青崎真司郎と本気
「断る? ククク……断るねえ。拒否権があると思ってんのか?」
言うと草戯原は深く長く息を吸いはじめる。
「まずは鼓膜をぶち破ってやるよ。」
体を反りあげて息を限界まで吸いきった草戯原は勝利を確信したように言う。そしてニヤリと笑うと反っていた体を勢いよく起こしながら声をあげ……
「ぐぅ!?」
その瞬間、思い拳の一撃が草戯原のみぞおちを強襲し、吸い込んだ空気も吐き出してしまう。痛みから目を血走らせた草戯原の目に写り込んできたのは自身の攻撃で動けないでいたはずの男だ。
「貴様……なぜだ、平衡感覚を奪い身動きの取れぬようにしたはずなのに?」
青崎はその言葉に反応せずもう一撃入れようとゆっくり拳を引く。
「少し舐めすぎたか。効果が予想より早く終わったようだ。ならば今度はもっと強くかけてやろう。」
草戯原はすうっと息を吸い目を見開く。
「おまえはあいつを殺した後でゆっくりと遊んでやるよ!!!」
今度は平衡感覚だけでなく神経を震わせて麻痺状態になるような一撃を青崎へ放つ。これでしばらく青崎は動けず、白松が無残に殺されるのをただ見ることしかできない、はずだった。
しかし青崎はなんの変化も見せず引いた拳を勢いよく草戯原の腹へと放つ。無抵抗なまま2発のパンチを受けた草戯原は驚愕の表情を浮かべて背中を丸めた状態で2歩ほど後退する。
「なんで……なんで……!? なんで立っていられる? 脳を神経を麻痺させたはずだ! 僕様の音は確かに貴様に!!」
「ん? あーえっと、慣れた?」
「慣れた? 僕様の攻撃をたった数秒で慣れたというのか?」
「なんか、ごめん。」
軽く合掌して謝る青崎に草戯原は表情を一変させて、大声をあげて笑い出した。
「おもしろい、貴様もただの雑魚ではないようだな。いいだろう! もう遊びなんてことは言わない。2人まとめて僕様が始末してやる。貴様にも現場を見られてしまっているわけだしな。」
「だからさあ、おまえと俺らにそこまで差があるかって言ってんだろうが!」
青崎が先手を取って殴りかかる。
草戯原は先ほど以上のキレを見せて避ける。
すぐさま草戯原もパンチを繰り出すが青崎がそれをさばいて軽々とした身のこなしで体をねじりながら軽くジャンプして草戯原にかかと落としをお見舞いする。
草戯原は地面に叩きつけられると青崎の左足を掴み、起き上がりながら背負い投げの要領で青崎をぶん投げる。
そのまま倒れた青崎に追い打ちをかけようと近づいてきた草戯原の顔を蹴り上げて青崎ははね起きる。
「伏せろ青崎!!」
後ろから白松の声がして伏せると頭上を白松お手製の手裏剣がいく。草戯原はそれを避けるが手裏剣は軌道を変えてまた襲いかかる。
すると今度は避けずに草戯原は手裏剣をキャッチする。
手からはドボドボと血が垂れるが草戯原は悲鳴の一つもあげないで平然としている。
「……正気かよ。」
白松が驚いていると草戯原が息を吸う。
「白松!! 耳塞げ!!」
「バン!!!!!!」