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青崎真司郎とはじめの一歩

「龍王天理界を辞めた!?」


俺は今病室にいるのだということなどすっかり忘れて大声を出した。

俺を驚かせた張本人である白松はキョトンとした顔をしている。


「なんだよ。そんなに驚くことか?」

「いやだっておまえいきなり、はあ!?」


俺が突然のカミングアウトにあたふたしていると横で冷静な顔している星宮が「でしょうね」とわかっていたかのようなリアクションをする。


「星宮おまえ、知ってたのか?」

「知らなかったけどそうするだろうとは思ってた。もともとこいつには組織に対する忠誠心とか責任感とかがないもの。

それに、今は龍王天理界なんかより興味があるものができた。」


そうでしょ? と星宮は見透かしたように言った。


「さすが。女は勘が鋭いっての、アレほんとだな。」


と笑いながら白松は右手にダンベルを持ちだす。 おいコラ、ケガ人が筋トレおっぱじめてんじゃねえよ。


「あのー、つまりどういうことですかね?」

「……私、青崎君って結構頭いいんだと思ってたけどそれを凌駕する鈍感さなのね。」


星宮がため息をつきながらいう。 いや、勝手に期待してがっかりされるのはさすがに理不尽過ぎではないですかね、女王様?


「俺はもともと強い奴をどんどん倒していくために龍王天理界にいた。龍王天理界を目の敵にしているやつは腐るほどいるからな。 だがもういい。」


「もういいって?」


「おまえを見つけた。俺よりも能力が弱い癖に強い奴を。その途端、自分がやっていることの無意味さに気づいちまった。」


淡々と語る白松の顔つきはどこかしがらみから吹っ切れたようなスッキリとしたものに思えた。それは何か踏み出そうとしている表情だ。


「ーーーそっか。 まあつまりあれだな。俺たちもう友達ってことだ。」


「ああ、そうだな……へ?」


気の抜けた声をあげたのは白松だけでなく星宮もだ。 何おまえら、いつの間に仲良くなったの?


「ちょ、ちょっと青崎君。今の流れからどうしてそうなったのかしら?」


「いやなんと言うかさ、俺も1ヶ月前学校に行く時って意外と緊張しててさ。知らないことばっかだしめっちゃ警戒してたんだよ。

けどバカ2人を始めクラスのみんなが温かく歓迎してくれたおかげで今そこそこ楽しいんだ。なんつーかうまく言えないけど今のおまえにもそーゆーの必要なんじゃねえかなって。」


言葉はまとめられなかったものの、自分の経験を元にした考えを真面目に披露したのだが、白松は鼻で笑った。


「バーカ。俺はおまえみたいな弱虫じゃねえ。これまでだって1人で強くなってきたんだ。おまえのやろうとしてることは余計なお世話以外のなにでもない。」


ただ、と白松はダンベルを置きながら言葉を続け、握りこぶしを俺に向けて突き出す。


「友達って書いてライバルと読むそれなら話は別だ。」

「……はは。 クソ脳筋野郎だな。」


俺も握りこぶしを突き出して白松の拳にぶつける。


「俺のライバルは相当きついぞ白松。」

「吐かせ、すぐ追いつけないほどの実力差をつけてやるよ青崎ぃ。」


病室に差し込む日差しが2人の拳を照らした。窓から伸びる光の線はまるで空へと続く栄光の道のようであった。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


薄暗い建物の中に片膝ついた男たちがざっと数百人。


金色で描かれた龍王天理界の紋様が数百人分同じ方向を向いて連なる景色がその場の雰囲気を、数百人の前に1人椅子に腰掛ける男の威圧感を物語る。


「全く、最後まで世話の焼けるバカだ。」


男は手に持ったタバコを投げ捨てると立ち上がり、ゆっくりと前へ歩みを進める。椅子から扉への直線だけを綺麗に空けて並ぶ群勢の中を行く。


「簡単に辞めるなんてことが出来るわけがない。おまえは深くまで知ってしまっている。」


男は首の関節を鳴らし、少しだけ口元をニヤつかせる。

そして新たなタバコを取り出して火をつける。 その一連の行動だけでその場の空気が張り詰める。


「行くぞおまえら。龍王天理界 第8隊 白松副隊長のお別れ会だ。」

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