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青崎真司郎と借金

「……なあ、ごみ拾いってそんなに危険な仕事だったっけ?」


「ああ、危険だ危険。超ヤバイ。」


朝イチから絡んでくる堀川を俺は適当にあしらった。


「なんでそんなケガしたんだ?」


「ちょっと足滑らせてな。鉄が肩貫通した。」


「足滑らせただけで!? おまえうっかり死にかけてんじゃねえよ!」


「ああ、もう。堀川うるさい。」


「鉄が肩貫通って、それ学校来て大丈夫か?」


末高が普通に心配してくれることを俺は少し不思議に思う。


「大丈夫も何もこの街には治癒系の能力者だっているんだからこのくらい大丈夫に決まってんだろ?」


「は? おまえそれって、あの富士崎先生に診て貰ったわけ?」


「あー、確かそんな名前だったな。」


「おまえ! どこにそんな金あった!?」


……あれ? そう言われると確かに治療費って払ったっけ? 確か入学前の入院のときは前払いで払われてるみたいなこと言われたけど。


「あの先生ってそんなすごいの?」


「すごいなんてもんじゃねえ。この街で唯一治療系の能力を持っていて伝説の医者なんて呼ばれてめちゃくちゃ引っ張りだこなんだ。


それに富士崎先生に診てもらうには高額の報酬金がいるんだぜ!」


食い気味で堀川は説明した。要するに治癒系の能力者は極めて貴重で街中から需要があるわけだ。


「どんな治療されたんだ?」


末高が興味有り気に聞いてくる。

どうやら富士崎という医者はこの街では有名人、英雄みたいな存在らしい。


「どんなって、貫通した肩を塞いで後は通院を重ねて経過を見ながら自然の回復を待てって。」


あの穴が塞がれる感触は超絶怒涛の不快感だった。2度とごめんだ。


「貫通したのをそんな簡単に、やっぱすげえな。」


「富士崎先生かあ、どんな顔してんだろうな。」


などと珍しく女の子以外の生き物に興味を示している2人を他所に俺は治療費の支払いについて考える。


……というかまあ、考えるまでもなく答えはわかってるんだけどな。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


放課後、俺はまたも生徒会室を訪れた。

ドアに手をかけたところでノックを思い出して手を止めた。


危ねえ。堀川の言うようにうっかりで死にかけたぞ今。

コンコンと2回ノックすると中から星宮が出てきた。


「よっ。」

「青崎君。どうぞ、中に入って。」


促されるままに俺は生徒会室の中に入っていく。


「罰則の奉仕活動ってもう終わりでいいのか?」


「んー、そうね。そのケガじゃしょうがないわね。」


よっしゃあ! 理不尽な罰則がやっと終わった! 俺は自由だあ!


「ケガが治ったら最後の1日分やりましょうか。」


まだ解放されてなかった……。こいつどんだけ奉仕活動好きなんだよ。


「で? 今日はその確認に来たわけ?」


「ん? ああ、そうだ。星宮さ、もしかして俺の治療費払った?」


すると星宮はため息をつく。


「やっぱりそのことね。 あれはお礼というか私のせいでケガしたんだからせめてそのくらいはしないとってね。」


「いやいや悪いよ。 富士崎先生?だっけ?あの人に診てもらうには結構金がかかるんだろ? それにおまえのせいでケガしたんじゃねえし。」


「いいの! 自慢じゃないけど私お金には余裕あるし。」


「いや、自慢だろ。 てか生徒会ってそんなに金が貰えるもんなのか?」


ぶっちゃけどのくらいの資金が与えられているのか気になるところだ。


ランキングシステムは自分より上のランキングのやつを倒したほうが多くポイントを得られる。

この点からして資金が貰えるような上位立場であるやつがランキング戦を多く申し込まれたり、日常生活のあらゆる場面で目の敵にされたり、昨日の星宮のように突然襲われることは容易に想像できる。


では、そのリスクを背負ってでも皆が欲しがる上位ランカーの称号には何がある? 今のところ俺がわかっているのは金が貰えるというくらいのことだが。


「んーひと月に一回は富士崎先生に診て貰えるくらいかな?

でもこの街の学生は補助金で生活費分くらい余裕でもらえちゃうからお金って使い道わからないんだよね。」


……なんかセレブがいるんだけど。こちとら生活費もカツカツで過ごしてるってのに。


「まあでも、金は絶対返すから。少しずつ。」


「いや、いいって。」


「絶対返すから!」


俺は押し切るように強く言った。すると星宮はクスクスと笑い出す。


「なんだよ、貧乏人を笑うのはなかなか悪趣味だぞ?」


「んーん、なんでも。じゃあ待ってるわ、いつまででも。」


「な、なるべく早く返す努力はします……。」


そう言うと星宮はまた笑った。

裏表ない純粋なその笑顔を見ているとこの街も悪いことばかりじゃないかもしれない、なんて大袈裟なことを思った。

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