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青崎真司郎とラストラン

「なんだ? 究極奥義って。そんなもんあるなら最初からしてるつーの。」


青崎の提案を根本から白松は否定する。自信ありげな様子で言い出したものだからどんなすごい策かと期待してみれば、小学生のごっこ遊びのようなことを青崎は口にした。


確かにまず前提として白松も青崎も既に手札を出し尽くしていて、トドメとなる起死回生の1発が必要な場面ではある。

だがそれと究極奥義うんぬんはまた別の話だ。


「ないなら作ればいい。」


当たり前のことを当たり前のように口にする青崎に、白松は一抹の不安を抱く。

(大丈夫かこいつ、危機的状況に立たされてついに頭がイカれたんじゃ……)


そんなことを考えている白松を他所に青崎は淡々と自分の考えの詳細を語り出す。


「一応確認だけど白松、おまえは鉄ならなんでも自在に操ることはできるんだよな?」


「質量が限界値の範囲内ならな。」


白松が答えると青崎はニヤリと笑う。この状況において逃げるということを一切考えず、自分が勝つためのシミュレーションを繰り返し、笑う余裕のある青崎。その笑顔を見た途端白松に身震いが起きた。


能力こそ強力なものではない。しかしやはり目の前にいるこの男はバケモノ級に強い、と改めて体が認識させられた。


「よし、なら場所を変えよう。」

「場所? どこにだよ。」

「東公園に。」


そういえばさっきの電話でも青崎は逃走場所に東公園を指定した。

東公園といえば特徴がないのが特徴というか、大きくないし遊具ほとんどないし正直人が訪れているところを見た覚えがないようなガランとした公園だ。


確かに人がいないという点においては戦闘場所としていいかもしれないが、他に優れた点が思い当たらない。

ましてやそこに移動することと究極奥義の開発など繋がるはずもない。


しかし、青崎は確かに自信に満ちた顔をした。そこに勝機を感じたのは確かだ。


「……わかった。 東公園だな?」


走り出そうとすると体が拒否する。もう無理だ、限界だというメッセージを痛みに変えて伝えてくる。

背後からは暴走した草戯原が当たりのものを破壊しながらゆっくりと近づいてくる。電柱は倒れ、民家はひび割れ、信号機は落下し、アスファルトとはその振動をミシミシと伝える。鼓膜を刺激する草戯原の奇声は少し気を抜けば正気が乱され、吐き気を催すだろう。


(もう俺らに残された道がこれしかないんだったら、信じるしかねえだろ。能力適正値Aの化け物を喰らうために能力適正値Gの化け物が編み出した策を。

俺が大好きなジャイアントキリングが起きるのを!)


「こいつを倒せばいよいよ持っておまえと龍王天理界の関係は綺麗さっぱりだな。」

「しょうもない作戦だったらぶっ殺すからな。青崎ぃ!」

「おまえに俺が殺せるとでも?」


……こんの野郎、クソイラつくぜ。

白松はフッと吹き出してそんなことを思う。


「よっしゃ、ラストランだ白松!」


重い体を気力で引きずるように、2人は走り出した。

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