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のんびり異世界留学日記  作者: 茉莉
27/27

27.実体が少しづつみえてきました




「なーんだ、ヒューゴさんに言われたから来たのね」


「うっ…。べ…別にそれだけじゃないし。悪かったとは多少は感じてるし…」




 ついさっきの衝撃のはにかみ笑顔で、ツンデレ少年からハニカミボーイに改名しようかと思ったけど、やっぱりツンデレ少年のほうがしっくりくるな。


 どうやら、ヒューゴさんが気を遣って仲直りさせようと一役買ってくれたらしい。人に言われたから謝りに来るのもどうかとは思うけど、ツンデレ少年自身も自分の放った言葉に多少は罪悪感があって素直(?)に従ったというところだろう。


 そして、視界の端にチラチラと入ってくるにやけ顔のマノンさんが残念なものに変化を遂げている…。




「あらやだ、見せ付けないで、お二人さんっ!二人きりの時に存分にやってちょうだいな!きゃっ!」


「…ちょっと、マノンさんや、さっきからキャラ崩壊してませんか?」


「鬱陶しいババアみたい…痛っ!」




 『ババア』に驚くべき反応速度で裏拳を繰り出すマノンさんの動きはわたしごときの動体視力では到底追い付けず、それをもろに食らったツンデレ少年はテーブルに突っ伏してしまった。相当痛そうだ。

でもババアは良くないぞ、少年。

そして、その光景を見たわたしは、これからはマノンさんの取り扱いには十分気を付けようと心に決めた。






「そういえば、この施設について知りたいって言っていたわよね?何も知らされないで連れてこられたの?」


「そうなの。知り合いと歩いている時にね。急に腕を掴まれたと思ったら転移魔法?だっけ?気付いたら此処にいたのよ」


「は?それ本当なの?無理矢理連れ去られたってこと?」




 ツンデレ少年の表情がわずかに険しくなったように見えて少しだけ弁解する。だって、本来は囮捜査で拐われることを目的としていたから、これは願ったり叶ったりな状況なんだよね。ただ、魔法を使われたことが想定外だっただけで。




「結果的に勝手に連れてこられたのには変わりないけど、それ以前の問題で既にヴェネクト領に勝手に連れてこられてたの。あ、勿論ヒューゴさんは無関係よ。だから今のこの状況は今更なのよね」


「は?そもそも君って何処の出身なわけ?多人種が集まるヴェネクト領ですら見たこと無いよ、君みたいな容姿は」


「なによ、ブスッて言いたいわけ?」


「被害妄想も甚だしいな!誰もそんな事言ってないでしょ!」


「言いましたー。初対面の時に『おい、そこのブス』って言われましたー。おまけに小突かれましたー」


「…ねちっこい性格の奴め…」


「根に持つ女、それがわたし!」


「それはもういいよ!」


「あらまぁ、ピッタリ息の合った痴話喧嘩、相性抜群ねぇ」


「「それはもういいよ!」」




 さいごのツッコミは悔しくも息ピッタリだったと思ってしまった。マノンさんにしてやられたみたいだ…。






「ちなみに、二人はどうやって此処に来たの?」


「どうやっても何も、ヒューゴさんに一緒に来るか?って聞かれたから行くって答えただけだよ」




 一緒に来るか?って…何だかイケメンに誘われたい台詞ね。カッコいいじゃないか。というか、何がどうあって一緒に来るかって話になるわけ?軽すぎない?ヒューゴさんって雰囲気イケメンではあるけど、無条件で『ついていきます!』って言う程魅力的か?…いや、好みは人それぞれだけど。




「ヒューゴさんはカッコいいと思うけどな。…じゃあ君の好みってどんなのさ」


「えー?別にこれと言って絶対条件ってないからなぁ。背は高い人が良いなぁとは思うけど、低いからって生理的に受け付けないとかは無いし。結局は好きになった人が好みなのよねー」


「何それ、誰でもいいんじゃん」


「節操無しみたいに言わないでよ」


「あら、じゃあこの子はどう?」




 この子はどう?って、ツンデレ少年のことですか?可もなく不可もなく…背も百七十センチくらいで日本人からしたらチビという程でもないし…って、いやいや、年齢的に多分こっちが犯罪者になる可能性があるので無理です。見た目十七か十八歳くらいだけど、日本人感覚で大人っぽく見えるけど、多分中学生くらいの年齢でしょ?

 …じゃなくて!さっきからちょいちょい脱線してるんですが!




「ごめんごめん。そうねぇ…強いていうなら、ヒューゴさんは虐待や差別から私達を守ってくれているのよ」


「虐待…?」


「そう。世間では人拐いとか、人身売買とか、極悪人みたいに言われているけれど、真逆よ」


「待って、じゃああの小さな子供達も…?」


「例外無くそうだよ。あの子らの身体隅々まで見たことある?」


「隅々っていうか…。義足とか義手のことでしょ?でも欠損は生まれつきじゃ…」


「欠損はね。でも服で隠れているところにある無数の傷痕は生まれつきじゃ説明できないでしょ」




 まさかの証言でわたしは固まってしまった。だって孤児院って、いわゆる児童養護施設のことだよね?本来なら経済的な理由で親と生活が出来ない子供や虐待を受けている子供が保護される場所である筈なのに…。保護して愛情をもって健やかに成長することを保証する場所である筈なのに…。傷痕って…あんな小さな子供達が暴力を振るわれていたってこと?聞くまでもないけど、誰が…




「そんなの決まってる。孤児院の奴等だよ」


「そう…だよね」


「別に、そんなの何処にでもある話だよ。慈善事業のように世間に思わせて、貴族から寄付を募る。それを私腹の肥やしにしてるんだから。貴族だけじゃなく、平民だって羽振りのいい商家なんかは物資援助したりするんだ。当然集まった寄付金や物資は子供達にまわされることは無いよ」


「そんなのすぐバレるんじゃ…」


「服の下に隠れた傷まで見ることは無いし、現に君だって気付かなかったじゃないか。ガリガリならない程度には食事は与えられるけど、じゃがいもやパンばかりで、たまに出るスープは味なんてついていない」


「孤児院で贅沢出来るなんて誰も思わないから、年齢より多少体つきが小さくても疑問も持たれないのよ。例え聞かれても子供達の年齢を誤魔化せばどうとでも言い訳なんて出来るもの。寄付はしてもその実体までは興味無いのよ」


「貴族の興味は体裁だけ。自分が寄付する孤児院を少しでも良く見えるようにお金を出すんだ。自分の寄付のお陰でここまで不自由無く過ごせる、幸せな生活を送れる。それを自分の功績にしたいんだよ。だから少しでも不備があると思えば、それを聞いた金持ちがまた寄付をするんだ」




 なにその経営者ウハウハ状態…。




「そういえばヴェネクト領の僕たちのいた孤児院は院内に菜園を作りたいとか言ってたんまりと寄付金を貰ってたけどね。子供達が将来孤児院を出る時のための職業訓練だとか言ってさ」




 なにその農業特化の職業訓練…。




「勿論、院内菜園なんて作る気なんてないから」


「それって視察とかが入ったら一発じゃない!」


「だーかーらー、視察なんて入らないんだよ。寄付してはい、おしまい。つまりは自己満足。それだけで、自分は良いことをしたと思えるし、思ってもらえる。民衆の支持が手に入れば後はどうでもいいんだよ」


「はぁ?!何様だよ!」


「貴族様だよ」




 何でそれがまかり通るの?内部告発は?

 そうだよ、こうやって実際証言できる人達がいるんだからいくらでも公表出来るはずだもの。わたしはこの国の行政システムがわからないから何処に相談するべきかなんてわからないけど――




「…あ!騎士団とか――」 


「カズハ、言ったでしょう?彼らに期待はするなって」




 その時のマノンさんの顔は今まで見たこともない怒りに染まっていた。





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