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青崎真司郎と未知なる炎

「ーーーなら尚更さっさと仕事を終わらせちゃおう。 この街の能力者は大したことなさそうだしね。」


「動くな。」


大きなビルを見て呟くと、男は7人の警備隊に囲まれた。彼らの表情はいずれも硬く、自分たちに課せられた任務の重さを物語っている。


「その感じだとさっきの自称上位ランカーは本物だったわけだ?」


男の挑発に警備隊の表情はさらに険しいものになる。


「貴様は完全に包囲されている。痛い目を見たくなければ無駄な抵抗はやめろ。」

「御託はいいから早くおいでよ。」


それとも、と男は言葉を続けて笑う。


「この人数差ハンデがあっても怖い?」


挑発的なその態度に触発された警備隊


「侵入者の身柄を直ちに拘束せよ! 戦闘開始!!」


号令とともに警備隊は思い思いの能力を発動させる。遠距離射撃のような能力のもの、直接打撃系の能力のもの、何かを生み出す能力のものーー


「それら全ては魔法の下位互換に過ぎない。」


男は愉快に指を鳴らす。まさしく戦いを楽しむ様な素振り。狂人のそれ。


「防御魔法第4術 完全拒絶範囲網ーー。」


刹那に呟きを放つと、男の身体を色のない壁が包む。正しく男は世界を拒絶し、また世界も彼を拒絶する。

四方八方から放たれた攻撃はその壁にぶつかりーー全て消え去る。


「ば、バカな。こんなことがありーー「はい、さようなら。」


狼狽える1人の眼前には男が立っていた。目は笑っている。

その狂気にまみれた瞳の中に映り込む自身の姿を見てーー


「ぁーー。」


諦めたように小さく声を漏らす。その姿を見て男は満足そうに手を伸ばす。


狂人の瞳に首を落とす自分を見て、1人が死ぬ。


「き、貴様ぁああ!!」

「そう慌てるなよ。みんなみんな、可愛がってやるからさ。」


男は頬に飛び散った返り血を舐めて、そう言った。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「……やった、のか?」


戸惑う声は未知の炎を放った張本人である青崎だった。


炎に押し上げられた草戯原はそのまま力なく地面に叩きつけられて動かない。

訪れた沈黙の中には色んな感情が蠢いている。


ーー俺はやったのか? 俺がやったのか? 何をやったのか?


右手を見つめてもいつもとなんら変わりなく、目を瞑ってもまぶたの裏にはもう自分の姿はなく、闇があるばかり。


「ーーッ」

「白松?」

「青崎……。」

「ーー」


青崎を見る白松の顔は凄んでいく。その瞳には語らずとも分かる怒りがこもっていて青崎は息を呑んだ。


「おまえの奥の手ってのはこれか? 奥義ってのはこれのことを言ってたのか?」

「いや、違う。俺が考えてたのはーー」


「バカにすんじゃねえぞ、コラァ!!!」


それは怒号であり悲痛の叫びであった。


「騙してたんだな。いや、当たり前と言えば当たり前だ。おまえのその強さはGランクの能力者の強さじゃない。そんなことは最初からわかっていたはずなのにな。」


その言葉に青崎は白松の表情の意味を知る。


「ち、違う! 白松、俺は本当にGランクのーー」

「じゃあさっきのはなんて説明するつもりだ?」


そう言われて青崎は言葉を詰まらせた。その答えは青崎自身が皆目見当もつかない。

だが、それをそのまま口にしたところで今の白松には届かないとことはわかった。


「ーーー」

「どうしたの2人とも?」


話に入ってきたのは星宮だ。その体に多少の傷が伺えるが無事そうな彼女は、2人の間に流れる空気を掴めずに不思議そうに問う。


「ーーほら見ろ、答えられないってのはその通りってことだろうが。」


白松は吐き捨てるように言うと青崎に背を向けた。


「ま、待てよ白松!」

「青崎真司郎ーー次会ったら殺す。」


その哀しげな表情を前に青崎はただ力なく地面に顔を伏せた。

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