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青崎真司郎とシングルアラサー

上位ランカー戦から一夜明けるとお祭りムードだった街もいつもの落ち着いた雰囲気を取り戻し、いつもと変わらぬ1日が始まった。


とはいえ俺はいつもと変わらぬとはいかず、授業中もずっと考え事をしていた。おかげで放課後桜浜先生に呼び出し食らった。


堀川についた嘘と同じものを末高にもついた。末高は堀川みたいな単純思考ではないから若干消化しきれてないような顔をしていたが、それでも俺に何かを聞いてくることはなかった。


「いいなぁ~桜浜ちゃんと2人きりかあ。なんか青崎ばっかりいい思いしてない?」

「まあ桜浜ちゃん顔とスタイルはいいからな。年上の女が出す色気ってたまに騙されたくなる。」

「けど性格に難があるから……ってそっち系の呼び出しじゃないから。」

「おお、ノリツッコミ。」


堀川は感嘆じみた声をあげる。確かにノリツッコミってバラエティ番組でもあんまり見ないよな。


「でもほんと、最近青崎ばっかモテ始めてる気がする。やっぱ転校生ってモテるのかな。」

「それはラノベの読みすぎな。というかモテてないから。」

「てめえ! 今更言い逃れようとしたって無駄だぞ! なあ、末高?」

「悪い。俺今日5組の森永さんに昇降口裏の渡り廊下に呼び出されてるからもう行くわ。」

「この裏切り者!!!」

「じゃあ、俺も職員室行くわ。」


「ま、待って! このタイミングで1人にするか? おまえら酷すぎんだろぉ!!」


わあわあ喚く堀川を他所に俺は職員室に向かった。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「さてさてさーて、てさてさてーさ。青崎君、呼び出された理由は心当たりあるよね?

先生に何か言うことはない?」


ニコニコとした桜浜先生が椅子に座ったまま俺に言った。服に押さえつけられてもなお強調される胸と、クロスした太ももからは確かに大人の色気がむんむん醸し出されている。


「今日は香水控え目ですね。」


言いたいこと、と言うよりは思ったことを口に出した。


「そーゆーこと聞いてないわ! その言い方だとあたかも香水きつめの時があるみたいだろう?」


桜浜先生は必死でツッコミを入れる。いや、きつめの時があるというか、週3日ぐらいのハイペースできついです。……さすがにこれを口に出すのはやめておこう。傷口に塩だ。


「そ、そういう君こそ星宮さんと付き合ってるという噂が生徒たちの間で広まっているようだが?」

「え、マジっすか。」


それは面倒だな。星宮の評判を下げないように事態を収束させておかなければ。


「本当のところどうなんだ? 星宮のことどう思っている?」

「星宮はすげえいい奴だし、顔も可愛い。魅力的な女の子だと思いますよ。あとたまに怖い。」

「……クソリア充があ!!!!」


突然桜浜先生が発狂し始めた。


「せ、先生!?」


「青春か? 青春なのか? 青春ですね? 青春だろうよ? 青春青春青春青春青春青春!!!

近頃の高校生ときたらモラルもクソもないベタベタベタベタしやがって!!!ハグもキスもその先も!!!てめえらにはまだ早いってんだよ!!高校生ってのはな!!!好きな人とは交換日記したり、頑張っても手を繋ぐぐらいだろうが!!!

最近のは破廉恥なんだよ!!!」


「いやあんたさすがにそんなに古くないでしょ? それ今の親世代の話でしょ?」


「くそがあ!リア充リア充リアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリア充ー!!!世界中のリア充破滅しろぉお!!!」


だめだこの人完全にぶっ壊れた! ってか酒でも飲んでるんじゃないだろうか。

すると桜浜先生は血走った目で俺を睨みつけ、両手で俺の肩を抑えた。


「現在空想2017年、スマホだのなんだのが発展してコミュニケーションが格段に広がった今は私たちが高校生だった頃より恋愛事情も科学の進歩とともに変わっているのかもしれない。

だが1つ人生の先輩として1人の女として忠告をしておこう。 どんなに強い能力者だろうと女の子は女の子だ、怖いものは怖い。

……手を出すタイミングだけは、早まるんじゃねえぞ。」


桜浜先生はグットポーズをするとそのまま職員室を出ていった。いや、先走ってるのは先生の方だから。1人でかっ飛ばして話片付けちゃってるから。

……というか俺本当になんで呼び出されたんだろう。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


学校を出ると俺はスマホを取り出す。先生の言う通り科学はどんどん進歩している。特にこの街の科学技術は世界の最先端を行っているらしい(授業で習った)から生活の変動もめまぐるしいのかもしれない。


俺は白松の連絡先を表示して電話をかける。


今日学校が終わってから話をしようという約束になっていたのだ。

そういえばだが、白松は高校に通っていないが17歳になったばかりで実質的には俺たちの1学年先輩らしい。

この街には小学も中学も高校も3つずつしか存在しない。なのにこの街の人口の5割は未成年なのだ。そんなの生徒が莫大な数になるのでは?と実際俺も入院中に思っていたのだが、ランキングが物言うこの街では学校など行く必要がないという考える人が多いようだ。


「……出ないんだが。」


なんだよあいつ。暇人だからいつでも出れるつってたろうがよ。

心の中で白松に悪態ついていると折り返しの電話がかかってくる。


「おい、おまえいつでも出るつったじゃ……」

「悪いな青崎! それどころじゃなくなったみたいだ。」


走っているのか白松は息を乱しながら余裕のない声で言う。


「どうした? 何かあったのか?」

「んあ? まああれだ。ちょっと昔のお仲間たちが俺を消しにきた。」


そう言われて1人の男の顔が浮かぶ。白松と初めて出会ったときに白松に命令を出していた男。


「おまえ今どこに?」

「移動中だ! 目印になるとこなんてねえよ。」

「東公園わかるか? そこに逃げろ。俺も落ちあう。」

「助けなんていらねえ!これは俺が始末つけることだ!」

「いいから東公園だ! 切るぞ?」


そして俺は電話を切ると東公園へと走り出した。

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