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のんびり異世界留学日記  作者: 茉莉
19/27

19.取り残された者達は 2




 ルーシーのご機嫌伺い担当になっているヨアンはあの後すぐに追いかけ、宥め、また下へと降りてきた。




「それにしても意外だね。レイナルドが一番取り乱すと思ったんだけどねぇ」


「保護者感ハンパ無いもんな」




 ジルに保護者と言われ、確かに最初はそうだった。けれど幼い少女だと思っていた彼女が成人してることもわかり、保護者と名乗るほど年も離れていない。今は保護した責任者という立場になるのか。




「十分取り乱していますよ。ただそういう時こそ冷静になるよう努めているだけです。焦るだけでは視野が狭くなり見えているものも見えなくなりますからね」


「さすが、団長の器は違うね。想い人が消えたと取り乱しながら店に突進してきたジルを思い出してしまうよ」


「へ?想い人?」


「「「………」」」


「おいおいおい!お前昨日何の確証もなく『マノンが拐われた~!』つって飛び込んできただろうが!」




 まさかの忘却。

 あっ!…て…。何故好いた女の危険を忘れることが出来るのか不思議でたまらないのだが。

 うわー…という残念なものを見る視線を、全員から向けられていることに流石にジルも気付き、無駄に冷静な表情を作っているけどもう遅い。

 渾身の弁解がこれだ。




「い、いや、決して忘れてなんかない。ただそういう時こそ冷静になるよう努めているだけだ。焦るだけでは視野が狭くなり見えているものも見えなくなるからな!」


「「「………」」」


「おい…デジャブか?」




 デジャブも何も私のセリフをそのまま語尾だけ変換しただけだと思うが。


 微妙な空気を破ったのはトリスタンだった。




「…まぁ、それはいい。しかし、皮肉にも当初カズハ嬢が提案した事態になってしまったな」


「目には目を歯には歯を、魔術には魔術を…っつーことで、宮廷魔導師団に応援でも頼むのか?」


「そのつもりはありませんでしたが…魔術関与となると…。それに二日後には今日の報告が王都まで届くでしょうから、嫌でも干渉してきそうですけどね」


「あそこは魔術バカの集まりだ。すべては己の探究心を満たすためだけにいるような奴等だからな、転移魔術使って直ぐにでも此処まで来るだろう」


「それに人拐い集団の実態と目的がわからない以上、王都が次に狙われる可能性も捨てきれない。此処で何とか食い止めおくのが賢明だ。王城の幹部からも何がなんでも捕縛しろと言ってくるぞ」




 トリスタンの言うように、宮廷魔導師団の団員は魔術バカの集団と言っても過言ではない。

 とにもかくにも、クセが凄い!

 極力関わりたくないといのが本音だ。

 特に転移魔術を使える三人は魔力量も多く、必然的に上位三名に入るのだが、彼らと接していると呆れと苛立ちの二つの感情に支配される。

 今回のこの事件に魔術、それも難度の高い転移魔術が使われたとなれば、上層部からの壊滅要請が下る前に勝手に喜び勇んで来るだろうことは予想出来る。


 魔術に長けたスペシャリストなのだから心強いことこの上はいはずなのだが、人命より好奇心が前に出て、捕縛は叶っても人質の救出は期待出来ない。事件解決には必要な犠牲だった…の一言で済まそうとする奴等だ。

 全くもって信用ならない。




「やはり…報告は取り止めましょうか…」


「いや、駄目でしょ!どうした、急に」


「私達で作戦を立てた方が穏便に事が進む気がしてなりません」


「うん、まぁ、否定はしないよね。ただねぇ…君達の作戦で今のこの事態を引き起こしてるわけだからねぇ」


「・・・」




 話を蒸し返してきましたね、ヨアン…。

 線が細く、騎士の私達よりははるかに華奢な体つきで、穏やかな表情が常態の彼はどこか飄々としていて何事にも執着が無い印象を受けるが、どうやら根に持つタイプでもあるらしい。




「…彼女の鞄に魔双石を入れておきました。本当に危険な時は対となる私が持つこの魔双石に反応が出るはずです。今のところは…無事でしょう」




 魔双石とは魔石の一種で対になってる。磁石のように共鳴し合うため、ある一定の距離であれば例え正確な居場所がわからなくとも魔双石が魔力を辿り導いてくれる。

 ただ、非常に希少で、今もって採掘場所は世界中で一ヶ所しか見つかっていない。それも断崖絶壁に突如現れる洞窟のような所で、そこに到達するまでがまず命懸けだ。上手く辿り着けても、確実にあるとも限らない。掘って掘って掘りまくっても手ぶらで帰還することの方が常なのだ。

 必然的に希少価値が高くなるのは仕方がない。




「魔双石?お前…どこで出に入れたんだ?それ一つで王都の一等地にでかい土地と屋敷が買えるじゃないか!」


「私に浪費癖はありませんからね、使い道の無いお金が貯まっていくんですよ。それに知り合いの道具屋に加工を頼んだお陰でだいぶ安く手に入れることが出来たんです」


「安くって…限度があるだろう」




 ルドルフの言う通り、まともなルートで手に入れたならこの国で最も地価の高い王都に屋敷が二・三件は建つだろう。伝を使って安く仕上げたとしても、値引きには限度がある。しかし、それに関しては私にとっては些末なことだった。




「いや、そんなことよりレイ!それがあればすぐにでもカズハを追って行けるじゃないか!何で黙ってた?」


「黙っていたわけではないですよ、ジル。奴等は転移を繰り返しながらアジトまで向かう可能性もあります。足取りを簡単に掴ませないように」


「?だから何だ?転移魔術を使えない俺たちだからこそ、すぐに行動に移すべきだ」




 ジルの言いたいことは理解出来る。数秒で遠くまで移動出来るのに対して、こちらは数日数ヵ月費やしてやっと辿り着くような距離かもしれない。行動に移すのに早いに越したことはない。


「迂闊に動いてしまうと相手にこちらの動きがバレてしまう。そのような事態になれば、アジトに辿り着く前にアジトは解散され、散り散りになってしまえば最後。完全捕縛は不可能です」


「…結局はカズハを犠牲にするのを厭わない…ということだね?」


「ヨアン…」


「悪いが、俺にもそう聞こえたぜ、レイ」




 どうやらカズハは此方に来て数週間で出会った者達の心に入り込んだらしい。









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