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のんびり異世界留学日記  作者: 茉莉
24/27

24.考えによっては、住めば都?

途中ヒューゴ視点になります。読みづらくてすみません…。




「…ねえ、何してんの?」


「ツンデレ少年?」




 どうやらわたしは魔法とやらで、この犯罪組織のアジトから出られないようで、窓枠に頬杖をつきながらボーとしているところにツンデレ少年が通りかかった。




「わたし外に出られないみたいなんだけど…、この建物、魔法か何かで出られないようにしてるの?…帰っていいって言ったのに、詐欺だ!特殊性癖詐欺集団だ!」


「え?とくしゅ…?せい…?なんだって?」




 じゅ…純粋だ…。このツンデレボーイは純粋さまで持ち合わせていたのか。わたしの中の萌えポイントがうなぎのぼりよ。

 とはいえ、言葉の意味を詳しく説明もしたくないのでゲフゲフ咳き込んで適当に流すことに決めた。

 訝しげな目を向けられたけど、本人もさして興味がないのかそれ以上突っ込んで聞いてくること無かったから助かった。だって、その単語の意味を知ってるわたしこそが変態じゃないかと思われそうで何か…嫌だ。




「…君さ、帰りたいんだ?」


「うん、まぁ、一応心配はしてると思うし」


「ふーん…君の家族は君のことを心配してくれるんだね…。良かったね。じゃあ何でここにいるの」


「いや、だから、出してくれないから困ってんだってば」




 話聞いてました?玄関は見当たらない上に、いくら窓から外に出ようとしても魔法で出られなくしてるのはそっちでしょうが。いや、少年がやってるわけじゃないけど。


 しかも何か棘のある言い方だし。




「あなたは帰りたくないの?」


「はぁっ?!全然帰りたくないし。じゃなきゃ最初からここに来るわけないでしょ。馬鹿じゃない?馬鹿なの?」




 棘から鋭利な刃物に変わりましたよー!ツンデレのツンの顔しか出してこないな、今日は。思春期か?反抗期か?




「馬鹿か天才かと問われたら馬鹿にメーター振りきるけど、メンタルやられそうだからもう少しソフトに言ってくれない?」


「…君さ、ここにいる子供達が望んで残ることを決めたの知ってるよね?それってどういうことかわかる?」




 そこはわたしだって気になってた。欠損部分が繋がって不自由なく過ごせるようになって、親元に戻りたいと思うんじゃないかって。

 いや、厳密に言うと孤児院だから血の繋がった親ではないけれど、レイナルドさん達から聞いた話では、孤児院から子供達が姿を消したことに気付いた職員が血相を変えて騎士団に捜索願いを出しに来たようだし、それなりに大事にされてきたんじゃないかって。

 違うの?




「ヒューゴさんに恩義を感じて残る…とか?」




 普通は恩義を感じるなら、ダラダラと厄介になるよりはすぐ出て行くよね…。子供ゆえにそこまで考えるかは謎だけど。

 なかなか良い答えが見つからずウンウン言ってる間にもどんどんツンデレ少年の機嫌が急降下していくのがわかる。ヒューゴさんといいツンデレ少年といいスイッチがわからない。多分わたしが悪いということだけは確かなようだけど…。




「…ほんっと頭悪いよね。大事にされてきた人間って他人の気持ちの機微には疎いんだね。無神経な人間と話してるとイライラしてくるよ…。ここからすぐにでも出てってくれない?居るだけで目障り。じゃあね」




 イライラしてくるって…お前は四十路のミナミちゃんか?

 ここぞとばかりに嫌悪感露に吐き捨てて、スタスタと歩いていってしまった。だから、出られたら出て行ってるっつーの。



 ツンデレ少年の言い方は、戻りたくないから残るといった感じだった。それも、ここに連れて来られた子供達皆が。

 確かにリンデちゃんも他の子供達も例外なくヒューゴさんを慕ってる。脅されてとか、怯えてとか、そういう雰囲気は微塵も感じさせない。

 一瞬、洗脳という言葉が頭を過ったけど、それだったらわたしだって今頃はコントロールされているはずだ。でも実際はそんな事は無い。ヒューゴさんに対して妄信的にもなってないし、信頼すら沸き起こらない。わたしの自我はしっかりとある。うん、さっさと帰りたい。


 今のところ、大人のメンバーが何人いるかまでは把握出来ていないけど、ヒューゴさんの他には三~四人は確認出来た。

 …あれ?ちょっと待てよ?そいつらメンバーか?もしかしたら子供達同様に連れてこられた人達という可能性もあるのでは?

 うーん、でもコミュニケーションの取り方は最近知り合った間柄というような雰囲気でもない。でも思い返してみると、このヴェネクト領で起こっている誘拐事件の対象者は子供だけじゃなかったよね?

 …あとは、何か忘れてることがあるような…?何だっけ?割と重要なことだった気もする。




 もやもやと気持ちが晴れないまま、昼食の時間がきたけれど食べられる気分でもなく与えられた個室で横になっていた。

 途中リンデちゃんが軽くつまめるものをトレーにのせて持ってきてくれた。ここに残ると決めた理由を聞こうと思ったけど、無神経な質問になりそうで言い出せなかった。確実にツンデレ少年に放たれた言葉が尾を引いているんだな…。




 結局その日の夜も食欲がわかず、お昼寝の延長で起きたのが夜中だった。部屋の灯りが付いたままで、それを利用しながら今日のことを日記に書いていく。

 こうやって何かしらの手掛かりになるようにと書き綴ってはいるけれど、そもそも転移という魔法を使われて、レイナルドさん達はこの場所を見つけることが出来るのだろうか?単純に拐われただけなら、目撃証言等で辿れるようなものだけど…。

 魔法は使った痕跡というものは残るのかな?残り香ならぬ、残り魔力…的な?

 魔法についてもこの世界ついても無知なわたしはいくら頭を捻ってもわからないものはわからない。魔法と魔術の言葉の意味の違いすらわからないからね!適当に言ってるけど、使い分けは確実に間違っていると確信出来る。


 それと…見つけてもらえる可能性が低いこと、ここから放り出された後は知り合いのいない所で何とか一人でやっていかなきゃないこと、この二つは覚悟しておくべきだよね。

 何回か転移を繰り返して今此処にいるわけだから、『木漏れ日』のあるヴェネクト領からは大分離れてしまったんだろう、きっと。

 朝がきたらまた出口を探してみようか。出来ることからコツコツと。


 そもそも異文化で日本語が通じない国に留学する予定だったんだもの、言葉が通じるこの世界はラッキーだと思うしかない。

 …そうか、『異世界ものあるある』のチートが何一つ無いと思ってたけど、言葉には困ったことがなかったわ。わたしのチートは自動翻訳ってことか。なかなかに便利じゃない?

 うんうん、何だか沈んでた気持ちが少し浮上した気分。言葉の通じない現実世界の外国に放り出されるより、よっぽど今のこの状況の方がツイてる気がしてきた!

 うんうん、前向きに前向きに!

 深く考えない女、それがわたし。








―――――――――――――――――




「はぁ…」




 とぼとぼと長い廊下を、夕食を乗せたトレーを持ってリンデは食堂へと戻ってきた。

 子供達が先に食事を終わらせ、今は数人の大人が食べている最中で、リンデは大きな溜め息を吐きながらその中に入っていく。大して広くもないその部屋では溜め息が異様に響いてしまい、食事中の人達の注目を集めてしまった。今此処にいるのは男が三人、女が二人。




「どうした?リンデ」


「あ…ヒューゴさん、ごめんなさい、つい」


「あの子の部屋に行ったんじゃなかったのか?」


「うん、でもお姉さん寝てた」


「あの子?お姉さん?」


「一番最近の新入りだよ。やたら色素の濃い」


「ああ!あの子供か!確かヒューゴが東の方の民族とか言ってた」


「ありゃ嘘だ。今まで東方以外はだいたい回ってきたが、あの顔立ちや色素は見たことがないからな、勝手に未開拓の東方だったらいるかもしれないと思っただけだ」


「それで?結局東の人間だったの?」


「知らん。否定も肯定もしてなかったからな」




 昼間呼び出した時、食事の事でさらっと「東方」という言葉を口にしたが、そこは見事にスルーされていた。が、そこは特段重要ではない。出身が何処か等、自分達がやっている活動には無意味なことだからだ。


 世間では犯罪集団と騒がれていることは知っている。しかも身に覚えのない人身売買や酷く残忍な扱いで奴隷にしている等と噂されていることも。

 これまで拐った人間は誰一人ここから戻った者はいない。勿論、殺してなどいないのだから、死体なんか存在すらしないのだが、人々の勝手な想像と妄想で我々は残虐非道な人殺し集団まで担っているようだ。人が消えたという表面だけを見て判断しているうちは、きっとこの意味に気付かないだろう。


まぁそれも、余所者の自分達にはどうでもいいことだが。




「リンデは何でそこまで落ち込んでるの?」


「う…ん、お昼ご飯持って行った時からずっと元気がないの、お姉さん。朝はなんともなかったのよ?何かあったのかなって…」


「あら、その子お昼も夜も食べてないの?育ち盛りにそれは駄目よ~」


「朝食後に呼び出して話はしたが、その時のが原因とは思えんがなぁ」


「そーいえば、廊下でリュカといるところを見たな。何を話してるかまではわからなかったが」


「ああ、リュカなら年も近いだろうと敢えて掃除や手伝いなんかをペアでやらせてたんだ。打ち解けたんだろうよ」


「うーん…あまりそういう雰囲気ではなかったと思うけどなー」


「険悪?」


「いや、どうだろう?」


「どっちだよ!」


「遠目だったし。でもまぁ、リュカは心根は優しいから、大丈夫だと思うけどな」


「腹が減ったら起きてくるだろ。だからリンデも気にするな」


「…はい」






 結局、その日は東の少女が起きてくることはなかった。帰っていいと言っておきながら、建物に張り巡らせてある結界を解除していないため、未だ外に出る事は不可能な状態にしてある。勿論わざとなのだが、少々意地悪すぎたかと、反省しないこともない。

 が、一応理由もある。どうやら東の少女の関係者があっさりと()()()()を見付けたようなのだ。

 場所を見付けても()()を見付けない限りは辿り着けないが。

 俺の魔力はそんなに簡単には破れない。どうやって突破してくるのか、もう少し楽しんでいたいというのが本音。

 これまで、こんなにも早く特定されたのは経験がなかった。


 東の少女には悪いと思いつつも、己の娯楽のためにあと数日我慢してもらおうと心の中で詫びておく。







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