【 予期せぬ道先案内人 】
広場を見下ろしてみると、さっきまでは魔獣の燃えカスだらけだったのに、いつのまにか燃えカスはなくなっており、広場は綺麗な元の姿を取り戻していた。
マリア達を見送り、通路で1人綺麗な広場を感心しながら眺めて立ち尽くす俺…
「どこから出ればいいんだよ」
そう、俺は迷っていた。
王城に来る時は直接会議室へ飛ばされたので、出入り口がわからないのだ。
王城広場には小さい頃に来たことはあるが、俺が今いる通路は完全に部外者立ち入り禁止区間であるため来たことがない。
すでにここが立ち入り禁止なのにも関わらず、通路に面している扉や階段には全て関係者以外立ち入り禁止と書かれているため、足を踏み入れる勇気が出ない。
「やばい。まったく出口がわからない…」
せめて広場に降りることが出来れば出入り口がわかるのだが、見渡す限り立ち入り禁止で進めない。
くそっ、まさかただの文字に足止めをされるとは。
なんで立ち入り禁止の文字はこんなに俺にプレッシャーをかけて来るんだ…
俺に恨みでもあるのか?
自分の小さな肝っ玉を隠すかのように立ち入り禁止の文字を責め、一向に景色の変わらない通路を歩いていると奥の方で人影が見えた。
「人だ!よかった、これでこの行き止まりの迷宮から抜け出せる」
人がいた事に安堵したが不審者に思われても嫌だと思い、わざと通路の真ん中を堂々と歩いて近付いて行った。
通路の先にいたのは鎧を着た大柄な兵士と、マントを羽織った貴族みたいな人だった。
2人は広場を見ながら何か話していて俺に気付いていない。
邪魔をしたら悪いかもとも思ったが、近付いたのに声を掛けないのも怪しまれると思い声をかける事にした。
「あの、すみません。道に迷って、って、うわっ!」
「貴様何者だっ!…ん?その制服はアルバティル学園の生徒か?何をしている!」
背後から声を掛けたのが悪かったのか、話し掛けた途端に鎧を着た大柄の男に剣を突きつけられてしまった。
咄嗟に少し避けたからよかったが、避けなかったら首が切れていたかもしれない。
「す、すみません!王城の巡回任務で来たのですが、王城の中に入るのが初めてで帰り道がわからなくて…って、王様!?」
剣を突きつけられたまま鎧の大男に事情を説明していると、隣にいた貴族風の男がこちらを見た。
その顔は誰もが知っている現セントクルス王そのものだった。
貴族みたいな人どころではなく王族だ。
生で見るのは初めてだが、オーラが半端ない。
たしかまだ26歳だったはずだが、身に纏う雰囲気は歴戦の猛者のようだ。
見た目は確かに若くて体格も細身なのだが、綺麗に整えられた薄紫色の髪と鋭い目付きのせいで、見る者を黙らせる威圧感を放っている。
「お前はもう下がれ。この学生は私が出口まで案内する」
「はっ!」
王様の命令に即座に反応して、剣を収めた大柄な兵士は敬礼をした後すぐにどこかへ行ってしまった。
おいおいおいおいまじかまじでかマジなのか!?
王様と2人きりなんてあり得ないだろ。だめだろ!ってか無理だろ!
敬語すらまともに使いこなせない俺が王様と会話なんて出来るわけがないだろ!
神様お願いだ、一度だけでいいから転移の魔法を使える力を俺に与えて下さい!
それが駄目なら礼儀正しくなれる加護を与えて下さい!
もう円源のラーメンばっかり食べたりしません、レーズンもちゃんと食べます、セルに変態って言いませんからっ!!!
「君、ついて来なさい」
「えっ、あ、はいっ!」
出口がすぐ近くにある事を祈りながら、俺は王様の一歩後ろを、味わった事のない緊張に包まれながら付いて行った。




