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光のタクト  作者: セカンド
世界を変える大雨
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【 答え 】


「サラ女史は今のこの世界をどう思う?」


大きな笑い声を上げながら一方的にサラへ話し掛けているジャスティンの隣で街を見下ろしていたリードイストが、視線を街に向けたままサラへと質問をした。



質問をされたサラは 一度リードイストの方へと顔を向けた後、リードイストと同じ様に街を見下ろした。



「小さな争いや魔獣被害などはありますが、戦争が日常的に起きていた頃や選別の大雨が初めて降ってからの数年に比べれば平和だと思います」



展望台から見える街にはセントクルスの住民だけではなく、他国からも沢山の観光客が来ており 祭りの活気に一役買っている。


ほんの十数年前まではお互いが命の取り合いをしていたとは思えない程の友好的な関係ができおり、今ではお互いが尊重し合い 天災や魔獣の被害があれば助け合うのが当たり前になっている。


この形が出来上がったのも、選別の大雨というキッカケがあったからという事は言うまでもない。


「平和か。なるほどね。では 英雄サラ・ストイクト、この平和はいつまで続くと思う?」



質問に答えたサラへ視線を移したリードイストは、更に質問を続ける。



「・・・・・」



リードイストからの追加の質問を受けたサラも 視線をリードイストへと移し、質問の意図と意味と返答を考えたが 結局答える事が出来なかった。




「そう。それが答えだよ、サラ女史」



「・・・・・」




答えられない事が分かっていたかのような言葉を掛けるリードイストの表情は柔らかく穏やかなものであった。



サラにはリードイストの言葉の意味も、穏やかな表情の理由も理解出来なかった。



視線をサラから外の風景へと戻したリードイストは優しく穏やかな顔で民達を眺めているが、髪の色と同じ綺麗な薄紫色の瞳の奥には 燃えるような意志の炎が宿っている。



その事はサラにも感じ取れていたが、見抜く事までは出来ていなかった。



ソガラムがリードイストを警戒しているうえ、今のやりとりでサラ自身もリードイストが何かを企んでいるのはほぼ確実だと確信したが、それがどの様な物なのかが見えてこない。



頭で考える事は学園島でも出来る、と切り替え 先程の話の切り口になった街にヒントがあるかもしれないと考えたサラは 再度 祭りで賑わうセントクルス中心街へと視線を移すが、そこには楽しそうに笑う人達がいるだけだった。







穏やかだが強い意志を感じさせる顔で街を見下ろすリードイスト。


ソガラムが懸念している不透明な物の正体を見つけるヒントを1つでも手に入れるために街を見渡すサラ。


賑わう街と、無表情だが真剣に街を見渡すサラを交互に見ながら楽しそうに笑うジャスティン。



奇妙ではあるが 緩やかな時間を過ごしていた3人であったが、突然慌てだしたジャスティンにより その時間は終わりを迎えた。




「っ!?陛下っ、また地震が来ます!サラ 結界で陛下と自分を守りながらここで待機していてくれ!俺はすぐに下へ行って皆を守」



「待てジャスティン。お前もまだここを動くな。地震の大きさと時間はわかるか?」



すぐに動こうとしたジャスティンであったが、言葉の途中でリードイストに制止されてしまった。



「えっ?大きさは先日の地震より小さめですが時間はおそらく後2分もしないうちに来るかと…。それより、動くなとはどういう事ですか?」



ジャスティンの予想を聞いたリードイストは何かを考えるように顎に手を当て、数秒だけ沈黙した。



「良い機会だ、サラ女史は私を探りたいようだから答えを見てもらおうと思ってね。ジャスティンは地震が来るまでここを動くな」



なにを呑気な事を言っているのだ、と文句を言おうとしたジャスティンであったが リードイストが睨みつけた事で動きを止め、地震が来たらすぐに人々を守る事が出来るように魔力を練る事に集中し始めた。




「サラ女史、下を見ていろ」



リードイストの考えを探るのもサラの仕事であったが、何一つ見つけられず あまつさえ観察対象のリードイスト本人にその事を気付かれてしまったサラであったが、誤魔化す事も動揺する事もなく リードイストの言う通りに街を見下ろした。



探っている相手が答えを見せると言っている。


サラは頭を切り替えてリードイストの思惑に乗り、その答えというものを観察する事にしたようだ。



しかし見える景色は先程と変わらず 賑わうセントクルス中心街。


答えどころかヒントにもならないと思い切り捨てた物や者しかなかった。



「・・・・・」



なにか一つでも情報を持ち帰りたいサラは 瞬きの時間すら惜しみながら街を見回していたが、何も得る事ができないまま その時は訪れた。



「来るぞっ!陛下、俺はすぐに下の人々を守りに行きます!サラは陛下とここで待っててくれっ!」



ジャスティンは大きな声でそう告げると 展望台自体に魔力を流し、建物ごと強化した。



その直後、地鳴りと共に大きな揺れがセントクルスを襲った。



「サラ女史、見ているか?」



「・・・・・」



地震自体は大きな揺れであるが ジャスティンのおかげで展望台の揺れは立つ事も歩く事も出来るほどに小さくなっていた。


しかしサラは、そもそも揺れの事など気にしておらず微動だにせず街を見回していた。



中心街は楽しげな雰囲気から一転し、逃げ惑う人々で溢れていた。



「サラ女史、貴女が先程まで見ていた平和が終わってしまったな」



リードイストの言う通り、逃げ惑う人々の表情は当たり前だが笑顔など無く 泣いたり喚いたりしており、この場面を見ただけならば平和とは無縁の景色であった。



だが展望台を飛び出したジャスティンが10秒程で中心街へと辿り着き、地震で混乱する人々を囲うように大きな結界を張ると 結界の中では揺れが収まり安心した顔の人々がお互いに怪我の治療などをし始めた。



それからすぐにセントクルス王城の方から結界師達が20名程 飛行魔法で現れ、街を覆う結界を張り 地震が収まる前に揺れを抑え込んだ。




その後、地震自体が収まり 結界が解除されると人々からはジャスティンコールが響き渡った。



〝ジャスティン様ぁー、ありがとうー〟


〝ジャ、ス、ティン!ジャ、ス、ティン!〟


〝何が起きてもあなたが居れば安心よっ〟


〝いつもいつも本当にありがとうございますっ〟



各々が感謝の言葉を口にし、被害の少なさと身近に安全を守ってくれる存在がいる事に感謝をした。



「皆様、助けが遅くなってしまい申し訳ありません。私の命がある限り皆様を守る為に力を尽くしていきますが、及ばぬ所も多々あります。セントクルスの皆様、それに他国の皆様、及ばぬ私にいつも力を貸して頂き本当に感謝しております。今回も皆様がお互いを気遣いながら避難して下さったおかげで被害も少なく済みました。ありがとうございます」



先程まで馬鹿笑いをしていた男とは思えないほど謙虚な姿勢で民衆に声を掛けるジャスティンに、民達は拍手を送り 隣り合った他人と肩を抱き合いながら歓声を上げた。



「怪我をされた人や被害が出た建物は我々が責任を持って対処致します。それと、もしまた余震などがあった場合も軍が完全に防ぎますので、皆様はどうか安心してお祭りを楽しんで下さい。皆様の笑い声が我々の力になります。是非とも楽しむ事で協力をお願い致します」



ジャスティンの気遣いに応えるように民達は盛大に盛り上がりながら祭りは再開された。








「サラ女史。貴女が知りたがっていた答えは今の一連の流れの中にある。今のを見て貴女がどう判断するかは自由だ。それに私は私がやると決めた事は必ずやり遂げる。私の力は絶大だ。それを知っているソガラムが警戒するのも理解はできる。だが、これだけは間違わずに覚えておいてくれ、私が歩く道は必ず正しい未来へと繋がる。貴女は聡明な人だ、私が全てを言わずとも何が正しく何が間違っているかを正しく見極めてくれると期待しているよ」




「まだ不透明な所もありますが、ご配慮頂いた事と好意な評価をして下さった事には感謝致します。この件は持ち帰って検討致します」



展望台から街の様子を見ていた2人だが、リードイストの発言で腹の探り合いは終了となった。



終始変わらず 穏やかでありながら強い意志を燃やすリードイストであったが、それを見ていたサラの方は多少変わったようだ。


変わったというよりは気が抜けたと言った方が近いのかもしれない。



どうやら全く正体を掴めなかった先程とは違い、サラなりに何かを掴んだようだ。



ともあれセントクルスでの地震騒動は終わり、ジャスティンが戻ってくると 3人はようやく学園島へと向かう事になった。




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