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光のタクト  作者: セカンド
世界を変える大雨
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【 2名追加で3名は毛の中へ 】



少し離れただけで既に見失ってしまったイリアとマキナを探しながら俺達は人が溢れる祭中を歩いていた。


「あっ、タクト先輩!あそこに居ました…あれ?誰かと居るみたいですね」


「…ん、まぶしぃ」


カラフルな人混みの中から目的の人物をラピスが見つけだした。


ラピスの指差した方を見ると、イリアとイリアに腕を掴まれてしょげているマキナが見える。


ラピスの言う通りイリアは2人組の男女と話しているようだが、誰と話しているかまではここからではよく見えない。


まだ少し距離があるのも理由の一つではあるが、男女の女の方が光を反射しているみたいに眩しくて直視出来ないのが一番の理由だ。



とりあえずまた見失うと面倒なので合流する為に近づいていくと、ようやくイリアが会話していた相手が誰なのかがわかり、眩しさの理由も理解できた。


「おっすタクト!さっきぶりだな」


「おぉ、セルにハイナさん。どこかで会えるかもとは思ってたけど、こんなに早く会うとはな」


警備巡回があるということで終業式が終わってすぐに別れたセルだった。


「俺とタクトは運命の赤い糸と酢豚で結ばれてるからな。そんな事より、お邪魔でないなら俺達も一緒に祭りを見て回っていいか?」


「ん?もちろん大歓迎だけど巡回はいいのか?ってか二人共ばっちり浴衣と甚平着てるじゃないか。もしかしてセル、巡回ってのは嘘で本当はハイナさんとデートの約束してたんじゃないのか?それならむしろ俺達が邪魔者になっちまうんじゃ…」


基本的に巡回は学園の制服を着て、見える所に巡廻証を着けておくのだが…二人は制服でもなければ巡廻証も身につけていない。


これはもう完全にプライベートだろう。


「おいバカやめろ!冗談でもそんな事ハイナに聞かれたら俺が酷い目に合うんだぞ!」


「いや、別に冗談なんて言ってないんだが…じゃあ何してるんだ?」


・・・・・・


・・・・


・・


セルの説明によると今日はセントクルス兵が各地で見回りをしてくれるので、学園生が大々的に見回りをする必要がなくなったらしい。


なので普通の客と同じように普通に祭りを楽しみながら異変がないかを見て回り、なにかあれば近くにいるセントクルス兵と協力して防犯に当たるよう風紀委員長から指示が出たのだとか。


周りを見渡して見ると確かに軍服を着た兵士達が直立不動し置物のように立っているのが目に入った。



「事情はわかったし俺達はもちろん大歓迎だけど、ハイナさんは俺達と一緒でもいいのか?」


もしかしたらハイナさんはセルと2人で回りたいのかもしれないと思い確認をしてみると


「ご迷惑でなければ是非ご一緒させてくださいませ。タクトさんとイリアさんがご一緒して下されば、この素晴らしいお祭りで良からぬ事を考える輩がいた場合いち早く対応できますので、わたくしとしてはとてもありがたく思いますわ。それに…」


それまでは緩やかな笑顔で話していたハイナさんが、鋭く冷たい目線だけをセルに向けて不のオーラを発し始めた。


「この男と2人で歩いていて不名誉な噂が立ってしまったら、世界を滅ぼすか自決するかの選択に頭を悩ませなければなりませんので」


「そんなにイヤなのかっ!?俺は頼まれた側なのにっ!?」


「ゴミがキャンキャン騒がしいですわね。中等部の生徒もいらっしゃるのですから生徒会の一員として情けない姿を晒さないでくださるかしら」


言い終えたハイナさんは目を閉じてフゥと息を吐くと、いつもの雰囲気に戻ったが…



怖っわ!ハイナさん怖っわ。

セルはいつもこれを味わっているのか…


あとでセルに謝ろう。

前に「ハイナさんはセルの事が好きなんじゃないか?」なんて言ってしまったが、これで好意と言われても確かにあり得ないって思うわな。


「まぁまぁ二人共、とりあえず警備に縛られなくていいのなら色々見て回ろうか。早く何か食わせてやらないと、そろそろマキナが干からびそうだしな」






ハイナさんはラピスやマリア達とも以前から交流があったらしく後輩達が萎縮することも無く円満な挨拶を交わしていた。


とくにマリアに対しては、普段見ることがないほどデレデレしたハイナさんを見れて少し驚いた。

しかしもっと驚いたのはマリアがハイナさんの事を「デコねぇ」と呼んでいた事だ。


確かにハイナさんは光を反射するほど艶やかなおデコとキラキラ輝くティアラがトレードマークのようなイメージはあるが、誰もそんな愛称で呼んでいるところは見たことも聞いたこともなかったし、さっきの怖いハイナさんを見た直後のやり取りだっただけにヒヤヒヤしたが、当のハイナさんは気にしないどころか喜んでいるようにも見えた。



その後とりあえずお腹が減ったと言うマキナの要望を叶えるために食べ物の屋台を巡った。


屋台とは思えないほどのクオリティーな物が多く、少し割高な食べ物もむしろ安く思えるほどの満足感を味わせてくれた。



食べ物の屋台も多いが出し物やおもちゃ屋、お化け屋敷や冷え冷え館という寒過ぎるだけの店まであり目移りしてしまう。



「なにあれっ!毛っ?毛の館!?おもしろそうっ!ねぇタクトお兄ちゃん入ろっ!」


マキナが俺の腕を引っ張りながら向かった先には[ホラーヘアー部屋ー]と書かれた家型の出し物があった。


名前から察するに毛で作ったお化け屋敷みたいなものなのだろうが…

入りたくねぇ〜。


「ケッケッケッ…ようこそホラーヘアー部屋へ…特に説明は御座いません。入って、毛にまみれて、ぐったりして頂ければ幸いです。それでは普段味わうことの無い、素敵な毛い毛んを…ケッケッケ」


「いってらぁー、感想よろしくぅ」


入らないと決めたセルのウザい声援を受け、説明も案内人も意味がわからないまま、マキナに連れられて俺とマリアは毛の中に入って行くのであった。

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