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のんびり異世界留学日記  作者: 茉莉
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5.第一村人…異世界人発見です




 誰だかわからない人に抱えられながら湖から出ると、また一人近づいてくる。おそらく手を振っていた人だろうな、と。




「おい!大丈夫か?!…って…?!」




 やっと窮屈なお姫様抱っこから解放されるとバサリと上着を羽織らされた。

 ああ…うん、日本は猛暑でしたからね、わたし薄着でした。水に濡れて身体にピッタリ張り付いてました。白いピチTとかじゃなくて良かった!下着とか透けてたらほんとマジ立ち直れない。なぜって?スポブラだからだよ!え?何でスポブラかって?予定では今日は機内泊だったの!だから苦しくないようにノンワイヤー選んだ結果スポブラだったの!お洒落なノンワイヤーあるって?機内泊のためだけに贅沢出来ません!




「えーと…ありがとうございます。でもこの服も濡れちゃうのでいいです…」




 後で弁償とか言われたら困る。

 だってやたら重いし、手触りも何となく良さそうだし、ゴツゴツ装飾凄いし!絶対これ高額!高級品!ハイブランドだったら買って返せません!


 この後の顛末を勝手に想像しブルブルと震えていると、目の前にいる(声からして)男性は何やら勘違いをしたようで、




「子供がそんな気を遣うな!そんなに震えて寒いだろう。早く着替えた方がいいな」




 こ…子供って…わたし二十一歳ですけど。何?ここって成人もっと遅いの?二十歳過ぎて子供って気持ち悪いな…。




「ハ…ハッ…ハックショーイ!」




 ズズッと鼻をすすると、おっさんかよ…という声がしたけど聞こえなかったことにした。咄嗟に出るくしゃみに可愛らしさをプラスなんて出来るか!




「色々とお話を伺いたい所ですが、先に着替えを何とかした方がいいですね」


「ああ。だがただの遠乗りで来ただけだからなぁ、着替えに変わるような物は何もないぞ?とりあえず脱がして水分を拭き取らないとどんどん体温が奪われるな。」




 ふむ…と湖から横抱きで救出してくれた敬語紳士は少し思案し何やら提案をしてきたのだけど…




「私達は後ろを向いてますから、あちらの木の影で濡れている服を脱いできてくれますか?私のこの上着をお貸ししますから釦を全部とめて出てきてください。長めの上着ですからあなた背丈だと全身覆うことが出来るでしょう」




 穏やかな口調でゆっくりと話しかけてますけど…内容が穏やかじゃない!完全に子供に話しかけるように言ってるけど!幼稚園の先生を思い出しちゃったよ!ワタシ二十一歳!二十一ですよー!色気は皆無だけど立派な大人ですよー!




「無理!むりむりむりむりむり!」


「なんだなんだ?一丁前に恥ずかしいのか?」


「だって!全裸にジャケット羽織れって変態だよ!電柱の影によくいる有名な変態だよ!お兄さん達変態なの?!」




 小学生だって嫌がるでしょそんなの。




「何でそうなるんだ!」


「ですが本当にこのままでは風邪をひいてしまいますよ?屋敷まで距離もありますし…」




 敬語変態紳士の表情まではわからないけれど、困った、というような声で…ん?表情まではわからないけれど?…表情までは…




「はっ?!眼鏡!眼鏡が無い!」




 そうだ!なーんかさっきから違和感あると思ってたら、あたし眼鏡してない!近眼と乱視だからね!ぼやっとしか見えてない。何故今まで気づかなかったワタシ!




「は?めがね?眼鏡なんかしてるのか?その歳から?」


「歳は関係ないと思いますけど…はい、眼鏡無いとあまり見えないんです。…ヤバい…どうしよう」




 あぁぁぁ…きっと湖の中だ…。だって空から落ちてる間は飛ばないように眼鏡押さえてたもの。クロールした時点で手を離してるのは明らかだし。着水と同時に吹っ飛んだんだわー…最悪。

 いや…待てよ、もしもの時のために予備持ってきてたよね?無くしても留学先で困らないようにって…何処に入れた?鞄…キャリーケースの中!




「わ、わたしの鞄は?!予備の眼鏡も着替えも入ってるんです!赤いこのくらいのキャリーケースと黒のボストンバッグなんですけど…ああっ!それとリュックもです!そっちには財布とパスポートと…あとスマホが入ってて…!」




 あわわわわ…さっきまで背負ってたリュックなんて完全に水没だよ!またしても湖に落としてきたっぽいし。はっ!しかもキャリーケースの鍵も入ってるんだったーっ!

 あぁぁぁ…がくりと膝が落ち地面に両手をつく。




「お嬢ちゃん、鞄ってのはあれじゃないのか?」


「え?」




 変態お兄さんその二(その一は敬語変態紳士)が指差す方向を見ると、割りと近くにあって、色とぼやっと見える形から多分わたしのだとわかる。

 あ、ほんとだ。確かにわたしのだけど…ああ、やっぱり鍵がかかって開かない~!

 急いで近付き二つの鞄を確認してみたけど、ガチャガチャと虚しく響くだけでロックはそのまま中身を取り出すことは出来そうにない。

 はぁぁぁ…。銀髪発光美女様の言うように外見は無傷だけど、開かなければ意味がない。…よしっ。




「待て待て!どうするつもりだ?!」




 寒っ寒っ!と言いながら湖に向かうわたしに焦ったように声をかける変態お兄さんその二。

 いや、だってリュックさえあれば鍵も入ってるし?もう全身濡れちゃってて今更って感じだからもう一回湖入って探そうかなって。

 あほか!と軽くチョップされちゃったよ…。




「お前、眼鏡無いから見えないんじゃないのか?そんなんで見つかるか!」


「ぐっ…!」




 またしても忘れていた!もうこの際力ずくで壊してしまおうか…でもそうすると今度は持ち運びに問題が出てくるよねぇ。




「ヴォルディック!こっちに落とせ!」


「ヴォルディック?」




 空を見上げながら片腕をあげぶんぶんと大きく旋回させると左右に大きく翼を広げた鳥が頭上に迫り、ポスッと黒い物体が降ってくる。変態お兄さんその二が上手くキャッチし、ずいっと目の前に差し出してきた。




「あ…それ…わたしのリュック…?!」






 どうやらこの鷹っぽい鳥が湖から拾ってきたくれたらしい。なんて優秀なんだ!こうして、いともあっさりと問題が解決したのでした。





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