【 ナイトパレード 】
マゾエルの尽力により 全員で無事バルプラに乗る事が出来た俺達は、先程までは見上げていた空にやって来ることが出来た。
バルプラに乗り込んですぐに マゾエルが「マリアちゃん、もうサディちゃんを元に戻しても大丈夫ですよ」と言い、それを聞いたマリアがウサクラさんの頭をパコっと叩くと 大きなウサクラさんが汚い音を立てながらゲップをした。
ゲップをしたウサクラさんはみるみる小さくなっていったが、反対にサディスはみるみる大きくなっていき元のサイズへと戻った。
「おっ、戻った戻った!ギャハハッ、小さくなって見上げるマリアもかわいーけど、やっぱ胸に収まるちっちゃいマリアが1番だな!」
「…えすねぇ、くるちぃ」
元のサイズに戻ったサディスは嬉しそうにマリアを健康的で大きな自分の胸元へムギュッと押し込んだ。
その後なぜかサディスはマゾエルに サンキューと言いながら顔面パンチをプレゼントし、マゾエルは折れた鼻を嬉しそうに自己治癒していた。
そんな一幕もあったが、バルプラは順調に浮遊し すでに打ち上げ花火より少しだけ低いほどの高さまでやってきていた。
何度かバルプラに乗った経験のある俺的には、この高さが1番おすすめ。
少し上に花火、下はパレード、その中間。
ここがベスト。
さらに上に行くと花火を見下ろす事も出来るのだが、それだとパレードが見えなくなってしまうし 低すぎると地上と変わらない。
目線の高さに花火が見える場所も悪くはないのだが、もう少し暗くなってからは星も綺麗に見えるようになるので 花火と星を同時に見上げられるここが最強だと俺は思っている。
「わぁ〜、綺麗ですね。あっ マキちゃん見て見て!学園が見えるよ。こうやって改めて見ると、わたし達の通ってる学園って本当に大きいね」
普段は控え目で はしゃいだりする姿を見せる事のないラピスだが、バルプラに乗るのが初めてだったらしく 外を指差しながらマキナと景色を楽しそうに見渡している。
その様子を穏やかな顔で眺めるデュラン。
デュランも普段は口数が多くはないし、人と関わる事をあまり好んでない様子だったので 俺もそこまで親しいわけではなかったが、今日を切っ掛けに少しは仲良くなれたらいいなと俺は思っている。
数少ないMSSレベル3同士でもあるしね。
「むむむむむっ!くそっ、なんでこんなに万能なんだよ」
そんなホッコリした様子のラピス達をよそに、少し離れた所でセルが上を向きながら 悔しそうに唸っていた。
マリアを背中から降ろしてサディスに預けた後、俺はセルに近付いて行った。
「バルプラに乗るといつもそれやってるけど、いい加減 諦めたら?もう高等部だぞ」
「ばっかタクト、高等部だろうが米寿だろうが俺達は男だろ!くっそぉ、なんで俺は透視や千里眼じゃなく 記憶のアイデンなんか身に付けちゃったんだよ。あぁ子供の頃の無垢な自分を殴りたい」
俺達って言うなよ、達って。
頭はいいのにアホなセル。
何をそんなに必死にやっていたかと言うと、そう…お察しの通り。
俺達より上を飛んでいるバルプラに乗った女性の下着を覗こうとしているのだ。
しかしバルプラはそんな不道徳を許すはずがなく、下から覗こうとしても 光が反射したようになり中が見えない。
どの角度から見ようとしても 何故かうまく光の反射で見えないのだが、セルは諦めがつかないらしく バルプラに乗るたびに毎回 角度を変えたり体勢を変えたりして無駄な努力に精を出している。
「透視や千里眼のアイデンを持っていたら、どう使うおつもりなんですの?」
「そんなの決まってんじゃん。上を見上げて男の夢という天国を覗く・・・げっ、ハイナ!?」
うん。俺は気付いてたよ。
めちゃくちゃ怖い顔をしながらハイナさんが近付いて来てた事。
「生徒会として相応しくない以前に、人としてゲスの極みですわね。選びなさいゴミクズ。今すぐ死ぬか、生まれて来た事を土下座して謝ってから死ぬか」
その後セルは「まだキスもした事ないのに死ねるかー!」と叫びながら逃げ回っていたが、悲しい事にここはバルプラの中。
普通のバルプラよりは広いとはいえ逃げ切れる訳がなく、ハイナさんに捕まったセルはこんがり燃やされた後 イリアに回復させてもらっていた。
普通のバルプラでも飛んだり跳ねたりしても割れる事はないが、内側から火の魔法なんか使ったらさすがに割れる可能性があるのに 俺達が今乗っているバルプラはまったくの無傷だ。
さすがマゾエルだと思い、感心しながらマゾエルの方を見てみると 燃やされてグッタリしているセルの事を羨ましそうに見ていた…。
「ねーみんなっ、ナイトパレード始まるよっ!下見て下!」
マキナの発言で騒がしかったバルプラ内が一旦落ち着き、みんなで下を見下ろした。
空はすっかり暗くなり 月明かりが仕事を始めようとしていたが、その役目はナイトパレードが全て奪ってしまった。
昼間のような明るさではなく、ナイトパレードらしい落ち着いた明るさが島全体を輝かし始めた。
徐々に人工的な光が増え始め、地上に星の海が広がっていく。
広がり続けるイルミネーションが点灯されていくと、それまでは規則正しく打ち上げられていた花火達も勢いを変えた。
BGMのような花火は少しずつ音と頻度を下げ、辺りはだんだん静かになっていく。
そして花火の音は消え 星の海のような静かなイルミネーションが完成した。
揺ら揺らと光が揺れている。
上も下も綺麗な星の海が広がっており、先程までの花火の轟音が消えた事も相まって とても静かで幻想的な空間が出来上がった。
ーーー・・・
静かな夏の夜、綺麗な光の海。
その幻想的な景色を眺めていると、ふいに地上の光が全て消えた。
そして1つの光が地上から空へと打ち上げられた。
暗闇の中、たった1つ打ち上げられた光を目で追っていくと 空高く舞い上がった後 今までで1番大きな花火が島に光を浴びせた。
その花火を合図に、次々と盛大に花火が打ち上げられていく。
地上では先程の静かな雰囲気は消え去り、太鼓やラッパの音が鳴り響き、賑やかでカラフルなレーザービームがパレードの行進に合わせて乱舞している。
「ド派手なんてもんじゃないな。さすがにテンション上がるな」
静寂から一気に最高点の盛り上げを見せるナイトパレードに、俺の心も踊っているように高鳴った。
「なんか飛んでくるよっ!なにあれ、かわいい!」
マキナが指を差した先には、花火と同じように打ち上げられた光の玉が浮かんでいた。
光の玉は空中で静止した後、弾け飛び 小さな光の粒が無数に広がって行った。
その粒は空に浮かぶ沢山のバルプラに向かって飛んでいき、俺達の乗るバルプラの方にも飛んできた。
すぐ目の前まで飛んで来た光の粒は、よく見ると小さな妖精のような形をしており バルプラを囲むように広がると可愛らしいダンスを披露してくれた。
ダンスが終わると小さな妖精達は手を取り合い、こちらへ向けてお辞儀をした。
俺達はその可愛らしいダンスと可愛らしいお辞儀に拍手を送ると、妖精達はバルプラから少しだけ離れ くるくる回った後 綺麗な花火に姿を変えて夜空に消えて行った。
学園島が学園島になってから毎年行われているカカカ祭りは、毎年違う演出が用意されている。
それを楽しみに、年々増える観客達。
屋台巡りをしている時にも沢山見かけたが、色んな国の人が集まってきているのが一目でわかった。
寒さが厳しい北の大陸、エルスノウ大陸の人。
今でも鉱山や砂漠が多く どこの大陸よりも暑い南の大陸、セルの故郷でもあるワインベルク大陸の人。
そして世界最大である東の大陸、俺やイリアの故郷でもあるセントクルス大陸の人。
リードイスト王の言っていた真の平和が何かはわからないが、来年も再来年も 増え続けていく観客達の一員になって、ここにいるみんなと一緒にこのカカカ祭りを楽しめたらいいなと俺は思った。
その後もナイトパレードは様々な演出が繰り広げられ、驚きと感動で俺達も忙しいくらいに楽しんだ。
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