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光のタクト  作者: セカンド
世界を変える大雨
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【 ビックマウスと魔獣 】

マリアを守る魔獣が来たら逃げる結界には触らないマリアを守る…


前日まで何度も何度も反復予習していた任務内容をおまじないのように唱えながら、走ってマリアを探した。


「はぁはぁ、よかった。マリア…大丈夫か?」


会議室を出て少し進んだ通路を歩いていたマリアを見つけ、すぐに抱き上げた。


「ごめんな。もう離れないから」


俺の謝罪にマリアは不思議そうな顔をしているが、とにかく無事でよかった。


見たところ怪我した様子もないし、魔獣もいない。


マリアを守らなければいけないという使命感が恐怖心を上回ったからか、俺の足の震えも止まっていた。


ーーーん?

安堵のおかげで少し心に余裕が出来て、辺りの違和感に気付いた。


「まだ朝のはず…だよな?」


なんでこんなに暗いんだ…?


俺達は今、広場を囲むように作られた、監視塔と監視塔を繋ぐ通路にいる。


通路には天井はあるが窓はなく、俺の胸くらいの高さの壁が手摺りがわりにずっと続いているので、覗き込めば広場を見下ろす事ができる。


広場には天井がなく、上を向けば空が見えるはず。


それなのに俺達のいる通路が暗いのはおかしい。


昼夜問わず消えることのない照明灯のおかげで周りを見回すのに苦労することはないが、まだ昼前なのに陽の光が当たらないなんて変だ。


「学園を出るまでは雲ひとつない晴天だったのにな」


天気予報でも今日はセントクルスの天気が崩れるとは言っていなかったのが気になり、マリアを抱えたまま通路の端に行き広場側から空を見上げた。


「なんだよ…あれは…」


「、、、おっきい、おクチ」


アホみたいなマリアの発言だが、俺にもでっかい口にしか見えない。


広場の遥か上空で太陽の光を遮っていたのは雲ではなく、積乱雲のような巨大な口だった。


「あの口、魔獣を吐き出してやがる!」


空を覆う巨大な口がモゴモゴ動いたと思ったら、まるで異物を吐き出すように魔獣を落下させた。


落下させた魔獣を目で追うと案の定、広場に落ちていった。


先ほどの大地震は魔獣が広場に落ちた時の衝撃なのだと理解した。


「マジかよ。なんて数だ」


広場には大小様々な魔獣が、地面が見えなくなるほど蠢いている。


「こんなの勝つとか負けるとかの次元の話じゃない…」


俺は魔獣と戦った事はないが、広場にいる魔獣の一匹にすら勝てる気がしない。


小さな猿のような魔獣でさえ、岩をミカンのように軽く握り潰している。


それに魔獣は魔法も使うのだ。


俺達人間のように得意属性以外の魔法を使ったりは出来ないらしいが、その分使う魔法の威力が高い。


これだけの数、それに見た限り弱そうな魔獣がいない。


人が死ぬほどの結界を張ったのも納得だ。


並の結界では五分も持たずに破られるだろう…

だが、いくら結界が強力でも出来る事は足止めくらいだ。


弾く力はあっても倒す力は結界にはない。




倒す力…そういえばサディスとマゾエルはどこだ?


今回の任務で戦力として参加しているはずの2人が見当たらない。


あの大群の中にいるのかと思い、注意深く見渡したが戦っている気配すらない。


「まさか…もうやられたのか…?」


最悪な想像だが、この数が相手だと2人ともやられてしまった可能性が一番高いのも事実だ。


打ち合わせの段階では、サディス達が負ける可能性の話など一切出なかった。


各々の役割を説明された後はサラ先生とクローツ先輩で結界の話をしていただけだったので、まさかこんな事になるとは思ってもいなかった。


「くそっ!」


初の王城任務で、決められた事以外に頭を回す余裕がなかったのかもしれない。


また俺の油断のせいで…


だが今さら後悔しても仕方ない、とにかくマリアだけは何があっても守らなければ。


まずはサラ先生達と合流しよう。


「タクト、あっち」


今後の作戦や対策を聞くためにサラ先生と合流しようと決めてマリアを抱えたまま走り出そうとした時、マリアが広場の上空を指差して俺に声を掛けてきた。


「どうしたマリア?まずはサラ先生達と合流…ってあれはっ、マゾエルさん!?」


マリアの指差した先を見ると、巨大な口の少し下にマゾエルがいた。


広場の上空に魔法で作られたであろう氷の足場があり、その上でマゾエルと真っ赤に燃える人のような何かが向かい合っていた。

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