうじゃのぉ・・・天罰は天罰じゃ。人を殺したとしても、それは天罰にしかならん。
天罰と術は違うしの。」
―――そんな言葉を交わし、雰囲気が中和されたところで、帝憑き吸血鬼は口を開く。
「―――決めたのじゃが、我はこの地を出る―――人間を完全に「理解する」ためにな。
なぁに、心配する必要などない。我は吸血鬼―――何かがあれば異能で相手を吹き飛ばすじゃろう。
それに、貴様との関係や契約は切らん―――」
「―――止めたりは、しないよ。心配だってしてないし、迷惑でもない。大丈夫
それで、出発はいつなの―――?」
「ふん―――貴様が良いのならば、今すぐにでも出発したいのじゃが・・・いいだろうか」
「うん。見送るね。」
「ふむ。それでは行ってくる。」
「うん、いってらっしゃい・・・。」
そんな風に吸血鬼を見送り、なにを思い立ったのか。純玲は、元凶の墓へと向かったのだった。
「・・・何か、解ればいいね」
出掛けた帝憑き吸血鬼には届かない、そんな独り言を呟いて。
―――「・・・あら、奇遇ですね、八魅陽さん。私も元凶様のところに来ていたところです」
そう、そこには日々平和に日常を過ごすことができている、クロロ・リリエスの姿があった。
「―――元凶様は、成仏したの―――?」
「―――ええ、成仏しました―――お前らはもう大丈夫だな、って言って。
・・・きっと、元凶様は嬉しかったんだと思います。みんなが、狂いから決別して。」
「・・・そっか。」
―――純玲は、あの日の夢で元凶と話をしたことを思い出した。
「―――純玲。―――八魅陽、純玲。・・・聞こえて、いるか―――?」
夢の中、ふとそんな声がし、振り向いた先には、はじめて会う「「元凶様」」。
「元、凶―――様―――? ・・・元凶様、なのですか―――?」
純玲は驚き、元凶に聞き返す。
「ああ。・・・元凶、というより・・・何百年前の黎炉家の先祖黎炉司だ。」
「―――司―――さん。」
「―――八魅陽、純玲。俺が言いたいことは、一つだけだ。
お前なら、きっとどんな失敗作でも、誰かに馬鹿にされても―――立ち上がってくれると、思っていたよ。
そして予想通り、君はどんな時でも立ち上がり、きちんと自分で計画してくれた―――。
君はやっぱり、とても優しく、とても奇麗だ。
―――悩みや破壊をされたならば、誰かを頼れ。俺も、蒼空からお前を見守っているぞ―――。
それじゃあ―――」
「ま、待って―――ください、司、さん」
「―――なんだろうか?」
「そ―――その、礼を、言わせて―――ください―――
私を創ってくれて、本当に―――本当に―――ありがとうござい―――ました―――っっ―――。
―――すごく感謝しています。こうして、生きてられて―――。
きっと、私の人生は、普通に生まれて普通の子に生まれていたより―――すごく楽しくなると思います。」
「ははっ―――そう言われると嬉しいよ。
―――それじゃあな。元気で」
「ええ―――
お元気で。」
そして、二人は会話を終えて―――
別れを、告げるのだった。
「―――さて。
そろそろ行きましょうか―――リリエスさん。・・・あ、うちにでも来ませんか?」
「よいのですか・・・?
―――それじゃ、お言葉に甘えて―――。」
そして狂いから決別した者達は、それぞれの色々な道に、進む。
幕を閉じるかは、また開けるかは、分からない、解らない。
何時もながらお久し振りでございます。闇妖すみれです。さて、今回は後日談編と題しまして、
『狂いとの決別編」を書かせて戴きました。
3日くらいで完成させたものですが、個人的に短編としては長く書けたかな、と思っています。
余談ですが、元凶さまの御名前が判明致しましたね~。
Twitterでもツイートしましたが、元凶さまは20代のイケメン、因みに私の脳内は勝手にCV:三木眞一郎にされております。笑。
其れではみなさん、またどこかで。